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10.アズール

 午前中は「マナーのお勉強」ということらしい。

 本来は先生がつくものらしいのだが、私の存在はあまりに突然に降って湧いてでた。という事で先生が決まっていないのだそうだ。

 まぁそりゃここに来て二回しか寝てないくらいですからねぇ……。

 学術の勉強についても同じ状況なのだそうだ。


 ということでしばらくの間は能力を測りつつ基本的なマナーをリュートさんの下で学んでいくことになった。


 マナーのお勉強って何するんだろうと話を聞いていると、歩き方から矯正させられるらしい。

 立派なレディは頭に本を乗せているという意識を持ちながらまっすぐな姿勢で歩くのだそうだ。


 だからって本当に本を乗せるのは話が違うんじゃないですかぁ?

 そもそもまず頭って球体で、球体と面ってバランスをとるという一点に置いては結構相容れないものでぇ……え?私間違ったこと考えてるぅ?


 ぐるぐると言いたいことはあるが口には出さない。


 私はいい子ちゃんなのだ。


 分厚い本が頭からずるっと落ちそうになり、反射的に魔法で押し支えてしまった。


「お嬢様?ズルはダメですよ?」


 ニコッと笑ってはいるけど、リュートさんがちょっぴり怖い……。


「……ごめんなさい。つい癖で魔力が出ちゃって」


 それからしばらくウォーキングのレッスンをした。

 頭に本を乗せたままぐるぐる歩かされたり、背筋を伸ばす感覚を覚えさせられたり……ちょっと慣れてくると何とか形になってきた。


「お嬢様は物覚えが早いですね」

「ありがとうございます」

「これを無意識でできるようになりましょうね」


 ……ひぃっ!



 まだお昼まで時間があるようだと時計を見ていたら、スーツを着た同い歳くらいの少年ががカラカラと台車を持って部屋に入ってきた。台車の上にはあまり見慣れない物が置かれている。なんだろうコレ?

 眺めていたら少年がピシッと私の目の前に立った。


「初めまして、カノンお嬢様。アズールと申します」


 一目見て思った。


 ち っ ち ゃ い リ ュ ー ト さ ん だ ! !


 リュートさんと同じ黒髪に青色の瞳をしたアズールはニコッと笑う。バッとリュートさんを見上げると「不肖の息子です」とこれまた同じような笑みが返ってきた。似てるぅ!


「よろしくお願いします」と笑いかけると、アズールも「よろしくお願いしますね」と言って頭を下げた。


「お嬢様には嗜みとして楽器を習っていただきます」

「楽器」


 なんだこれと思ったものは楽器だったみたいだ。リュートさんは台車の上に置かれた楽器を持ち上げる。


「ご令嬢の嗜みとしてはこちらのヴァイオリンやフルートなどを習われる方が多いでしょうか。ピアノを嗜まれる方も居ますね」


 えっ、あの部屋の隅にあるでっかい黒い塊はピアノだったの?と驚く。もっとこじんまりしたピアノしか知らなかった……。


 楽器に詳しくないだろう私のためにアズールが一つづつ演奏を披露してくれた。1分くらいで終わる簡単な曲をピアノで、ヴァイオリンで、フルートで、順番に演奏してみせてくれる。すごい。歳もあんまり変わらないのになんて多才なんだ……!

 パチパチと手を叩くとアズールは照れたように首を傾けていた。


「お嬢様。お気に召したものはありましたか?」


 アズールに言われうーんと首を捻る。


「実際に触ってみてもいいですよ」


 とヴァイオリンを渡された。アズールに教えて貰いながら首でヴァイオリンを挟み、弓を引く。

 アズールの指示に従いながら弦を弾くと音がなる。おお。なるほど。でもちょっぴり首が辛いかも……。


 フルートも持たせて貰った。おお、思ったよりかは軽いかも。フルートを吹く姿勢だけ真似させてもらう。コレはアズールのだから口はつけてない。うーんこの姿勢で指を動かしたらフルート落としちゃいそう。


 ピアノは孤児院にもあったから触ったことがある。けれど、こんなツヤッツヤした立派なものではなかった。せっかくだから触らせてもらう。ドレミファソラシドを弾いて満足した。曲?そんなもの弾けない!


「どうしますか?」と言われて悩む。どれも本格的に習うとしたら難しそうだ。

 そういえばと思いついたことをリュートさんに尋ねる。


「父様も楽器を弾けるの?」

「はい。レイン様は幼い頃よりピアノを嗜んでおられます」


 ピアノか……唯一知っている物だし、簡単そうだし、とりつきやすいかもしれない。


「父様と同じピアノにする!」


 親孝行にもなるかもしれない。





 それから私が真似っ子しながら食事のマナーをクリアしている事がバレたのだろう。お昼は食堂ではない部屋にテーブルが用意され、私はちょっとよそ行きの服を着たチエルさんと向かい合っていた。


 今日はちんまり切られたサンドウィッチだ。チエルさんは食べる時のマナーを説明しながら実演してくれる。マナーがいっぱいある本格的なディナーの場には出てこない料理だからそこまで構える事は無いと笑ってくれた。


「アズールには会いましたか?」

「はい!演奏してもらいました」

「そうですか。あの子は将来イーサリオンを支える者として教育しております。どうぞあの子と仲良くしてあげてくださいね」


 なんとチエルさんはアズールのお母様なのだそうだ!

 えっ!

 ということはリュートさんとチエルさんはご夫婦!?

 それにちょっと待って?二人ともかなり若々しいぞ!?何歳なんだ!?


 びっくりしているとチエルさんはこのイーサリオンで暮らしている使用人一家はいくつかあるのだと教えてくれた。

 西棟に広めの部屋があり、そこで一緒に暮らしていたり、個々で部屋を貰っていたり色んな形はあるが珍しいことではないみたいだ。チエルさんもこの屋敷で産まれ育ち仕えているのだとか。この屋敷小さな村みたいだな……。


 チエルさんに屋敷の七不思議を聞いていたりしているとあっという間に時間が過ぎる。


 午後。

 お楽しみの魔法の授業の時間だ。


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