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アリスの教室  作者: 白神零
彼岸花の黙示録編
3/3

エピソード2『支配者と月光の花』


『家族』



翌日


私が目を開くと、ベッドの横に見覚えのある姿がいる事に気づく

「…どうやって入ったの?」

そこには紺のスーツに身を包む有栖の姉…霜月美波が座っていた

「まずひとつ…何かあったなら、無事を報告して…一之瀬さんからの報告を聞いてびっくりしたんだから」

「ごめん」

「もうひとつ…あまり無茶しちゃダメ」

美波は私の頭を撫でる


その後…美波は朝食の準備をして私と共に食卓に着く

「学校生活はどう?」

「まだ登校して一日しか経ってないし、そう言うのは1ヶ月くらい経ってからでしょ」

「まぁ…そうかもね、少し心配なんだよね…有栖も理解してると思うけど…これほど早く情報が漏れるのは…政府の中に敵に通じている内通者がいるってことだからね」

「それに関しては私も同意見だけど…私がこの学校に入ることは数ヶ月前から決まっていたから、絞り込むことはできないかな」

私はフォニクスと名乗った人物のことを思い出す

「(彼は私を『特別な能力者』って言った…つまり…知ってるのかな、私の秘密を…それともランク1だからってだけ?)」

私が心の中に浮かべた疑問に気づいたかのように…美波は話し始める

「私も調べてみるけど…君がその結論ならどうにか方法を考えないとね」

「そうだね…」

私は朝食を食べすすめながら…ふと浮かんだ疑問を口に出す

「そういえば…どうやって入ってきたの?」

「あなたの部屋を用意したのは誰だと思っているの?」

「合鍵を渡した覚えはないんだけど」

「作ったに決まってるでしょ」

さも当然のように言う美波に私は思わず呟く

「怖い」




_________



名前:霜月美波

能力:『NO DATA』

称号:スフィアカンパニー・社長

詳細:霜月有栖の姉、20歳にして会社を興して成功した実業家でもある.能力測定においてランク⬜︎に分類された能力者であるが、二次測定において能力が消失している事が確認された…非常に稀なことではあるが『喪失者』であると判断された


__________



朝食後、美波は私に提案をしてきた

「良かったら一緒に買い物にいかない?」

「…別にいいけど、なんで?」

「今日は休日でしょ?お姉ちゃんは妹と一緒にいたいの」

「…何が目的なのかをちゃんと教えて」

「目的なんかないよ…一緒にデートがしたいだけ」

美波は笑顔を向けてくる

「本当にそれだけなら良いけど」

私がそういうと、美波は嬉しそうに朝食を食べ進め始める





美波は霜月家の人間で、有栖の姉である

だが、霜月家の次期当主は有栖だ…それは何故か…それは複雑な家庭環境にある

有栖が帰還した後に父親が失踪し、母親は何故か有栖だけを霜月家現当主であり…有栖の祖父である霜月総一郎に引き取らせた

総一郎は有栖を我が子のように育て…次期当主に指名した


美波は20歳を過ぎ、大学を出てすぐに『スフィアカンパニー』と言う政府とも取引を行う開発会社を興した実業家だ

有栖と母親の確執は深いが、美波と有栖はそれほど関係が悪くない

祖父のおかげというのもあるかもしれないが、何よりもの理由は美波の持つ有栖への愛の重さと言えるかもしれない



私は美波の運転する車に乗って買い物をする場所に向かっている

「お祖父様は元気にやってる?」

「まぁまぁかな…離れて一週間も経ってないのに毎日メッセージ来るし」

「心配なんだよ…お祖父様も、私は一之瀬さんから連絡を貰ったけど…お祖父様にはあなたから伝えなさい」

「そうするよ…さっきメッセージ送ったけど、お祖父様…土曜日は忙しいから連絡が入るなら夜かな」

「あぁ…円華さんに携帯を預けてるんだっけ」

「そう…じゃないと私にメッセージ送りまくって集中してくれないからって…お祖母様がね」

私と美波の間に沈黙が流れる

「一応…お母様に伝えとこうか?」

美波が気を使ったように言う

「必要ないよ、あの人にとって私は死人だから…死人に無事も何もないでしょ?」

「有栖」

「幼いながらにあんなことを言われたのを根に持ってるかって?当たり前だよね…あの人にとって私は異常者にでも見えてたんだろうね…でも私は正常な女の子だった…あの人とは二度と関わり合いにならないって決めたから…余計なことしないで」

「分かった…有栖の意思を尊重するよ」

ふと…私が窓の外に目をやると…何か文字を書いた紙を掲げている人たちが何かを叫んでいた

「あれは…」

私がそう呟くと、美波がそれに反応する

「あれは最近活発になってきたデモ活動だね…能力者を管理して戦争への利用を禁じろとか『廃棄場』の人々への差別をやめろとか…」

「そんなことをして私たちにメリットあるの?」

「さぁ?あの活動に参加している人たちはほとんどが『廃棄場』出身だったり、人権擁護を叫ぶ偽善者だからね…誰も相手にしてないよ、裏ではテロ活動をしている組織と繋がっているって噂もあるし」

「そんなに変えたいなら…政治家になれば良いんじゃないの?」

「無理だね…『廃棄場』出身だと政界に入ることすら不可能だもの…人権擁護を叫ぶ人はあそこではああ言っても…具体的な方策は政府に任せきりという奴も多いんだ」

「だから偽善者ね」

「そう…ああ言うのには関わらないに限るよ」

美波の表情が少し曇っていることに私は気づく



_____



私は休日を有意義に過ごした

引越しの際にお祖母様と最小限に抑えた服などの荷物も…美波のせいでかなり増えてしまった


朝…私は制服に着替えて鏡の前に立つ

私の目には自身の瞳の中に映る自分の姿が見える


私は思い出す…『第三次世界大戦』において私が滅ぼしたひとつの村を


部屋のチャイムの音が私を現実に引き戻す

ドアを開くと、そこには輝夜と希空がいた

「おはよう、下で希空と会ってな…待っているのもなんだから尋ねさせてもらったぞ」

「少し待って…鞄を取ってくるから」

「もちろんだとも」

私は部屋に戻り、鞄を持ち上げる

鞄の横に置いてあった携帯を持ち上げると、メッセージが届いている

『unknown:僕に会いたいそうだね、君の頼みなら構わない.メッセージは託した、君の上官に』

私はため息を吐いて呟く

「気に触る奴」


私は再び玄関のドアの前に立つ

「お待たせ」






________




???


そこにはひとりの青年がビルの端に立っている

「黄昏てるね…ゼロ」

その青年は声の主の方に振り返る

「パペティア…彼は?」

「さぁ?私の知ったことじゃないもの」

「全く…二人一組で行動するように言ってるじゃないか、彼のお目付役として君を着けたのに」

「それ守ってるメンバーいる?」

「…クラリスやフェンリルは守ってくれていると思うけど…どうだろ」

パペティアと呼ばれた少女はゼロの持ってる携帯を目に入れる

「誰と連絡?」

「協力者にちょっと…あちら側で動きがあったようでね」

「あっそ…」

「聞いたのは君だぞ?…まぁいいか、彼を見張れ…これは命令だ、いいな?」

「はいはい」

パペティアの姿は一瞬にして消える




『もう1人の超越者』



学校が終わり…私は警察庁に出向く

私が部屋のドアをノックすると、ドアが開き…一之瀬さんが出てくる

「待っていたよ…」

一之瀬さんは私に手紙を差し出す

「彼に預かったよ、気になる点があるそうだね」

「はい…一之瀬さんの振りは下手だね…アルセーヌ」

私の前に立つ一之瀬さんは少し面食らったように驚く

「…どういうことかな?」

「一之瀬さんは今司法省で内閣府の情報局長との面会中だよ…」

私は氷の破片を彼に飛ばす

彼はその攻撃を容易に無効化し、姿を変えながら笑い出す

「いやいや…揶揄って悪かった、君なら気づくとは思っていたが…ここまで早くとは…何か特別な力を使ったのかな?」

「…そんなことまで教える義理はないね、私の質問に答えてくれる?」

「あぁ…この印のことだろう?」

アルセーヌは手首にある紋章を見せてくる

「それは何?」

「…この間の襲撃者にも同じ紋章があったそうだね、この紋章に関して知りたいのなら…君に聞き返さなければならない」

アルセーヌは表情を暗くする

「『廃棄場』に関して知っているだろう?」

「うん…私たちが第三次世界大戦の掃討戦で攻撃した東アジア地域のことでしょ?」

「一般的にいう『廃棄場』は東アジア地域のことを指す、だが廃棄場とはさらに意味を広げると戦敗国の人々の住む場所のことを指すんだ…当然日本にもある」

「…日本列島東側地域のこと」

「そうだ…『廃棄場』の政府管理地区ではこういった印を埋め込まれるんだ」

「君はそこ出身ってこと?」

「そんなところだ…」

アルセーヌの答えを聞いて…私はある違和感に気づく

「(…この雰囲気…)」

しかし、私はその疑問を一旦置いておき…彼の話に意識を戻す

「その印を埋められた人は記録されているの?」

「あぁ…その記録は全て司法省に保管されている、君の権限ならアクセスは出来るだろう」

「ありがとう」

「いいんだよ、君は友人だから」

アルセーヌはそう言って部屋を出ようとする

「まだ日本に戻らないの?」

「…そのつもりは無いよ、少なくとも…今は」

アルセーヌは部屋から出ていく

「…あっそ」

私は司法省に向かう為に部屋から出ていく



________



夕方


霜月有栖が司法省に入っていく姿を隣接するビルの屋上からその青年は見ている

「…司法省か…」

「不自然でしょうかね?」

フォニクスは振り返る

「君は…月光輝夜か」

「知っているのですね…実に光栄です」

輝夜は懐から鉄扇を取り出す

「私もあなたのことを調べました、『彼岸花』の構成員…CNはフォニクス」

「よく知ってるな、どうやって調べた?」

「その質問にはお答えしかねますね…あなたがそれを知る必要は全くありません」

「そうか…」

フォニクスが動き出すのと同時に、輝夜は鉄扇を動かす

強い突風がフォニクスにぶつかり…彼は空中に放り出される

「(風…こいつの能力は風か?)」

彼は風を操作して自身の足場を作り、空中から輝夜を見下ろす

「あなたは今…不思議に思いましたね、私が風を操ったことを」

「あぁ…君の能力は『月の華』と呼称される特殊型の能力だが、風を操作する権能はなかったと記憶しているが」

「それは正しいですね…私の能力は結果的に風を操作することを可能にするというだけですから」

「結果的に…?」



月光輝夜の異能…『月の華』

それを単純に表現するなら、月の光の力を自身の力に変換するものだ

月から得るエネルギーは風、炎、雷、水などの自然系統の能力に変換することもできる




輝夜が再び鉄線を動かすと、周囲の大気を揺らし…水流が彼女の周りに発生する

「自然エネルギーに属している月光のエネルギーは私の能力を通して…自然属性の力に変換できる…ただ、それだけのこと」

水流は龍を模してフォニクスを呑み込み…後ろ方向に飛ばす

「『月光水龍』」

「(これでランク2だと!?あり…えない!)」

「そして、純粋に月光の力を放出することもできる」

彼女が再び鉄扇を振ると、水流は消え…彼女の前に白く光るエネルギー弾が現れている

「『月華光弾』」

それが放出されると同時に、フォニクスは自身を風で煽り…攻撃を回避する

「よく避けたね…褒めてあげるよ」

フォニクスは舌打ちして…竜巻を発生させて輝夜にぶつける

輝夜は再び鉄扇を振る…すると、フォニクスの発生させた竜巻より大きな嵐が発生し…竜巻の影響を消し去る

「街中でこの技は使いたくない…大人しく消えてくれ」

輝夜とフォニクスが能力を発動させようとした瞬間

凄まじい風が2人を巻き込み…動きを止める


『神風』


着地し損ねたフォニクスは風に抗えず、隣接しているビルの屋上に叩きつけられる

輝夜は風を防ぐように『月光之繭』を発動させて自身を護る

「この力…」


2人の間に天使の様な見た目の1人の能力者が降りてくる

「ここは日本政府の管轄だ…これ以上の能力使用は禁ずる」

そこに降りてきたのは、有栖と同じくランク1に分類される能力者

『天使』来世日菜(くるせひな)だった


フォニクスはそのことにいち早く気づく

「(…『天使』か!…分が悪すぎる)」

フォニクスは竜巻に乗り…その場からの離脱を試みる

天使はそれに目を向ける

「…禁ずると、言ったはずだが?」

その瞬間…再び『神風』が発生し、フォニクスを斬り刻み…天空に打ち上げる

「『四枚』」

彼女がそう呟くと…背から伸びていた翼が二対四枚に増える

同時に白い炎が彼女の周囲に発生する

「燃え尽きろ…『神炎』」

炎が天空を貫き…フォニクスの影を消し去る

「…手応えがない、手加減しすぎたかな?」

天使はまぁいいかと呟いて、輝夜に向き直る

「君…月光輝夜だね…大人しくしてね、痛みはない」

天使が彼女に近づいていく


「…相変わらず…やる事が派手だね、加減ってものは出来ないの?」

天使は動きを止め、振り返る

「…有栖?」

「そうだよ、日菜…」

そこには有栖が立っていた



____________



名前:来世日菜

能力:『救世主(メシア)

称号:『天使』『ランク1』『内閣府所属能力者』



____________




輝夜は突如現れた有栖に目を向ける

「有栖…」

「尾行して来てる気配があると思ったら、輝夜だったんだ」

「ごめん…」

「まぁいいけど、日菜…その娘は私たちの味方だよ」

「そうなの?」

「さっきまでフォニクスと戦っていたんだ、そう考えるのが妥当でしょ…暴走しないで」

日菜は輝夜に手を差し伸べる

「それは申し訳ない」

「いいえ…こちらこそ」

有栖は日菜に近づいていく

「有栖…この人は」

「ちゃんと紹介するよ…この娘は来世日菜…私と同じランク1能力者で『天使』という称号で呼ばれている」

「内閣府所属の来世日菜…よろしく」

日菜は天使の翼を消し去る

「(彼女が…ランク1の中で有栖と一二を争う実力者…)」

輝夜は日菜を警戒するように見る

「まだ私のこと警戒してる?」

日菜はそう言って輝夜の視線に目を合わせる

「え…」

「警戒しないで…日菜は『天使之輪』っていう権能でそういう意識に敏感だから」

有栖は『天使之翼』を解除しても尚消えない日菜の頭上の光の円環を指して言う

「すまない」

輝夜はいつもの調子を取り戻して心から謝る

「いいんだよ、敵意がないのはわかるから」

日菜は優しい声色でそう諭す

「日菜…フォニクスがどこに行ったかわかる?」

「分からない…でも、避けられるはずがない体勢だったから…誰か協力者がいたはず」

「だろうね…」

「とりあえず…気を付けて、さっきの敵はかなり前からここで張っていたみたいだから」

「え?私が来る前から」

「うん…少なくとも2時間ほど前から、そう…君の上官が司法省に訪れた時くらいから」

「…狙っていたのはそっちか」

有栖は考えを巡らせて、ひとつの結論に行き着く

「ありがとう、先に戻るから…」

有栖はその場からいなくなり、そこには日菜と輝夜だけが残される

「あ…」

残された2人の間には沈黙が流れる…

「じゃあ私も戻るよ…君も気を付けてね」

日菜はビルから飛び降り、輝夜は1人取り残される



____________



???


フォニクスは肩で息をして満身創痍の状態で俯いている

「本当…迷惑」

「助けられたね…パペティア」

「ゼロ様の命令で助けただけ、また別の構成員につけられるのはもっと面倒」

「そうか…」

「で?収穫は?」

「あったよ…かなり高確率で『内通者』の存在はバレているようだ」

「…君の失態だね、当然君が処理するんでしょ?」

「分かっているよ、次は本気で…」

「『祝福(ギフト)』も使わず手を抜くのはもうやめるのね、次に霜月有栖と接敵した時…手を抜いていたら死ぬよ」

「なんでだい?」

「気づいていなかったんだ、『天使』が割り込む少し前から彼女の意識はあなたの方に向いていた…凄まじい程の殺気だったわ…ゼロ様に匹敵するくらいの」

「…恐ろしいことを言うね」





____________




次の日


登校すると、廊下で声をかけられる

「少しいいか?」

そこに立っていたのは神城凪だった

「何?また私に文句を言うなら…」

「いや、そうじゃない…あのときはすまなかった…」

そこで神城は頭を下げる

「いきなりどうしたの?」

「…お前が転校してきた日…俺の妹が能力者の攻撃に巻き込まれそうになったのを助けられてな…助けてくれて感謝する」

「…なんで私だと?」

「…俺は連絡を受けて現場に行った、そこでちょうどお前の姿を見て…妹が助けてくれたって指さしたんだ」

「そっか」

「お前…『ランク1』なんだろう?」

「そうだね…否定はしないよ」

「お前さえよければ…俺を強くして欲しい!」



次回予告


『俺を強くして欲しい!』…と言う願いを受けて、有栖はもう1人の『ランク1』の元を訪ねる


その裏で…一之瀬と『天使』来世日菜は政府の中に紛れ込んだ『内通者』を炙り出す作戦に移る

『君はまだ…能力の高みには立っていない、いつの時代も…人間ではその高みには立てないんだから』




彼岸花の黙示録編エピソード3『0の始まり』


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