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5.つまりお嬢様ってコト

 それからベッドに座って父様に母様の事を色々と聞いた。

 私は父様の膝の上に乗せられ、よしよしと撫でられ続けている。なんか恥ずかしい。

 なんとこの屋敷には母様の肖像画があるらしく後で見せてくれることになった。

 母様は一介の冒険者で、父様とは任務で知り合ったのだそうだ。私と同じ金色の髪と赤い瞳をしていて光魔法の得意な凄腕冒険者だったらしい。性格は父様の話を聞いている限りクールな人だったみたいだ。

 母様と父様はお互い愛し合っていたが、ある日忽然と母様が消えてしまったらしい。理由は分からないがその時には私をお腹に宿していたんだろうと父様は切なそうに語った。


 私は母様に似ているらしい。もしかしたら孤児院で一目で私に決めたのはその事も大きく影響してたのかもしれない。




 父様と二人で色々と話していたら六の刻を回ったらしい。コンコンとノックの音が響く。「入れ」と父様が応えると、リュートさんとメイドさんが二人立っていた。


「何やってるんですかレイン様」

「いてもたってもいられなくてな」


 リュートさんは呆れたというふうに首を振る。この人朝起きた時からいましたとは言わなかった。多分言ったら父様怒られるんじゃないかな。


「部屋に戻ってくださいレイン様。レディの部屋に居座るなど無作法にも程があります」

「生き別れていた娘を前にしているのだぞ?少しくらい勘弁してくれ」

「それでもです」


 リュートさんは私が父様の娘であったという事実をしっかり把握しているみたいだ。そして父様は何も言わなくても怒られているみたい。


「私のお仕事はどうなるんですか?」


 父様を見上げて聞いてみる。

 そう。私のここでの扱いってどうなるの?


「カノンは私の娘だよ?イーサリオンの正統な後継者として過ごしてもらうことになる」

「娘がお仕事?もう弟子じゃないの?」

「娘で弟子だ。部屋も客室から変えようか」


 すりすりと頬擦りをされる。

 つまりお貴族様になるということだろうか。使用人生活を覚悟してやって来たが、たった一日で随分と話が変わったものだ。


「カノン様には準備などもございます。レイン様。部屋に戻ってください」


 リュートさんに怒られて、父様はやっと私を離してくれた。

 また朝食の時にねと頭を撫でられ父様は移動魔術を使って消えた。きっと自分の部屋に帰ったのだろう。


 リュートさんは改めて私と向き合うと、視線を合わせるように膝まづいた。


「さてお嬢様。改めておはようございます」

「はい。おはようございます」

「突然の事で驚かれているとは思いますが、お嬢様がレイン様の御息女であることが判明し、これより私どもはお嬢様にお仕えする立場となります。私は家令のリュート。後ろに控えるのはお嬢様付きとなる侍女にございます」


 リュートさんが後ろを見やると、二人のメイドさんがスカートをつまんで頭を下げる。


「マリーと申します」

「チエルと申します」


 マリーさんは長い金髪を後ろで綺麗にポニーテールにした緑色の目の背の高い女性だ。どことなくわんぱくそうな瞳が興味深げに私を眺めた。

 チエルさんは昨日体を洗ってくれた人だ。水色のショートヘアに黒い瞳をしており、大人しそうな人だなぁという印象を受けた。まぁ昨日有無も言わさず体を洗われているので大人しいだけの人ではない事は知っているが……。


「まずはお部屋を移動しましょう。お嬢様のためのお部屋をご用意させていただきました」


 そう言ってリュートさんに促される。マリーさんとチエルさんは部屋の中を動き回り服を何着か持ったりしている。私は女神像とネックレスを取ると、また部屋を変えるために屋敷の中を移動させられるのだった。




 新しい部屋はより父様の部屋に近い一室だった。

 客室も広かったがこの部屋もまた広い。そして客室よりかは装飾が多かったし、鏡台ももっと立派なものに変わっているようだ。


「今日からここがお嬢様のお部屋になります」

「はい……」


 テーブルには花が生けてある。すごいな。いつ準備してたんだろう。私がここにきたの昨日なのに。しかも今、朝の六の刻だよ?深夜寝る間も惜しんで準備したのかもしれないと思うと使用人さんたちの苦労が分かったような気がする。


「朝食までにお嬢様にはお着替えをしてもらいます」

「えぇ?せっかく着たのに……」

「申し訳ありません。こちらの都合ですが、お嬢様の事を使用人に知らせる場を設ける予定でして」


 リュートさんは申し訳ないと眉を寄せた。

 あぁ、困らせるつもりじゃないんですよっ。

 私は「大丈夫です」と手を握る。


 リュートさんが退室すると、マリーさんとチエルさんが薄桃色の立派な服を取りだしてきた。今着ているワンピースとは比べ物にならないほどヒラヒラしていて動きにくそうだが、いかにもお嬢様って感じの服だった。

 私は二人に手伝ってもらいながらドレスに手を通す。ちょっと大きめだったが、難なく着替えれた。靴下もヒラヒラしており、用意された靴もなんかツヤツヤした高そうな物だった。

 二人は私の髪の毛をといて編み込みのハーフアップにすると大きなリボンで結んだ。


「まぁお嬢様なんて愛らしいのでしょう!」

「えぇえぇ。可愛いですわ」

「そーかな?」


 マリーさんとチエルさんに褒められてかああと頬に熱が集まる。鏡の前に立つと、大きなリボンを胸元につけた膝丈スカートの可愛らしい少女が鏡に映った。

 わ、我ながらなかなかの出来なのではと思ってしまう。

 あんまりこういうのもなんだが私はなかなか可愛い顔をしていると思うのだ。いや、何言ってるんだろう。恥ずかしいな。


「さぁ食堂へ参りましょうか」


 私は二人に案内されて朝食を食べに食堂に向かった。


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