0話 漂流き〜出会い〜
読んでくれてありがとうございます。
初めてのきちんとした投稿となり、誤字・脱字などを見つけましたら教えていただけると幸いです。
投稿は週1話ペースでしていこうと思います。
どうか、最後まで目を通してください。
日本の首都、東京。
夜になっても明るく輝く街。そんなイメージとはかけ離れた灯りもない小道を歩く人がいる。
男は無い腕を押さえて、息を切らしている。苦しそうに一歩一歩を踏み出し、進んでいく。
黒く大きな洋風のコートを身に纏い、静かにーーと男は足を止めた。
彼の目の前には、少女がいた。
彼は、目の前の少女に緊張、驚き、戸惑い……多くの感情を抱く。少女は彼の目の前に現れ、質問した。
「ーーあなたは何者?」
適当な質問であり、彼は困った表情を浮かべる。
「……貴方」
彼は、疑り深い目で少女を見る。少女の全身を物珍しそうに見て、続けた。
「アヴェルート・ギル、それが儂の名だ。……それ以外は思い出せない」
少女は一瞬、怪訝な顔を見せた。名前に驚いたのであろう。
しかし、少女はすぐに記憶を手繰り始めた。
「……アルヴェート。その名は聞いたことあるわ。確か、一千年前古代ヨーロッパで栄えたという伝説の家族。……異名がーー」
「ヨーロッパ……とはどこだ?」
その言葉にかぶせるように少女は告げる。
「ーー“鬼王”」
鬼王。その言葉にギルの心臓は速くなる。
鬼王とはまさしくギルのことであり、なぜ少女が知っているのかがわからなった。
彼は考えるよりも先に跳び上がり、右手で少女の首を捉える。その動きは‘鬼王’のそれだった。
「……貴方は何を知っている」
地面に押し付けられた少女の首はどんどん締まっていく。
すると、少女は首を絞めている手をポンポンと叩いた。それでも緩めることはなく、苦しそうに少女は言う。
「自己紹介がまだだったね……私は桜街 夢。ある人に聞いてここに来たの……大丈夫、落ち着いて。私はあなたの敵じゃないわ……」
「敵じゃない……か、そんなもの信じることはできない。‘鬼王’の名を知るものは殺すしかないのだ。それが運命だ……」
ギルは冷たく言い放つと、右手の力を強めていく。
するとその直後、彼の右腕は宙へ舞った。腕は付け根から強引にもがれている。
「もう一度言うけど……私はあなたの敵じゃないの。戦う理由はないわ。」
夢の目は鋭く、さっきまでの儚げな少女には見えない。
儂の右腕を一瞬で飛ばすほどの力ということはわかった。しかし、何者だ……?
「私は……私を知らないの。ただ、“鬼王”の名を知っており、他のことは覚えていない。この状況でもはっきり言えるわ。私はあなたの敵じゃない」
「……覚えていない?貴方は儂の腕を吹き飛ばす力を持っていたではないか」
「あれは、私じゃないわ。…………私の体よ。考えずに体が自然と動いたわ」
夢の様子は、堂々としていて、嘘をついているようではなかった。お互いに“鬼王”以外に覚えていないのならーーとギルは思い返し、ふと気づいた。
「……貴方よ。先刻、ある人に聞いてここに来たといったが、ある人とは誰だ?」
「それはーー」
この夜、この出会いこそがギルの、“鬼王”の運命を変えたのである。
ありがとうございました。
一話目は“鬼王”と少女の出会いとなっており、よくわからないと思いますが、次の話からは学校編となっており、後々一話目の内容がわかります。どうか、めげずに読んでください。
誤字,脱字などがありましたら、教えていただけると幸いです。