18.お爺様
公認式を終えて、私は王都のタウンハウスでしばらく過ごすのだそうだ。
父様とお出かけしたり、魔法を学んだり、トマスさんにマナーを学んだりして過ごしている。
相変わらずお爺様は私が気に入らないみたいだ。
食事の時には顔を合わせているがまったく目を合わせてくれない。私がイーサリオンに籍を置くことは許してくれたが、私の存在は気に入らないということだろうか……。
まぁ、親族といえど合う合わないはあるだろう。あんまりお爺様を刺激しないように大人しく過ごそうと思っていたところに、お爺様からのお呼び出しがかかった。
「失礼しまぁす……」
呼び出しを受けた執務室に向かえば、お爺様はデスクに向かって書類仕事をしているようだった。お仕事の時は眼鏡をかけるようだ。
「来たか。そこに掛けなさい」
お爺様はソファに座るように促す。テーブルにはティーセットとお菓子が用意されており、お爺様は慣れた手つきでお茶を注いだ。
「いただきます」
私がお茶に口をつけて一息つくと、お爺様は、一通の手紙をテーブルに置いた。
「王家から君に招待状が届いている。明後日の午後、フェリシア王女との茶会に出席するように」
「あぁ、あのお話ですね。分かりました」
「分かってはいると思うが、君はもうイーサリオンの家名を背負う者だ。フェリシア王女にもご迷惑がかからないように努めなさい」
「はい」
お爺様は優雅に紅茶に口をつける。
「……」
「……」
え?お話それだけ?
執務室に沈黙が訪れる。私からお爺様に何か話題をふった方がいいのだろうか……いやでも何を話せば……?
オロオロと悩んでいると、お爺様はカチャリとカップをテーブルに置いた。
「チェスは分かるかね」
「え」
急にそんな事を言われてびっくりしてしまう。完全に予想外だった。ポカンとしていると訝しげに眉をひそめたお爺様が「どうなんだね」と催促してくる。
「えっと、チェスは、分かりません」
「そうか」
お爺様はテーブルのお菓子とティーセットを魔法で移動させるとチェス盤をテーブルの上にとり出した。
「チェスは貴族の嗜みの一つだ。人並みには指せるようになりなさい」
それからお爺様は私にチェスの指し方を教えてくれた。駒の動かし方を教わって、ハンデ付きで1試合指した。
結果はもちろん負けてしまったが、筋がいいとお爺様には褒められた。
「次はハンデ無しで指せるように頑張ります」
「ふっ。そうかね。まぁ……頑張りたまえ」
「はいっ」
「下がりなさい」と言われて執務室を後にする。
終わってみれば、これはお爺様なりに私と打ち解けようとしてくれていたのではないかと思えることができた。
ただ嫌われていると思っていたが、そうではないのかもしれない。
話を聞くところによると、お爺様はチェスが大好きらしい。
またお呼ばれしてチェスを指すこともあるかもしれない。
次は負けないように私はチェスも指せるようになろうと決めるのだった。




