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19.一陣の

「それじゃあカノン。楽しんでおいで」

「楽しめ、るかなぁ……」


 王宮の入口であるエントランスホールで、私は王宮の使用人さんに預けられフェリシア王女様のところに案内されるらしい。父様は付き添いらしいが、別に用事があるとの事でここでお別れだ。


「気負うことはないよカノン。普通にお話すればいいだけさ」

「お友達になれなくても怒らない?」

「そんな事を気にしているのかい?もちろん怒りはしないよ。でも、失礼のないようにね」

「はぁい……」


 気が乗らない。

 フェリシア王女はとても聡いが、少し気難しいと噂のある王女様だ。失礼のないようにというのもハードルが高い気がする。何が相手の気に障るかなんて分かるわけがないのだから。


「カノン様、フェリシア王女様の元へご案内させていただきます」


 そう言う使用人さんの後ろを大人しく着いていく。




 王城はイーサリオンの本邸よりも豪奢で広かった。イーサリオンのお屋敷もかなり広いと思っていたが、上には上がいるのだなぁと感心してしまう。

 フェリシア王女は王城のお庭の北のガゼボにいらっしゃるらしい。

 エントランスからかなりの距離を歩かされている。



 ふと、強い風がカノンを襲った。

 なんの変哲も無い一陣の木枯らしだ。最近は風邪も強くなってきた。


「あっ」


 ちょっとした違和感と視界の端に写る赤色。自分の髪に飾られていたリボンがひゅうと風に舞うのが見えた。


「あぁ!取れちゃった」


 今日はツインテールに細いリボンを付けている。片一方だけではどうにもバランスが悪いではないか。

 たたっと風に舞うリボンを追う。


「カノン様?」

「ごめんなさい、ちょっとリボン飛んじゃって」


 リボンは近くの木の上に引っかかってしまったようだ。ふわりと身体を浮かせ、リボンを取ろうと手を伸ばした。


 そこまで近づいて初めて、木の枝の上に人が居ることに気がついた。パチリと綺麗な黄金色の瞳と目が合う。


「えっ!?うわっ!!!」


 彼は私に驚いてバランスを崩した。


「あぶない!」


 私は咄嗟に風魔法を使って落ちる彼の身体を衝撃から守った。ふわりと彼の身体を風で受け止め、静かに地に下ろす。

 結構高さのあるところだったからそのまま落ちていたら大怪我していたかもしれない。どうにか間に合って良かった。


「ごめんなさい。人が居るとは思わなくて。大丈夫でしたか?」


 私が地に降りて手を差し出すと、彼はポカンと口を開いてこちらを見つめてきた。よっぽど驚いたのだろう。申し訳ない。


「……天使?」

「え?」

「あ、いやっ、な、なんでもない!」


 彼は急に頬を染めるとカノンの手を取った。

 改めて見ると同い年くらいの少年のようだ。白銀の髪に身なりの良い服を着ている。どこかの御令息といったところだろうか。


「ルーケンフォード様っ!お怪我はありませんか!?」


 私の案内をしてくれていた使用人さんが血相を変えて少年――ルーケンフォードに詰め寄った。落下の衝撃は抑えたので怪我はないと思うけど心配にはなる高さだよね。


「大丈夫だ。彼女が風魔法で受け止めてくれたようだ。僕に怪我は無いよ」

「それはようございました」


 使用人さんは明らかにほっとした様子だ。


 それよりも、だ。


 王城で、王城の使用人さんに「様」呼びされる、ルーケンフォード様。

 その人物には1人しか心当たりがない。

 じっと目の前の彫刻のように美しい顔をした少年を眺める。最近同じような美しい顔を見たばかりだ。


 フェルディナンド様のご子息のルーケンフォード王子様だ!!


 遅いかもしれない謝罪の姿勢を取る。


「も、申し訳ございませんっ」

「うん?あぁ、気にしないでいいよ。僕もあんな所に居たのが悪いのだから。それよりも受け止めてくれてありがとう。大怪我するところだった」

「当然のことをしたまでです!そもそも私が驚かせてしまったのが悪いので……!お礼を言われるようなことは何もっ」

「顔を上げて?」


 恐る恐る顔をあげると、ルーケンフォード様は柔らかく微笑んだ。銀糸の髪が太陽に反射していて、彼自身がキラキラと輝いているような錯覚さえ受ける。


「改めて、僕はルーケンフォード・ウィン・アルセリオン。君は?」

「あ、カノン・イーサリオンと申します」


 スカートをつまみカーテシーをする。


「イーサリオンのご令嬢か。君の噂は聞いているよ。レイン殿が生き別れた娘を見つけて溺愛していると」

「そ、そんな噂があるのですね」


 知らなかった。まぁ、特に間違いでもない噂だ。


「カノン様……そろそろ」


 使用人さんが申し訳なさそうに催促してくる。そうだ、私は今フェリシア王女を待たせているんだった。


「あっ、そうですね!すみませんルーケンフォード様。私行かなくては」

「あぁ。待って」


 ルーケンフォード様は私の手からリボンを取るとキュッと解けた方の髪を結んでくれた。


「また会えるのを楽しみにしてるよ。カノン」

「ありがとうございます。それでは」


 軽い挨拶を済ませ、ルーケンフォード様と別れる。

 当初の予定通り私はフェリシア王女の待つガゼボに案内された。


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