第二話:旅の再開 新参者・美紅唯の実力
赤い大地エルグランド
昔の人は火星と呼んでいた
地球に最も近い惑星を模した仮想世界
あたし沢渡順子が作り出したゲーム
世界スタンプラリー紀行
導く未来を紡ぐシステムとして
クリアを目的としている理由ではなくて
あくまでも過程であり
最終的には、あたしの求める答えを探す旅となっている
下手な前置きはこのあたりで
移動してきた先、この大地での旅の再開を高らかに楽しもうと思う
『唯ちゃんは説明を必要とするのかな??』
『・・・必要ではないかもしれない、でも順子さんの口から聞きたいかも』
なんだろう
これは、あたしに対してのプレッシャーではなかろうか
説明の必要がないと言いながら
あたしから聞きたいと・・・
あれ!?
もしかして、あたしに気があるのか??
敵対する感じでもないし
一緒に旅をしたいと、わざわざやって来ているのよね
『唯ちゃんは、あたしの事が好きなの??』
『・・・何でそんな事を聞くの??』
あらら、質問を質問で返された
う~ん・・・思わせぶりな唯ちゃんの表情も、あたしを惑わせる
作戦だとしても、欲望に忠実で入り込んでしまいそう
『あたしのモチベーションがあなたの答え次第で大きく左右されるから、正直に回答を希望します』
基本的に穏やかな表情で、相手に対して好印象を装うくらいに
あたしは笑顔を常に心がけているの
でも、そんな表情をしていても
唯ちゃんには中身というか、心を見透かしているように
あたしを見ているみたいね
それとも、旅を同行したいという単純な理由も
あくまでも過程で
あたし以上に女神としての宿命ともいえる目的を目指しているのかもしれない
『順子さんの心の中は・・・無尽蔵に広いですね』
やはり・・・か!?
う~ん、このプリティーなフェイスが邪魔して
敵対する感じにはなれない
掌握を狙って、唯ちゃんの心を奪ってもいいかと思うけど
どうも、心に決めたというか
女神の契を深く刻んだ相手がいるようで
強引にあたしが奪った愛理みたいにはしたくないかもしれない
あれは・・・時間が無くて、どうしても助けたかったから
仕方なく、相手にも了承を得た感じだった
愛理には、まだ伝えていないが
多分、知っているというか
把握しているかもしれない
完全に切るだけの能力は無いし
あたしにも全てを捧げるだけの存在でも無いと
愛理には、確実に自分の願いを叶えて欲しい部分もあるから
『別の名前でラインさんの元にいましたよ、あなたの探しているエメラルドの持ち主が・・・』
『そこに踏み入るなら・・・唯ちゃんでも容赦しませんからね!!』
今回、この話題に関しては一切あたしは語りません
別の機会で長い期間やりますから
無駄な一言だと思って下さい
『わかりました、あなたがそんな怖い顔をするなら・・・これ以上はやめておきます』
『察してくれて、助かるわ・・・あたしも抑制できるかわかりませんから』
攻め気味だった唯ちゃんも、あたしの表情で一瞬で察してくれたみたい
対等な相手だと、より把握してくれる可能性が高い
特に唯ちゃんは、その気質にあるだろうし
ある程度、合わせてくれる部分を重視して
仲良く旅ができる事がいいからね
『順子ちゃんも唯ちゃんも仲良くね・・・由佳的には、暴走したくないからお願いします』
あ・・・忘れてた、一番の爆弾を
由佳ちゃんは、気になる相手との恋仲を結ばせたから
しばらくの間は大人しくしていたけど
見た目の穏やかな風貌に似合わず
かなりの武闘派だったりするのよね
出会った当初に愛理と喧嘩してしまった時に
あたしと愛理を武力で抑制してきて
正直、死の危険を感じたのよね・・・
絶対に敵にしてはいけない相手だよ
『・・・別に喧嘩しているとかじゃないから、あたしも唯ちゃんも探り合いの段階なだけだから』
『はい、あたしも順子さんに対立するつもりはないよ・・・由佳さんとも仲良くしたいです』
付け加えるようにして、更に愛理も見ながら
唯ちゃんは、手を取って握手を強制的にしてくる
柔らかい手の感触
これが人の手なのかって思うくらい
最強な感触だった
『愛理さんもです、あたしは・・・覇者となった理由に、女神を戦いの性から解放するとしたの』
なんとも壮大な願いね
あの世界の覇者は必ず願いが叶うらしい
それだから、影響力の高いあたしに接触してきてのかな
しかも、幻想の原点であるリーアにも遭遇できるだろうから
『唯ちゃんはリーアと会うためにあたしに接触してきたのかな??』
『単純に・・・順子さんと旅がしたいだけです、深くは追求しないで下さい』
お互いに秘密を抱えた状態で
無理な干渉をしない、表向きには
実際に好奇心を抑えることは不可能だろうと
あたしも唯ちゃんも把握している、と思う
『女神に制限とかありえないわよね・・・唯ちゃんも黙って制御する必要はないから』
『そんな矛盾したことを言うんですか、あたしは努力しますよ』
無理することは必死だな
既に抑制するためなのか、唯ちゃんは身体を震わせているし
あたしも、妙な動きをしてしまいそうだし
もう、愛理と由佳に託すようにしちゃおうかな
『由佳ちゃんと愛理ちゃん、最初に言っておきます!! 多分、あたしも唯ちゃんも最後まで抑えることは不可能だと思いますから・・・』
『・・・順子さん、ストレート過ぎませんか!! あたしも達成できるとは思ってませんが、さっきも言ったけど努力するとかしましょうよ??』
あくまでも理性を優先する唯ちゃん
これもラインさんを負かしてきた余裕の現れなのか
それとも、これも含めて女神の性を解放する意味合いなのか
『順子も唯さんも無駄な意地だけはやめて下さいね、困るのは私と由佳なんですから』
愛理が諭すように、あたしと唯ちゃんに話している
それを聞いた由佳も頷いている
これは、仕方なくとかで片付けられないかもしれない
とにかく、旅は再開されたし
早くリーアに会って、詳しい話を聞かないとダメかも
唯ちゃんもそこを目的にしているようだし
強力な助っ人であることには、変わりないから
今まで以上に、楽しく過ごせそうね
『そういえば、“ナビます”の物体は今回見ないけどどうしちゃったの??』
『ああ、物体ね・・・その内合流してくると思うわ、寂しがり屋だし』
ナビゲーションマスコットの略称で“ナビます”と呼んでいる小型の人形のような物体があるのだけど
個人的には、あまり好みではない
自分で作ったゲームなんだけど
どうしても、それを導入しなくてはならなかった
システム上の問題で
データを保存するためのバックアップを記録する媒体が必要で
その媒体には、女神と同等の次元を超越した存在が適応される
あたしの能力に耐えるだけの存在が
ある物体しか不可能だったために
仕方なく、採用してあげたの
はっきり言って、不細工だ!!
『もしかして・・・“Lのトマ”ですか??』
『あら、唯ちゃんは知っているの・・・エセなあいつを!!』
言っている自分でも不可解だと思っている
物体だの不細工だのエセだのと
ほぼ悪口しか言っていない
愛理は可愛いと言っていたが
あたしには、その可愛さは理解できない
由佳も微妙だと言っていたし
一部のマニアには好評らしいが
万人に受け入れられるとは思えない
形容するのも嫌なくらい
有名な某通話アプリのマスコットに少し似ているかもしれないが
若干違うし
しかも、ジオクロニクルに記載される文言には
伝説の妖精とあり
リーアが創造したらしく
無数に種類が存在するとか・・・
『トマ・・・可愛いじゃない、私は好きよ!!』
『愛理を否定するわけではないけど、どうしてもそこに賛同できないの・・・ごめん』
あえて、褒めるとしたら
つぶらな瞳くらいかしら
小動物特有な感じの訴えかける感じのヤツな
あれだけは、あいつの武器とも言えるから
そこだけは褒めてもいいと思う
『あたしもトマは可愛いと思いますけど・・・実物は見たことないから、少し楽しみ~♪』
何だろう、純粋な心を持つ存在には好評なのかもしれない
あたしと由佳ちゃんが心が汚れていると言うことではないと最初に言って上で
愛理と唯ちゃんが特に清いのだと付け加えておきます
『順子ちゃん、再開したら行きたい場所があるって言ってたよね??』
『あ・・・そうだった、すっかり忘れてたよ!! 由佳ちゃん、サンクス』
前回に途中になってしまったから
スタンプの有力情報を元に可能性の最も高い場所に行こうと思ってたのだった
『スタンプのある可能性の高い場所だったかしら、順子??』
『うん、愛理ちゃんが頑張って得た情報だったから』
詳しくは、愛理の名誉に関わるから言えませんが
情報提供のために奮闘してくれたの
だから、その情報は本当だと示すためにも
次回再開の際に最初に行こうと思っていました
『順子さんがリーダーですよね?? あたしは従いますよ~♪』
急にメンバー感を出す唯ちゃん
しかも、かなり上機嫌風な感じで
妙に怖い気持ちになるが、あえて気のせいだと思って
何も考えず、素直に行動するのだと
『そうね・・・まずは、その場所に行きましょうか』
『は~い順子さん、よろしくお願いします!!』
『順子ちゃん、頑張ろうね~♪』
あたしの合図で旅が再開する
ニコニコしている唯ちゃん
仲裁に成功して安心したのか、由佳ちゃんもニコニコしている
『前回分のデータをデバイスにフィードバックさせました・・・』
温度差があるよね
あたしや由佳ちゃんが比較的HOTな方だったりする分
COOLな愛理ちゃんが冷静にしてくれるから
進行するのが円滑になるの
本当に、愛理ちゃんは素敵だよ
『愛理ちゃん・・・愛してる、結婚して~!?』
『順子、冗談は身体だけにして下さい・・・』
え・・・どういう事??
あたしの身体って冗談なの!?
愛理ちゃんは、あたしを何だと思ってるんだ
『順子ちゃんのお胸が気に入らないんじゃないのかな・・・由佳も順子ちゃんのお胸は冗談だと思うくらいのパフォーマンスだと思うんだけど』
『愛理も由佳も、あたしを怒らせたいのかしら・・・こんな素敵な夢の詰まったマシュマロのような胸を冗談だと言うのよ!!』
思わず、感情的になって怒鳴ってしまったじゃないの
自他共に素晴らしいと思う・・・沢渡順子のお胸よ!!
全く、この魅力をわからないなんて~!?
『ラインさんが、順子さんのお胸は素晴らしいと言っていましたよ・・・あの方も自分の身体を自慢するタイプだから、他を褒めるくらいに凄いのかと期待してきました』
『そう言えば、ラインさんと一線を超えた付き合いもあったわね・・・下着もプレゼントしてくれたし、本当に素敵なお姉さんって感じで、そんな相手からの褒め言葉ですからね・・・素直に嬉しいです』
急に唯ちゃんが恥ずかしそうにしている
どうしたのかな・・・
『唯ちゃん?? 何か問題でも・・・』
『あたしもラインさんから下着を貰ったの・・・順子さんとお揃いなのかと思ったら~♥』
(´∀`*)うふっ
こっちが恥ずかしくなってくるじゃないの
ラインさんの作戦にやられてしまいそうだ
こんな最終兵器を投入してくるなんて
あたしに直接勝てなかったから、唯ちゃんに託すなんて
『順子!! 場所の特定できましたから、移動を開始しますよ・・・』
う~ん、愛理ちゃんがご立腹です
これが嫉妬というヤツだな
あたしが唯ちゃんに気を許してしまっているから
それ以上に、あたしを取られたみたいな感じに思っているからかも
冷静な愛理ちゃんが情熱を持って接してくれる、数少ない反応を見る事ができるかな
どんなに唯ちゃんが迫ってこようとも、あたしは愛理が一番だからね
『唯ちゃんには悪いけど、今は愛理から貰った下着なんだよね・・・』
しっかりと愛理大好きアピールをしておかないと
服とスカートをめくって、下着を愛理に見せる
口だけだと思われると悲しいので
『ほらっ・・・ねっ??』
『ねっ、じゃないです・・・見せなくてもいいですから、閉まって下さい!!』
恥ずかしそうに、あたしの手を服から外そうとしている
何、折角のアピールよ
ちゃんと見て、自分がプレゼントしてくれた下着か確認して
『愛理ちゃん・・・あたしの誠意を確認した??』
『しましたから、もう・・・女性としての恥じらいをしっかりと自覚して、こんな事は自重して下さい』
あたしに女性らしさを求めるの!?
愛理ちゃんは、そんなあたしがいいのかしら・・・
これは、姉様に伝授してもらいましょうか
『順子ちゃんに求める方向性じゃない気がするのは、由佳的に微妙だと思うのだけど・・・』
『由佳ちゃん、ヒドイよ~あたしだって、そんなことくらいわかってるんだから』
本気で女性的な順子を構築しようと心に決めるのでした
性格的に難しいかもしれないけどね
見た目は、ちゃんとした身体なんだよ
全校の男子生徒が注目するだけの魅惑のお胸だってあるんだから
少し、身長は低いけど・・・
『順子さんは、十分に魅力的だと思います・・・あたしは今のままでも好きですよ』
おっと・・・唯ちゃんからの告白キタ━(゜∀゜)━!!!
っと、少しウキウキな気持ちになってしまうけど
別にLOVEではなくてLIKEって意味合いだよね
『唯ちゃんだけは、あたしの味方でいてくれるのかしら・・・それとも、社交辞令か!!』
こんな感じだから、愛理が女性的を求めるのかもしれない
・・・折角、無数に繰り返してきた事象だけど
今度は、別の情報もしっかりと回収してこないとダメかな
このままだと、旅をする前にあたしが疲れてしまう
肉体的な疲れは女神としては皆無に近いから問題ないけど
精神的な疲労は普通の人と比べると、死ぬのではと思うくらいの感覚があると感じるかも
概念的な存在となっているデータと化した、電脳異空間の覇者を相手にするのは
死を超えた苦労をしたのではと・・・
でも、逆に侵攻した際は
慣れない身体に大苦戦だったし
心労で済むなら、ホームゲームの方が楽かもしれない
『順子さんのために最初のスタンプは、あたしが狙いますよ・・・これくらいはしても問題ないよね』
『唯さんのデータを常に見ていますから、気にせずにどうぞ~♪』
好奇心なのか、余裕なのかは不明だけど
唯ちゃんが自由に行動して、こちらとしては愛理ちゃんの能力があるから
どのように示してくれるか楽しみです
『じっくりと楽しみたいから、移動スキルは極力しない方向でいいかな・・・』
『順子さんの嗜好なら、付き合いますよ・・・あたしも旅を単純に楽しみたいから』
あたしの嗜好だと・・・
う~ん、唯ちゃん難しい言葉を知ってるのね
説明するの面倒だけど、制約とかないから
しっかりと伝えておかないとダメかな
『唯さん、順子はゲームマスターだから・・・ある程度の自由が制限されているの、察してね』
おいおい!?
真面目な顔して、堂々と嘘を言い出したぞ
愛理ちゃん・・・やはり、唯ちゃんに嫉妬しているな
しかも、かなりの重症かもしれん
恐ろしい娘や
女神スキル:対話「順子⇔唯」
順子:「愛理の言葉は偽りです」
唯:「わかっていますよ、あなたの中で自由にルール設定できるのでしょ??」
順子:「・・・ふふふ、唯ちゃんに正直に伝えたのに~!!」
唯:「ラインさんの忠告通り愛理さんを警戒していますから」
順子:「ふ~ん、ラインさん信用されてますね・・・唯ちゃんを手駒にして、怖いわ」
唯:「手駒とは酷いです、掌握したのは・・・あたしの方ですよ」
順子:「リーアの攻略に、あたしが必須だと踏んででしょ??」
唯:「わかりましたか、最も可能性の高い順子さんを選択したのです」
順子:「天球の管理者だからね、地球と一番近い存在でもあるし」
唯:「地球ですか・・・懐かしいですね、一応あたしの出身なんですよ」
順子:「あそこは特別ですよ、リーアが救おうとしている場所だし」
唯:「救う??」
順子:「そのあたりを含めて、あたしは問い詰めるつもりなのよ」
唯:「そうなの・・・じゃあ、あたしもそれに付き合うのね」
順子:「女神を救うには、リーアも含まれているから??」
唯:「そうなると思います、あたしはあなたも救うから・・・アクアちゃんと約束したの」
順子:「アクアちゃん?? 探している恋人か・・・やはり同性なのね」
唯:「電脳異空間で一番助けてくれた、あたしの最愛の・・・」
もういいや
これ以上は唯ちゃんが本気で泣きそうだから
半分くらいの目的もわかったし
かなり、同行するには十分な理由だったね
『順子・・・対話を使ったのね、折角の作戦も台無しじゃない!!』
愛理ちゃんの作戦
そんなものは、あたしの前では風前の灯よ
愛理の最愛の相手を考えれば
同じことを思うよ、きっとね
『愛理ちゃん・・・あたしは、唯ちゃんの求める相手を探す旅を新たに構築するからね』
『・・・順子!! いや、いいわ』
何か言いかけたみたいだけど
躊躇して、やめてしまった
あたしの求めるエメラルドの持ち主
唯ちゃんの最愛のアクアちゃん
そして、愛理の永遠を誓った相手
リーアの攻略を終えたら
次の目的の旅が出来た
『全てを把握しているとは言わないけどね、あたしも唯ちゃんも愛理ちゃんも目的は類似よ!!』
『・・・由佳は順子ちゃんに見つけてもらったから、この旅は永遠に同行することを楽しみとしてるよ』
由佳ちゃんは、簡単に話すけど
順子の旅は本当に永遠なんだよ
探し物を見つけたとしても、常に次の旅が構築される
終わることのない旅がね・・・
『どうやら、別の形で唯さんの能力を見る機会がありそうですね・・・お願いできますか??』
『仕方ありませんね・・・これはイレギュラーなお客さんですか??』
『たまにあるのよ、でも女神クラスは珍しい・・・って、唯ちゃんも同じ扱いなんだけどね』
『あれ、順子ちゃん・・・由佳は見学でいいの??』
タイミングがいいというか、悪いというか
目的地への移動を前に
あたしへの挑戦を試みる女神がやって来た
『あなたに挑戦するべく、この世界へ来ました!!』
『売名行為だけで来たのでしたら、このままお帰り下さい・・・あたしを知って訪ねてきたなら、尚更です』
今回に関しては、あたしではなくて
相手が唯ちゃんだから、余計に思ってしまう
ほぼ100%勝ち目はありませんから
単純な戦闘力を比べると
多分、数値はあたしよりも高いでしょう
それだけ、覇者となった唯ちゃんの能力は異常とも言えるから
『次元を超えるだけの能力を手にしたのです、あなたと戦うために・・・売名など不要!!』
『・・・残念ながら、今回の相手は電脳異空間の覇者です』
と、あたしは唯ちゃんを見る
本当にタイミングという点で、善し悪しを分けるのは
事象という流れでは、逆らえないのよ
全く・・・誰だかわからないけど
運悪すぎ~!?
『あたしも順子さんに挑戦する形でやって来ましたが、別件で同行しています・・・あなたに恨みはありませんけど、こちらも負ける気はありませんから全力で行きますよ!!』
空気感が戦いの流れに変わる
エルグランドが震撼している
女神の格付けが7を示している
眼鏡デバイスで数値測定を行うには、女神の能力は高すぎるから
10段階で速報値を出せるシステムを採用している
愛理ちゃんが常に女神との対峙をするあたし用にと
具体的な数値は、後に分析用に愛理ちゃんは保管している
今まで相手にしてきた女神のデータは全て持っているみたい
何に使うのかは、あえて聞かないことにしている
相手の女神も5を示している
ちなみにあたしは10まで出せるよ~ふふっ、頂点だからね
あ・・・ラインさんも10まで出るのよ
多分、唯ちゃんも10だろうと思う
あくまでも目安だから、数値だけで戦いは決まらない
個々の専用のスキルがどれだけ他へ作用するかで
大きく戦いが変わってくる
圧倒的な数値の高まりがあるなら
武闘派だったら、わからないけどね
ちなみにあたしの能力は、反則的だよ
負けの概念自体を消すから
常に勝ちとなる
時間と空間を自在にできるからね
次元ごと完全掌握すると、誰にも負けることはないの
うふふ、これが本当の無敵ってヤツよ!!
唯ちゃんが、どれだけのギミックを用意しているかは不明だけど
ラインさんの思惑通りには行きませんよ~!!
これは、繰り返してきた事象が蓄積した結果だもん
ほぼ全ての能力を把握している
新人に関しては、未知数な部分があるから
苦戦する可能性もあるけど
その場合、別の相手と戦わせて
能力を見てから、対処するから
今回の相手も新人みたいだけど
唯ちゃんの能力を把握する意味合いが重要で
悪いけど、眼中には一切無かったりする
『わたくしでは、相手にならないと・・・あなたが戦わないのですか!!』
まあ、当然な感情だと思う
あたしを目当てで、わざわざ次元を超えて来たのに
相手にされないなんてね
でも、力不足な事は否めないかな・・・
『はっきり言って、その通りよ・・・単独で来る度胸だけは買ってあげるわ』
『・・・そうですか』
このまま、不戦敗で帰ってくれるとありがたいけど
難しいだろうな
死を覚悟しての次元移動だろうから
『唯ちゃんに勝てたら、堂々とあたしが相手するよ・・・全力でね☆彡』
『わかりました・・・わたくしの能力を把握する形ですか』
実は、愛理ちゃんが彼女のデータを既に保有していて
過去に遭遇していたみたいね
お互いに何も言わないけど
気づいているのかな・・・
『愛理さん、データの収集は不要なんですよね?? 一瞬で終わらせますよ』
『はい、唯さんのデータを重視していますから・・・』
意外に、愛理✖唯のシチュエーションも悪くないかも
火属性は風属性との相性が最高なんだけど
実際には・・・火属性と水属性のカップルって多いんだよね
本来反発する形なんだけど
妙な気持ちになるの
相性では思えない、不思議な繋がりを感じる
『唯ちゃん、頑張ってね・・・負けてもいいから~♪』
『・・・順子さん、冗談でも怒りますよ!!』
お互い、ニコニコしている感じで
ギャグであるとわかった上での会話
余裕はあるみたいだから
本当に一瞬で終わるかもしれない
存在の維持が不可能になる状態
これが女神の死の概念だったりする
基本的に、完全な消滅は無くなる
だからとは言わないけど
女神同士での戦いは、ほぼ全力で行われる
相手がどんな状態で戦闘力を0にされたとしても
元に戻るだけの数値まで回復すれば
また、活動再開できるから
一時的な退場となるだけ
『でも・・・相手を傷つける事には変わりないから、感覚が麻痺するくらい戦ってこないと本当の全力は出せないのよ~!!』
優しさが強いと、それがそのまま足でまといとなり
自分を制御してしまうから
結果的に中途半端な戦いをしてしまう
下手に長期戦となる方が
お互い、心へのダメージが高い
戦闘力の回復に影響を及ぼす
あたしは一瞬での決着が理想的だと思う
そこに唯ちゃんも、達しているみたいで
相手を瞬時に倒そうとしている
有無を言わせず、先手を狙うみたいね
しかし、相手は風属性だから
速度では微妙になるかもしれない・・・なんて思わないけど
唯ちゃんは、あたしと同じ火属性
更に宝石も同じルビー
火属性の中でも攻撃に特化したスキルを多様に扱える
かなり特別な部類になるのだけど
それと合わせて、攻撃する速度も
風属性に劣らないくらいだから
開始直後に相手の攻撃を受けることなく終了する可能性が高い
特攻系スキルを使った場合
相手の攻撃ごと跳ね返して終わる
『唯さんのデータ、今回は参考にならなそうね・・・相手が弱すぎます』
『そうね、準備運動にすらならないでしょう』
説明するのも微妙な戦いだった
あっという間に、というのが正しい感じで
唯ちゃんが特攻系のスキルである火急速を即時詠唱させて
相手より先に攻撃が決まり、そのまま活動不能となった
これでは、あたしもだけど
由佳ちゃんにも愛理ちゃんにも傷一つも負わせることはできないでしょうね
何か特殊なギミックがあったのかもしれないけど
それを発揮できるだけの技量を身につけて、再挑戦ってところかな
『どうでしたか・・・少しは、あたしの事わかりました??』
『愛理ちゃん的には、不満かもしれないわね・・・』
科学者というのは、不思議な存在で
特に探究心強いみたい
今の一瞬でも、しっかりとデータは取得している
その上で確実な情報を更に欲する
『私が自ら、唯さんに仕掛けてみようかしら・・・』
何て事を言い出すし
本気ではないにしても
冗談に思えないから、愛理ちゃんって怖いのよね
『じゃあ、旅の続きを・・・』