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世界樹

月の夢に入る夜

作者: 月蛉

やってしまいました。

前の作品の別話です。雰囲気が違うのは、主役が違うからです。

お楽しみいただけたら嬉しいです。

  長い腰を越える黒髪に金の瞳。東洋系には見えないヨーロッパ系の顔立ちは人形のような無表情で整い過ぎている。

  歳の頃は20代前半か。背はスラリと高くスタイルも文句の付けようが無い。

  踵の高いブーツを履き、青い海の色をしたスーツを身に纏い、白いスプリングコートを羽織って新幹線の出口付近で、腕を組み仁王立ちしている事が唯一不可解だが。

  今時珍しいと言えるかもしれない、腕時計を確認すると軽く眉が寄る。

「あり得ない、あのバカ」

  外見の雰囲気よりも幾分低い声で呟く。

  瞳を剣呑に光らせて、改札口を睨み付ける事しばし、現れた青年牧師に彼女はいきなり掴みかかった。

  そのまま青年を両腕とはいえ、持ち上げると青年のつま先が辛うじて地面に着く所までを判っているのかその場所で確実に留める。

「あのねぇ、私は遅れた理由なんかどうだって良いのよ?連絡を寄越せば良いだけの話じゃ無いかしら?それとも、何?メール一本送る時間が無かったとでも言うのかしら?それとも私に気を遣う事無いとでも思ったのかしら?ねぇ?どちらかしら?」

  笑顔のまま大の男を持ち上げる彼女の白い手に青年は悪びれる様子もなく、やや悪くなった顔色のまま、ポケットから携帯を取り出して見せた。

「………何よ、コレ」

  青年を解放してその手から携帯を引ったくるように奪うと、左側の眉だけが綺麗に上がる。

  其処にあったのは、原形を留めていない元は携帯だったであろう、鉄屑だった。

「仕事中に色々あったんですよ。コレでも」

  その言葉を裏付ける証拠をポケットから取り出す。

「ほら、今日の相手のランクなんか。僕1人で歯向かう事は本来あり得ないんですよ⁈帰ったら速攻本部へ抗議します」

  その言葉に彼女は溜め息をついてみせる。

「仕方ないわね。いいわ。今回“だけ”は許してあげる。次は無い」

  そう告げると、後は興味無さそうに青年に背を向けて歩き出した。

「セレネさん、僕が居ない間に変わった事はありましたか?」

「1人、仲間が増えたわ。道に迷った女の子が1人、ね」

  溜め息交じりに応え、駅裏の駐車場へ向かい歩き出した。

「他に変わりは?」

「特に何も無いわ。至って平凡な日々だったわ」

  言外につまらない、と言い肩をすくめて見せる。

「それは楽しみですね。僕は“仲間”が増える事が嬉しくて嬉しくて」

 そんな事を言って笑う青年に彼女は車のキィを投げつける。

「帰るわよ」

 気の無い様子に青年は苦笑して車のドアを開けた。

「仰せのままに、セレネ嬢」

「此処でその名を呼ばないで頂戴。私は最早“セレネ”では無いのよ。その名を冠する事は出来ないの。私は、もう“月”では無いのだから」

「僕に取っては、貴女は紛れもない“戦女神”なのですがねぇ」

 人の良さそうな青年の瞳が、僅かに剣呑に輝く。

「馬鹿馬鹿しい。貴方が信仰している宗教が私を追いやったんじゃ無いの。唯一神しか認めないんでしょう?」

 冷酷とも取れる言葉と響きを残して彼女は車に乗り込んだ。

「今の私は“悪魔”に分類されているのかしら?他宗教は良く解らないわね」

 そう言って瞳を閉じる。

「僕は、確かに牧師をしていますが、神を信じては居ませんよ。ただ、生きる術だっただけです。親の顔を立てただけですしね、まぁ、その内辞めるつもりですので、これからも長い、失礼しました。貴女から見れば短い期間をよろしくお願いしたい所ですね」

 人の良さそうな顔で、とんでもない事を告げると静かに車を発進させる。

「本当に、変わった人間だわ。貴方は」

 何処か呆れたような声でそう返すと、彼女は苦笑して髪をかき上げた。

「行き先は、喫茶店でよろしいですかね?」

「ええ、頭領、じゃあ無かった。滓賀氏が待っているから向かって頂戴。後、牧師を辞めるのなら、こっちにかかり切りになる事も覚悟しておいて欲しいそうよ」

 彼女の言葉に、青年は乾いた笑いを零す。

「相変わらず、全てお見通しですか」

 ソレに返って来たのは、冷たい微笑。

「アレに隠し事なんて、無駄でしか無いのでは無くて?」

「ですよね」

 達観した表情を見せる青年に彼女は僅かに頬を緩める。

 “闇”そう表現される事が多い男を思い起こす。

 狐の面を付けて出て来る事が多い男を、彼女は信用している。

 本当の事しか言わない。

 どうでも良い相手には優しく、身内にも自身にも厳しい男。

 だからこそ、彼女は男を信用する。

 目の前で、ハンドルを握る青年の背中を見ながら、彼女は小さく呟いた。

「貴方はどちらなのかしら?」

 青年の耳には届かない。

 青年が、男に認められるかはコレからの話だ。

 楽しみだわ そう呟くと、彼女は瞳を閉じ短いドライブに身を任せた。

昔書いてた“世界樹”の焼き直し版です。

色々設定変わってます。

スマホで基本打っているので、短いです。

誤字脱字を見つけましたらご一報ください。なるべく早めに直します。

って、書いたものの、やっぱり需要は少ないみたいですね。

まぁ、自己満足ですので良いんですが。

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