第3話 その3 「深夜ってなんかいいよね」
午前中のお嬢さまの「学園における隠蔽捏造計画」の丸投げを受け、お昼を食べながらわたしなりに対策は考えてはみたんだけどね。
プラムなんかはいち早く、ダメ出し。
《学園生活3年間で無能力を隠蔽し続けられる確率0.03% 無理です》
(でも0.03%の確率があるならそれに賭けるのこそロマンじゃないプラム)
《0.03%はお嬢さまの完璧な身代わりを仕立てて、学園生活を乗り切れた場合の考慮値ですがどうしますか》
ロマンもかけらもなかったです。それ、要は0%だよね。
でもね悪役令嬢役だったとはいえ、3ヶ月後から始まる、学園生活の3年間。
乙女ゲーム『聖女と薔薇の刻証 ~Rose et Sainte~』そのメイン舞台だからね。
お嬢さまにはなんとか楽しく、生き延びてもらいたいんだよね。
* * * *
そんな流れで午後から、お嬢さまと2人でお屋敷の講義室に来ています。普段は使用人や衛兵達のミーティングに使用されてる部屋。
中は黒板のまえに教壇。そこに向かって席が配置され、教室然としています。お嬢さまの座学もこの部屋でいつも行われています。
黒板には大きく、お嬢さまが書いた。
「学園生活⭐︎対策会議」
お嬢さま、実は割と好きなのね。こういうノリ。
お嬢さまが席に座り、わたしが教壇側に立って進行役を仰せつかりました。
「コホン、まずお嬢さま。一つご提案がございます」
「なーにルナリア、言ってごらんなさい」
「素直に自身の能力を申告して……」
「却下よ!」
「この3大公爵家筆頭であるアーネスト家の名誉にかけてそのような無様が知れ渡ることなど、あってはならなくてよ!」
「ましてやこのわたくし、セシリア・フォン・アーネストが無能のレッテル貼られるなんてそんなこと、わたし自身のプライドが耐えきれません」
「それにそんな無能は、王子殿下どころか、他の貴族にだって嫌がるでしょう」
「友達もできないかもしれないし……領民に石投げられるかもしれない」
「お家が没落して領地剥奪のうえ、国外追放! それどころか処刑されるかも…………」
お嬢さま自分の殻に引きこもっちゃった。それにそんな心配しなくても大丈夫ですよ。
むしろそちらが正規ルートですから。
「とにかくこの由々しき事態を、絶対に露見させてはいけないのよ」
「なんとかなさいルナリア!!」
(無能のまま学園生活を慎ましく生きる…… お嬢さまには酷なのねやっぱり)
けど何が功を奏するかわからないから、とりあえず、まずは全力で足掻いてみましょう。
「まずはお嬢さまの1ヶ月の研究成果を、実際に検証してみましょう」
「そうね、それでどういたしますの?」
「計画 実践 うまくいかない場合は、問題点の洗い出しそして計画修正」
「再度実践の繰り返しが、問題解決の王道です」
わたしの考えたセリフを、ルナリアAIがスラスラと喋ってる。
だいぶ一体感出てきたね。わたし。
「では何から取り組みましょうか。お嬢さま」
ちょっと顎に指を当てて考えるお嬢さま。
うーん、可愛い。
「そうね、やっぱり魔術実習とスキルお披露目会かしら」
「そこさえ誤魔化せれば案外いけると思いますのよ」
やっぱり誤魔化し前提なのはさすがです。
お嬢さまの魔力実習の対策ノート見てみると。
未来予知偽装
光って誤魔化す
ルナリア自爆×
時間合わせて爆破
とか色々考えてはいたのね。
「ところでルナリア、1つ質問があるんだけど」
なぜか手を挙げるお嬢さま
「はいお嬢さまどうぞ」
つられて挙げた手を指差してるし
「神殿で月詠の予言とか大層なこと言ってましたけど」
「予知ができるんならわたくしにその予知を、教えていただければ問題解決じゃありません」
(確かにでどうなの? プラム)
《可能です。現在戦闘時限定。緊急回避用で1秒までの予測演算可能》
(戦闘時限定で1秒とかしょぼくない?)
まあ、前世でも「ラプラスの悪魔」なんてもう猫に後ろ足で砂かけられるくらいだったし仕方がないか
「戦闘時なら1秒後まで予知可能です。お嬢さま」
「こちらもハッタリでしたのね。残念」
でもたいして残念そうな顔しないのは、もうすでにわたしってお嬢さまの中ではポンコツメイド扱いなのですね。
「念の為に聞いておきますけどルナリア、その予知魔法で戦闘に勝てるのかしら」
プラムに聞くまでもなくルナリアAIが即答
「対ギフト戦なら回避行動が、間に合いません。破壊されます」
うん確かにメイドに戦わせるとかバカな世界線はダメよね。
わかってましたわって顔で小さく息吐かないでお嬢さま。
わたしが傷つきます。
「さあ、もういいわ次行きなさい」
切り替え早っ! メンタル強っ!
「ええと次は発光現象の活用ですね」
光って誤魔化すね
演出時にはナノマシン光らせて操ることぐらいはできるんだし出力をあげれば、攻撃くらいできないのかしら。
(プラム どう?)
《回答:目潰し程度可》
《安全機構プロトコルにより熱変換等は不可》
フンフン なるほど
《補足:戦闘装備非実装》
《その他兵器転用可能スキル: 安全機構プロトコルによる制御実装》
わたしって、至れり尽くせりの安全安心家電だったのね。
とはいえ目潰し程度は可ってことなので、とりあえずお嬢さま相手に早速実践してみることにしました。
「いくわよ ルナリア」
模造刀を構えるお嬢さま。
「模造刀とはいえ、ひとたび剣を握らば、勝利以外許されない。それがアーネスト家の掟! 覚悟なさい」
ちょっと何その戦闘民族。
ブン!!
模造刀がわたしの目の前に振り下ろされた。
危なっ!!
ちょっとお嬢さま、本気出しすぎですー、目が座ってますってば! もう、お嬢さまが勝ってどうするつもりなんです―
(とにかくもう最大出力で光って)
ピカッ!
眩しっ 目がっ!
てなんで自分でやって目瞑らないのかな。でもこれならいける!
《1秒後頭上より打撃がきます》
警告理解―― 「避けて」シグナル発信―― 動作開始
その間1.08秒
ポカン!
「アウッ!」
光で見えない中、模造刀で頭をタタカレタヨ――
「成敗!」
お嬢さまが決め台詞 勝負あり!
「ひどいですーお嬢さま! でも、目潰しくらいにはなりましたか?」
「いや、くるのわかってれば目ぐらい伏せますでしょう」
「それにその程度の光なんか、見ててもなんとかなるわよ。たわいもない」
勝ち誇るお嬢さまに嗜められた
(うーん光は無理か。でもレンズとか使って、増幅すればワンチャンなんとかならないかしら?)
《回答:周囲に危険物があれば安全機構が働きます》
優秀じゃない家電ロボ。
お嬢さまのノートの「光って誤魔化す」の欄に
実践 結果失敗
改善点 もっと光を
修正 不可
と、書き込み。
奇しくも実践された前述の未来予知と共に、お嬢さまハンドメイドのハンコ
「デフォルメ・セシリアたん✖️」を、ボン
さあ、次行ってみよう!
「次は……時間合わせて爆破」
あーやだなどう考えても明るい未来が想像できません。
「実践って言い出したのはあなたですわよ。ルナリア」
こっちは何故かニッコリ微笑んでる。
あの――もしかしてお嬢さま、さっきの戦闘で、少し楽しくなってきてません?
そっちの、ドエス座標に進路を取ったらダメですー
「わたくしね。実はこの案は、少々自信がありますのよ」
「これですわ! アーネスト家自慢の超強力手榴弾」
「これを魔法に見せかけて、爆発させれば威力はバッチリでしてよ」
もうね「大型魔獣向け/人に向けるな」の注意書付き。アーネスト家ご自慢の危ない逸品。
それを持って高笑いとか、悪役令嬢どころじゃないです。
おかしい、お嬢さまが妙なハイテンションになってきてる。 ふと時計を見ればもう深夜。日も変わろうかという時間。
ああ、これか半日こんなおバカなことしてれば、妙なテンションになるよね。ゲーム制作で何度も経験したことある。
翌朝見返せば全没のやつだ……
でもこれ、頭が理解しても無駄なんだよね。
ふたりは『深夜のハイテンションの悪魔』に贖えず、そのまま落ちていきましたとさ。




