表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

第二章 懇親会

夜の懇親会は、会社近くのイタリアンレストランで開催された。社員たちは和やかにワインを片手に談笑している。咲は端の席で、静かにパスタをつついていた。


「咲ちゃん、お酒飲まないの?」


隣に座った営業部の田中が話しかけてきた。咲より少し年下の、人懐っこい男性だった。


「車で来たので」


「そっか。でも今度一緒に飲みましょうよ。咲ちゃんって、なんか神秘的でいいですよね」


田中の言葉に、咲は小さく笑った。神秘的というより、単に人付き合いが苦手なだけなのだが。


「田中君、咲さんを困らせちゃダメよ」


香織が割って入ってきた。手にしたワイングラスが微かに揺れている。


「あ、香織さん。すいません」田中は慌てたように頭を下げた。


「咲さんは涼介さんの幼馴染なんですって。素敵な関係ですよね」


香織の言葉に、周囲の視線が一斉に咲に向けられた。咲は居心地の悪さを感じながら、曖昧に微笑んだ。


「香織」


涼介の声が響いた。彼は香織の隣に座り、そっと彼女の肩に手を置いた。


「少し飲みすぎじゃない?」


「大丈夫よ。楽しいもの」香織は涼介に甘える様に寄りかかった。「ねえ、咲さん。涼介さんって昔からこんなに優しかったの?」


咲は涼介と目を合わせた。彼の表情は読み取れない。


「さあ、どうでしょう」


咲の曖昧な答えに、香織は不満そうな表情を見せた。しかし、すぐにいつもの笑顔に戻る。


「もっと昔の話を聞かせてくださいよ。きっと面白いエピソードがたくさんあるんでしょうね」


「香織、そろそろ帰ろうか」涼介が立ち上がった。「みんなも、今日はありがとう。咲、送っていこうか?」


「いえ、大丈夫です」


咲は慌てて首を振った。二人きりになるのは、まだ心の準備ができていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ