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20.フェリシア王女とのお茶会

 白を基調としたガゼボは季節の花に取り囲まれていた。色とりどりの花の咲くガゼボに円テーブルが用意されティーセットが置かれている。ガゼボには複数の人がいた。給仕服に身を包む使用人さんが何人かと、薄黄色のドレスを身にまとった少女だ。


 王族の人はみんな白銀の髪をしているのかもしれない。フェルディナンド様もさっき会ったルーケンフォード様も綺麗な白銀の髪をしており、このフェリシア王女も美しい白銀の髪をしていた。


「いらっしゃい。ようこそ私のお茶会へ」


 フェリシア王女は、私を見とめると、姿勢よく立ち上がり微笑んだ。


「はじめまして。フェリシア・ロート・アルセリオンよ。今日は気軽にお話してくれると嬉しいわ」

「カノン・イーサリオンです。よろしくお願いいたします」


 フェリシア王女は穏やかに微笑んだ。

 彼女は今まで出会ってきたどの女の子よりも美しい容姿をしていた。ぱっちりしたオレンジ色の瞳に、バランスの良い鼻筋。先程会ったルーケンフォード様ともどことなく雰囲気が似ている気がする。きっとこういう人を美人と呼ぶのだろう。


「ここまで遠かったでしょう。こちらにどうぞ。魔法で少し暖かくしているから過ごしやすいわよ」

「ありがとうございます」


 促されてガゼボに入ると確かにふわりと気温が変わった。防御壁のような囲う魔力に包まれているようで少し落ち着かない。

 身を縮めながら席に座ると、フェリシア王女はお茶やお菓子を勧めてくれた。


「王宮のパティシエが丹精込めて作った力作たちよ。よかったら感想も聞かせてちょうだい」

「可愛いですね」


 目の前のプレートにはケーキや焼き菓子がちょこんと可愛らしく並んでいた。フェリシア王女の侍女さんだろうか、女性が進み出て小皿に取り分けてくれる。


「甘いものはお好き?」

「はい。好きです」

「私もよ。今日はパティシエにエリュナ・サンクティアで流行ってるっていうパイを焼かせたの。ランベリーっていうフルーツを使ってるんですって。お口に合うかしら?」


 フェリシア王女はニコニコと笑いながらパイについて話している。

 王女様がお勧めするので私も口をつけてみたが、とても甘酸っぱくて美味しかった。素直にそう伝えれば王女はとても嬉しそうに笑ってくれた。


「イーサリオン家に入ってまも無いんでしょう?困ったことはなぁい?」

「いえ、皆さんとても良くしてくれて……強いて言うならお屋敷が広すぎて困るくらいでしょうか」

「まぁ。イーサリオン本邸には伺ったことはないけれど、立派なお屋敷だと聞いたことがあるわ」

「王城の方が立派ですよ!」


 そんな雑談をしながら過ごした。気難しい人だと聞いていたが、全くそんな印象は受けない。これならこのお茶会も乗り越えられると安心もできてきた。




「そういえば、ここに来る道中でルーケンフォード様にお会いしました。フェリシア様とよく似てらっしゃいますね」

「ルークに?」


 あれ?と思った。明らかに王女の声音が不機嫌そうになったのだ。


「そ。ルークは綺麗でしょう?自慢の弟なの」

「そうなのですね……」


 言っていることはなんでもない事なのに、何故か棘のある声音のフェリシア様に少したじろいでしまう。さっきまで普通だったのに……ルーケンフォード様と仲が悪いのだろうか?

 とにかく私は振る話題を間違えたと思い、すぐに話題を変えた。


 話題を変えればフェリシア王女はすぐに機嫌を戻した。

 どうやらルーケンフォード様の話題は好まないらしい。


 それからしばらく、フェリシア王女の好きな物のお話をした。


「それでね、そのメーベル・フロストンの作品がとても素晴らしいの」


 王女は読書が趣味らしい。その中でも大衆小説、特に恋愛物がお好みのようだ。さっきからお勧めの作家のお話にとても熱が入っている。私は小説なんかは全く嗜んでいないのでふぅんそうなんだぁという感じだ。軽い相槌しか打っていないが、フェリシア様は聞いてもらえるだけで嬉しいといった様子でニコニコと話続けている。


「ごめんなさいね、私ばかりお話して。カノン様は何か好きな物はある?」

「いえ、楽しいお話でしたよ。私の好きな物は……そうですね、強いて言うなら魔法でしょうか」


 趣味という趣味もないが、何が好きかと言われれば魔法は好きだった。


「まぁ。さすがイーサリオン家の方ね。そういえば貴女、レイン様が認めるほどの魔法の才があるのだとか。羨ましいわ」


 はぁとフェリシア王女はため息をついた。

 やばい。また話題を間違えた気がする。


「私、魔法は苦手なの。かろうじて水属性の魔法だけなら何とか初級をクリア出来るのだけど、それ以外の属性はからっきしなのよ。魔力もあるだけよ。上手く使えないんじゃ宝の持ち腐れよ」

「そ、そうなのですね……?」


 フェリシア様の魔力は良く言って平均的だ。そのうえ本人が魔法が苦手だと言うのならそうなのだろう。


「水属性の魔法が得意なのでしたら、水に特化した魔法使いになってみてはいかがですか?」

「え?」

「私の母も光魔法しか使えない魔法使いだったそうですが、光魔法の応用バリエーションで認められた方だったそうです。フェリシア王女もそういった特化魔法使いを目指してみてはいかがですか?」

「ふぅん。特化魔法使いね……確かに水属性を極めてみるって言うのも手ね……」


 フェリシア様はうんうんとひとりで頷いてなにかに納得しているようだ。


「先生に特化魔法使いになりたいと相談してみるわ。助言をありがとう」


 フェリシア様はにこりと笑ってそういった。私のアドバイスが役に立ったのなら嬉しい。


 それから魔法の話をいくらかしてみる。フェリシア様は魔法は苦手だと言っていたが、魔法についての知識は充分にあった。座学が得意で実技が苦手なタイプなのだろう。私が主に喋る形になってしまったが、フェリシア様は嫌がることなく相槌を打って話を聞いてくれた。


「ふふ。私貴女とお喋りするの好きだわ」

「そうですか?」

「ええ。ちゃんと私と会話してくれるんだもの」

「?フェリシア様とお茶会しているのだからフェリシア様とお話するのは当たり前じゃないですか」

「そうなんだけどね、普通のご令嬢はそうはいかないの……」

「?」


 よくわらからないが、私が普通の令嬢ではない点がお気に召したらしい。


「またこうやってお話してくれたら嬉しいわ」

「もちろん」


 プレートも綺麗に空になったということで今日はお開きになった。フェリシア様はおすすめだという小説を私に貸してくれた。「救国の英雄と生贄の姫」という題名の本は、フェリシア様曰くレベル1の読みやすい本らしい。なんだレベル1って……。


 魔導車での移動時間や寝る前のちょっとした時間を使って読んでみたが王道のラブストーリーといったところだろうか。普通に面白い作品だったなと思ったのでその主旨をしたためてお手紙と共に本をお返ししたら、レベル2の本が送り返されてきた。


 えっ、もしかしてこれ続くの???


 私とフェリシア様のやり取りはこうして始まった。

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