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4.結果(1)

 やるからには真剣にやらないと、相手にもカードにも失礼だ。

 しかし、集中力がなかなか高まらない。緊張感なら先ほどからあるというのに。

 ああ、水晶があれば・・と幸子は思った。

 集中力を高める方法として水晶を見つめていた。気持ちを落ち着けたい時は香料だ。

 幸子はゆっくりと深呼吸をすることで整えた。

 まずカードを正位置に戻す作業から始めた。その際、1枚1枚のカードに、何について占うか、目的を語りかけた。これは幸子の儀式だ。この行為をする事によって、自分とカードが繋がる気がした。

 その後、カードを裏返し、シャッフル。

 上下ばらばら十分に混じりあったと感じたら、カット。

 その間もカードに目的を伝う。

 占い師によっては、上から何番目のカードを置いたら、次はそのカードから何番目・・・と間隔をあけて置くが、幸子は最初のカードから続けて置いた。

 3枚のカードが、幸子の前に並ぶ。

 スリー・カード・リーディング。

 単純に、過去・現代・未来を見ていくもの。

 カードを表に反す。ドキドキする瞬間だ。

 ああと幸子は口元に手を当てた。



「いい? 私の言うとおり、ちゃんと書いてね」

 少し、強く言った。緊張しているせいだ。

 春夫はゆったりとした姿勢で余裕をかもし出していた。

 大丈夫なのかしらと真剣に思った。

「いいよ。ただし、ゆっくりと。・・・できれば、書き言葉でお願いします」

「えっと、結論からいうと、マロンちゃんは無事で、戻ってきます」

「おい、それ、本当かい?」

 打つ手をやめて幸子を見た。

「本当ですよ。ちゃんと説明するから、ちゃんと書いて」

「ああ、ごめん」

「単純に過去・現在・未来の流れを見るスプレッドでしてみたの。単純な分、リーディング、解説を誤らなければ的中率は高いとされているわ・・・・って、あなた、書かないで」

「ええっ? だって、言うとおりって」

「書く必要ないでしょう?」

「そ・・・」

 春夫は文句を飲み込んで、削除した。

「書いていいのだけ話してくれ」

「そのつもりです」

「・・・・・・」

「過去をあらわすカードにソード3が出てきたの。これは別離、別れを意味するけれど、三角関係の意味もあるの。このカードでお互いの気持ちが表れているけど、第三者の存在も知らしめている」

「ということは、いくら探しても見つからないのは、誰かが隠しているってわけか」

 幸子は頷いた。

「現在を表すカードは、ワンド3。これは穏やかな満ち足りた生活。さぶろうさんの事じゃないのは明白だから、マロンちゃんのことね。マロンちゃんを連れて行った人は、犬好きで優しい人よ」

「犬好きなら、飼い主の気持ちが分かるんじゃないかな? それとも、欲求が勝っているわけか」

「相手の気持ちはどうかしら? ただ未来に正義のカードがでているから、さぶろうさんの正当性は認められているわ」

「というと?」

「正義は、その名のとおり正義をあらわすわ。あと公平とかバランスとか秩序とか。なかなか厳しいカードよ。相手の人から連絡があるか、一緒にいるところを見つけてしまうか。とにかくマロンちゃんの真の飼い主はさぶろうさんだと認めているから、戻ってくるってこと」

「ふ〜ん、じゃ、いつ頃?」

「ん、分からないわ」

「分からないって」

 春夫は幸子を見た。

 申し訳なさそうな目とぶつかる。

「そういうのって苦手なのよ」

「確か、言っていたね。陸上選手にたとえると短距離選手だって」

「ん、せいぜい長くて三ヶ月ってところかしら。本によっては、期日の出し方があることはあるけれど、私はあまりね」

「じゃ、無理か?」

「4と6が、関連数字なの。4日か6日目。4週間か6週間・・・・もしくは4か6かの数字がつく日・・・あいまいね」

「じゃ省くか。さぶろうさんには、そう遠くない未来、長くて数ヶ月と書いておこう」

 幸子も同意だった。

 あいまいな事をいって、期待感をあおるのは気が引けた。

「さぶろうさん、どう思うかしら」

「当たったら、喜ぶだろうね」

 当たるといいのになと幸子は思った。



 自分の占いの結果がどうなったのか、毎日が気になった。

 いつしか「さぶろうさんから連絡きた?」が幸子の口癖となった。長くて三ヶ月と自分で言っておきながら気が短いものだと、春夫は笑った。

 さぶろうから愛犬のことで連絡があったのは、一ヶ月を過ぎたときだった。

「すごいぞ、幸子」

興奮した声で寝室に入ってきた。

「当たったよ」

 その一言で幸子は察知した。目の前が明るくなった。

「本当に? それは良かったですね」

 声が弾む。

 春夫は興奮がやまないようだった。

「幸子の占いどおりだったよ。第三者がいたよ。その人から連絡があったんだ。もっと早く連絡しなくてすみませんって言われたらしい」

「そう。さぶろうさん、ほっと安心ね」

「ああ、君にお礼をって言われたよ」

 幸子は微笑んだ。

 素直に嬉しかった。自分の占いが的中したこと、さぶろうが喜んでくれたこと。

 ああ、やっぱりタロット占いは素敵。

 幸子は心の底から思った。


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