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聖なる魔法のつかいかた。  作者: 狩生悠一
第一章  幻の秘境
5/7

第一章4話  『本拠地』

続きです

 


 おっさんの粋なサプライズで出現した、薄蒼色にぼんやり輝く不思議な洞窟。

 俺たちは、そのさらに奥を目指して歩みを進めていた。


「すげー……ただの石じゃねぇよな、コレ」


 光る壁に手をついて思わず感嘆の声をもらすと、それを見たおっさんは自慢気に腕を組んで説明をはじめた。


「ふっふっふ、聖鉱石の鉱脈だよ。ちなみに聖鉱石っつーのは見ての通り光る石、この洞窟はその鉱脈のど真ん中をぶち抜いてんだ」


「!!」


 ――その説明を聞いた瞬間、カッ、と頭に血がのぼる。

 怒り的な意味ではなく興奮的な意味で。


 ――鉱脈?

 ――鉱石?


 何それ超スゴそう!!


 そんな感じで、男のロマン的なものを目の前に完全にハイになってしまった俺は、この過剰な興奮をどうにかして放出するためにとりあえず全力で走り出した。


「うおーっ!! 鉱脈の中走ってるー!!」


「そうだろうそうだろう、スゴイだろ……ん? あっ、おい! 危ねえぞ走るんじゃねぇ!!」


 一拍遅れておっさんの怒鳴り声が洞窟に響く。

 俺はそこではっと我に帰り、慌てて足を止める。


 ……念のために言っておくが、俺は何もわざとやっているわけではない。

 これはもう病気だ。

 興奮するとまともな判断ができなくなってしまう。――いや、まともな判断ができなくなるほどに興奮してしまうのが異常なのか。


 そんな風に、自分でも辟易としながら反省していたところで、おっさんが走って追いついてきた。


「ったく……お前は興奮すると何しでかすかわかったもんじゃねぇ。危なっかしいったらねぇぜ」


「おっさん。俺の目が間違いじゃなければ、言ってるそばから走ってたように見えたんだけど」


「あ? 俺ぁいいんだよ。視えるから」


「……」


 なにそれずるい。

 少々むくれながらもおっさんのこういうところは今に始まったわけではないので流しつつ、改めて洞窟を観察する。


 所々から突き出している大きな結晶。壁に薄く長く走る亀裂。静かに流れている川。

 そのどれもが、美しく淡い輝きを放っている。

 鉱石の一つ一つをよく見てみると、どうやら元はうっすらと透き通った白い石で、それが青白く発光しているらしい。


「……あれ?」


 そこで、ふと引っかかるものがあった。

 なんだろう。この石、何か見覚えがあるような……。


「うーん……たしかにどっかで見た気がするんだけどな……」


「どうかしたか?」


「いや、この聖鉱石ってやつ、どっかで見たことあるなーって」


「……そいつは多分コレのことだろ」


 そう言って、おっさんは自分の胸の辺りを目で示す。

 その目線の先には――聖鉱石とよく似た、綺麗な石がぶら下げられていた。

 銀色の金属で最低限の装飾が施された素朴なネックレスだ。


 そうだ、これだ。

 今まで特に気にかけていなかったが、思い返してみるとおっさんはいつもそのネックレスを身につけていた気がする。


「ああ、おっさんのネックレスだったのか! どーりで見覚えがあるわけだなー。それも聖鉱石でできてるのか?」


「ああ、そうだ。……ちっとばかし特殊だがな」


「……ふーん」


 神妙な顔で語るおっさんを見て、俺はそれ以上は掘り下げないことに決めた。

 なんとなく、あのネックレスはワケありなんだろうなと思ったからだ。


 よくよく考えてみれば普段から白い布一枚しか着ていないようなおっさんだ。お洒落のために着けているわけではないだろう。

 きっと、大切なものなのだ。

 そこに何か深い理由があったとして、それをずけずけと聞いてしまうのは俺的に少々いただけない。



 そうこうしているうちに、洞窟の終わりが見えてきた。

 それまでの道とは違い、明らかに人の手がはいっているのだ。


 さあ、いよいよ本拠地に到着だ。



「なあおっさん、なんかごちゃごちゃ物が置いてあるっぽいんだけど。なんかこう、干物的な物が」


 より細かく言うとしわしわなキノコとか干し肉とかが。

 まあ本拠地だし、食料の備蓄があっても別になんら不思議ではないのだが……ないのだが……。


「なんつーか……食料庫の間違いじゃねーのこれ?」


 もう食料の量がすごいすごい。

 つーか食料以外何もない。

 生活スペース……乾燥キノコの上とか?


 困惑の顔を向けると、おっさんはこちらに向かって指を鳴らして、


「実際、食料庫としてしか使ってない」


 なんてこった。

 本拠地ってくらいだからそれなりにしっかりした設備なんかがあるもんだと思ってたのに……。


「その食料庫を本拠地と言い張りますか」


「ああ、本拠地だ」


「……この三日間住んでた、馬鹿でかい木の根元をくり抜いて作った家は?」


「別荘」


「……そっちを本拠地にする気は?」


「ない」


「……」



 わかんねぇ……わかんねぇよおっさん……!!

 何故そんなにここにこだわるんだ……っ!!

 この洞窟なんて、せいぜい雨風しのげて食料の保管がしやすい環境で川があって水にも困らなくてついでに景色もいいくらいしか良いところがないじゃないか!!



 ……あれ? 結構快適?



第一章完結まであと2、3話……?


おっさんと二人きりの生活にもうしばしお付き合いください。

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