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二人で始める命魔法  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一話、魔法使いは魔法書から
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開けて悔しき玉手箱

「これが、俺の魔法書?」


 食事を終えた俺は、校長の言葉を思い出して校長室へとやってきた。

 校長は最初に会ったときと寸分違わぬ格好で部屋にいて、俺が部屋に入るとデスクに置いてあった魔法書を手に取った。

 それを受け取り出た言葉が、これである。

 真っ白な表紙というよりも、板といった方がいいかもしれない。


「そうだ。まずは契約の儀に入る」


 なるほど、その契約をする事で俺専用の魔法書になるわけか。

 いわばこの白板が原板ってわけだ。


「この本に血を垂らしなさい」


 と、小型ナイフを手渡してくる。

 余りやりたくは無いが、これで魔法が使えるのだ。

 期待を胸に、俺は自分の親指を浅く裂く。


 滲んだ血を原板に擦り付けると、原板が淡く光りだした。

 そこで校長が意味不明な言葉をしゃべりだす。

 呪文という奴らしい。

 何を言っているか全く分からない。


 しばらく続く呪文に、徐々に原板の光が強くなり、原板の形が変化していくのがわかった。

 そして、呪文が途切れ、光が収まると、一冊の本が俺の手元に残った。

 背表紙は無地の茶色だろうか。いや、焦げ茶色かもしれない。その中間色くらいの色だ。

 これが、俺の魔法書。俺だけの……


 膨らむ希望を抱きつつ、俺だけの魔法書を開く。

 魔法書は分厚い本ではなく、辞書と変わらないくらいの大きさの、薄い本だった。

 ページ数はなんと破格の一ページ。

 ふざけてるのか?

 通販の贋物でももうちょっとページあるぞ。


「あの、一ページしかないんですが」


「それはそうだ。今は駆けだしなのだから当たり前だ」


 校長の言うことには、魔法を覚えればページ数は増えるらしい。

 つまり、この魔法書に書かれるのは俺自身が唱えたりして使える魔法のみであり、覚えて行くごとに分厚い魔法書になるということだ。


 なるほど、その為の魔法学校か。

 この学校で魔法書の使い方を習い、楽に使えるようにするとともに、他人からこの世界にある基本的な魔法を修得するのが魔法学校の役割か。


 魔法書自体は他人に見られても他人がどうこうできる訳ではなく、また、当人が生きているもしくは譲渡された者が生きている限りは何者も滅することはできないという作りらしい。

 何その便利設計。


 他人の魔法書から魔法を手に入れるには、当人に許可をもらい譲渡してもらうか、暗号化された文字を解読するしかないらしい。

 で、魔法学校では一般的に解読された初歩的便利魔法を使えるようにその知識を学ぶらしい。


 魔法を思い付く過程を経れば、覚えることが可能な魔法ならすぐに魔法書に登録されるのだとか。

 よくわからないが、魔法の構成が分かればすぐにでも新しい魔法が魔法書に出現するってことだろうか?


「魔法書を使えなくするためには持ち主を消す以外にはないのだ。つまり、その魔法書にある魔法はお主が生きている限り一生お主のみが使える魔法という訳だ」


 魔法ってすげぇ。

 科学なら複製なんて即行だし、法律で複製不可って規制してもコピーされ放題なのに、解読もまず不可能らしいし、何十年かかってようやく解読できるとからしいから他人の魔法書解読にそんな時間費やす無駄努力するより自身の可能性模索した方がいいと、この世界で他人の魔法書を解読しようとする奴は皆無に等しいらしい。


 この魔法書に書かれた魔法は俺専用、エロ魔法を覚えれば唱え放題、対処法も見つけられない魔法もきっとあるはず。

 クックック。ハァーッハッハ。夢が膨らむぞ。


 さぁ、我が第一の魔法とやらを見せて貰おうか。

 なになに……?

 契約の魔法?


 なるほど、この呪文を唱えて口付けを交わす事で相手と契約を結べるわけだ。

 ……で?

 契約してどうすんだ?

 思わず校長に視線を送る。


「どうかしたかね?」


「あの、契約どうこうって書いてあるだけなんすけど」


「ふむ? もしかすると裏にもあるやもしれんな。契約魔法を使う魔法使いは大抵裏面に契約後の魔法が書かれているはずだ」


 校長の話だと、契約系魔法には、契約後に使える魔法が一緒に付いて来ているらしい。

 言われるままに裏面を見てみると、確かにもう一つの魔法が書かれている。


「さんたくろー……さんだー・くろす?」


 そこにはサンダークロスとでかでかとした大文字が右端に、そして振り付けの説明と共に呪文が描かれていた。


「ふむ。サンダー・クロス? 初めて聞く魔法だな。名前からラ・グ系の電撃魔法と見るが、どうかな?」


「術者とラ・グ以上の雷系魔法が扱える契約者とで振り付け通りに踊る事で発動するみたいです」


「なるほど、それは君単体では魔法が使えないということだな」


「マジすか……」


 ちょっとショック。

 あ、でもサイルの奴と契約できりゃこの魔法使えるな。

 まぁあいつがキスさせてくれる訳もないだろうし、呪文唱えてる間にラ・グで殺されそうだ。

 あいつに試すのは止めとこう。


 どこかに気の弱そうな可愛い女の子いないかな。

 よし、明日から学校だし、もしもの時の為にすぐ使えるよう、今日は寮に帰って魔法の振り付けを覚えよう。

 そして気の弱そうな女の子を口八丁手八丁で丸めこんでうひひひひ。

 おっと、涎が。


「あと、通貨についてなのだが」


「通貨? ああ、金ですね」


「うむ。手続きに時間がかかるのでね、明後日まではサイル君にねだってくれ。後日工面して部屋に送ろう」


「わかりました」


 なんだろう、俺、めちゃくちゃヒモっぽい。

※ 役に立たない豆知識


開けて悔しき玉手箱


 予想が外れてがっかりすること。

 転じて自分の魔法書が1ページしかなかった事。

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