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第3話その2 「誤魔化すって大変だよね」

  前回のフラグ即回収とばかりに嵐はすぐにやってきました。

 

 朝食のあとのお嬢さまの自室

お嬢様はというと宣言どおりに、お書き物に勤しんでおられます。


わたしはそのそばで、ちょこちょこと花瓶の位置を調整してニッコリ。午後の予定を反芻して、どこにティータイムを挟もうかと思案中。

 

 そんな午前のほのぼの空間に呪詛の声。

音の発信源はもちろんお嬢さま。ノートを書きながらブツブツと小声で

 

「あーでも違う」

「ウーンこうじゃないわ」

 

 何やら思案中のご様子


 ついには、ウーウーと小さく唸り出すので、心配になりお嬢さまの顔を横からそーっと、覗き込んだ。


縦ロールに隠れて見えてない、俯いた顔が突然こちらへ横向きにグルン

 

(ひっ! ホラ――)

 

 その虚ろな目線はこっちにそのままで、書きかけのノートにグルグルっと激しく殴り書き。

そのままノートを頭上に掲げて真っ二つに引きちぎっちゃった。

 

「アワワワ!? 」

驚いて、尻もちで後退(あとず)


「まずい……まずいのですわ! 」

絶叫お嬢さま現る。

 

「お嬢様どこか具合でもお悪いのですか?」

気を取り直し立ち上がって、そう聞いてみる。

 

「具合なんて悪くないわよ! 気分は最悪だけどね」

えらい剣幕だ。

 

「とにかく午後の予定は全てキャンセルよ!」

「対策会議するわよ、ルナリア!!」

「えっええ――何の会議ですか? お嬢さま」

「それは後で説明してあげるから、まずはセバスを呼んで先生方にそのようにお伝えして謝罪しておくように指示なさい」


「セバスさまですね、探してまいります」

慌ててドアに向かおうとすると


「そんなの探す必要無いわよ。どうせどっかで聴いているんだから、セバス! セバス!!」


 すると間をおかずドアがノックされた。

 

「セバスでございます。セシリア様」


 お嬢さまがほらねっって顔でドアの方向を顎で指す。わたしはドアに近寄り戸を開ける。そこには軽く会釈してるダンディ執事長

 

「ルナリア、さっきの件セバスに伝えてちょうだい」

 

セバス様が頭を上げこちらに向く

 

「ルナリア、報告は迅速かつ手短にだ」

 

 わたしはドアの外にかけてある「静かに!」って書かれた連絡用の小型の黒板を手にしてそこに、「お嬢さま マズイ 今日はお休み 謝って」と書いてセバスの前に無言で掲げる。

 

「うむ承知した。そのように対処する」

「では失礼いたします セシリア様」

 

 お嬢さまは手のひらをヒラヒラと振り、下がりなさいと促す。

 

「ハッ」と小さく答え踵を返したセバス様が、廊下を数歩進んだかと思ったら、すでに姿も気配も消え去っていた。

 

(アーネスト家って、どんな秘密機関なのよ)

《魔族領との最前線の土地柄もあるかと推測します》


「そんなところで呆けてないでこっちにいらっしゃい」

 

「はーい」

呼ばれて犬のごとくお嬢さまのもとにフリフリと戻って

 

「それでお嬢様何がマズイのでございますか?」

「何もかにもないわよ あなたが原因に決まっているでしょう」

「はい?わたしですか――」

 

わたし、なんかしでかした⁉︎

 

「ふぅ」

 

呆れ顔で小さくため息をつくと、わたしに一冊のノートを手渡してきた。


渡されたノートを開くとそこには

「大賢者降臨!?」

「血の盟約AAA +++の奇跡」

「あのお騒がせ公爵令嬢セシリア様が大賢者!!」

なんてニュースペーパーやゴシップ紙の記事がスクラップされていた。

 

 そのあとのページには「血の盟約」の儀式でのセシリアに関連する、市中の噂などの調査報告書がびっちり貼られていた。


そのほとんどが、お嬢さまを褒め称える証言だったけど、中にはとんでもない暴言も綴られていた。

 

 領民38「あんなのが賢者、アーネスト家終わりだろ」[処分済]

 領民103「**に刃物ってこのことだろ」[処分済]

 

(なんか剣呑な鉤括弧内の文字は見なかったことにしよう)


「わかるかしら、あなたの出現はここまで噂になってましてよ」

 

 そして次はこれっともう一冊のノートをわたしに、手渡してきた。

「入学のしおり ようこそ王立サピエンティア・プラム学園へ」のスクラップ。その後に学園に関する記事や書類がまとめられていた。


「そして、これにこれにこれ」

と、どさどさと渡されるノートの束


「魔法実習の対応と対策」

「スキル披露会の対応と対策」

「ギフト体系学対応と対策」

「生徒会役員経験者その後の経歴」etc

お嬢さま手書きの様々なタイトルのノートだった。

 

 それらをパラパラとめくってみる。

(お嬢様、字が綺麗)

《王立学園内の講義内容及び各種行事についてまとめられてますね》

 

パラパラ……

(色分けしたり定規で線を引いたり几帳面ね)

《それらに対する分析及び対応・対策方法の検討が主な内容ですね》


 そして、どのノートも最後のページには、自作なのかセシリアのデフォルメされたキャラが、腕で×をだしてる朱色のハンコが押されてた。


(カワイイ。お嬢さま器用ね、えらいえらい)

《自己保身の為の隠蔽捏造の計画書と断定》

内容は全く可愛くないわね。

 

「カワイイ 器用 エライ 保身 捏造」


 うん?

 ルナリア(AI)がわたしたちの感想を声に出してお嬢さまに伝えてる。それもカタコト!


「ル・ナ・リ・ア――!」

鬼がいる。わたしの目の前に1匹の怒髪天の小鬼がいる。

 

「まあいいわ」

あらあっさり鬼がお嬢さまに化けたわ。

 

「と・に・か・く このままじゃマズイのよ」

「学園に入学した後、どうにか噂どおりに、わたくしが評価賞賛を浴び、この高貴なるアーネスト家の威厳を保てるような手立てを、ここひと月ずっと考えましたの」


 (しおらしく勉学に勤しんでると思ってたのに)


「でもダメだったわ。どんなに考えてもわたくしの素晴らしさを、皆に伝えられる未来が見つけられないのよ。何故なの、ルナリア!」


《隠蔽捏造を目的とした誤魔化し対策のみですから当然の帰着点と分析》

(実に悪役令嬢らしい悪知恵を巡らせてたのね)

 

「とにかくあなたに原因があるのだから、あなたが責任とって何とかなさい」


(最後丸投げきた――! )


 …………でもね たとえ方向は間違ってても、ひと月も何とかしようと必死に調べて考える努力は素晴らしいと思いますよ。お嬢さま。


「大丈夫ですよ お嬢さま、1人で思い悩まず2人で考えれば……多分……大丈夫です」

「考えるのはあなたでしょう」

 

 容赦無さがさすがです。お嬢さま。


「お嬢さま……一緒にお願い―― 」

 

 もう足に縋りついて懇願。

 見捨てないですよお嬢さま。

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