#4 将来の軌道
小説家を目指すと決めたことまでは良かった。しかし彼は迷っていた。
彼は、小説家になる為にどんなことを努力し、実行に移せば良いのか知らなかった。
それもそのはずである。なぜなら、未だこの人類史において小説、文章を書くことを生業としている者は極少数であり、なり方など知っているものはほとんどいないからだ。そして本はほとんど学術書か、童話に絞られている。小説などほとんど知られてさえいないジャンルである。あるにはあるが、、
(どうしたらいいのだろうか)
サザンカはやはり思案する。そう簡単に結論が出て良いものではないということは分かっているが、結論は未だ出ない。学校に歩を進める。
だが、今はただ学校に熱心に通うことが最善手であることは流石に分かっている。今から始めなければならないことなど無いのでないかと思えてくる。
しかし、そう単純なものではないのだ。だからこそ何から手を付ければ良いのか分からない。ここ数か月はずっとそんな調子だ。親に相談すればいいのは確かだと思うが……なんかヤダ、なんかとしか言えないけどなんかヤダ。それに、相談したってなにも進展がないに決まっている。
(もう、どうしようかな。本当に、こんな事目指してしまっていいのだろうか。ほかの皆は、親の仕事を継ぐとか家の将来に関わる立派な将来があるというのに自分はこんな好きなものを目指してしまって良いのだろうか。本格的に不安になってきた。どうしよう)
そのままダラダラと歩いている間に学校に着いてしまった。もう分からないなあ、本当に。意味わからない。もう思考が支離滅裂だ。今日はもう考えないことにしよう。
(今はまだ分かるわけないんだよなあ)そう思いながら、こめかみの辺りを掻く。
―――――放課後―――――
(はあ、今日も終わった。本当にいつも通り退屈な授業は終わった。ははは――――!!)
サザンカは授業が面倒すぎて放課後たまに狂うのだった。学級ではこれのせいでちょっとおかしい人扱いされているが……玉に瑕なだけであまり気にされていないのだとか。
――いやこれを「玉に瑕」とかいう一言で評価できてしまうの凄、というかどうなってんの⁉(サザンカ談)
後ろから少し足裏を擦るような足音が聞こえる、アベリアだろうか。
「やぁ、サザンカ。難しい顔してどうしたんだよ。」
この声はアベリアだな。
「何でもないよ、アベリア。」
そうして振り向く
「あらら、ばれちゃったか」
「分かるに決まってるだろ、声で分かるよ」アベリアは、可笑しそうに笑った。
「なんか変な感覚持ってるよね、サザンカ」
「な。俺にも何でだか分からないよ」
「結構意味わからないね、いつも通りだけど。まぁいいや」
「いやさ、やはりあれなんだよね。小説家になると言ったけれども、どうしたらいいのか分からないんだよ。」
「そうなのかぁ。でも今は考えなくてもいいんじゃないかなぁ。僕だってさぁ、今は家の仕事を継ぐことしか考えてないから。今、将来のことをしっかり考えようとしてるサザンカが凄いんだよ。だから気にしなくていいじゃないか。なぁ?」
そう同調を求めた。
「そうともいかないじゃないか。後四年経ったら僕たちはもう、仕事を始めなきゃいけないんだ。今から考え始めなきゃ間に合わないよ。そうお気楽に考えてはいけないさ。家の仕事を継ごうと思えるからそうなのかもね。」
「……自然な皮肉やめろよ、誰がお気楽だよっと」
少し不満そうだ。
「いや、何も言ってないけ……」
「言ったわ。」
食い気味に言われた。何が不満だったんだか?
「なんか僕に失礼なこと考えてないかい?」
「そんなことないさ。ああでもアベリアにも見てほしかったな。」
「何をさ?」
「あれだよ、あれ。」
ちょっと意地悪に言ってみた。
「あれね、あれ。 ――何だっけ?」
「いや分かってなかったの⁉ 前話したじゃないか」
多分呆れたような顔をしているだろう。
「あ、あれね。思い出したよ。なんか凄い綺麗な街を見たって話だろう?」
「そうそう。あれを見たら、アベリアもそれを表現できるような仕事になってみたくなるんじゃないかなと思うんだけどね」
「前もそのことは耳にタコができるくらい聞いた記憶があるんだけど、そんなに綺麗だったんだと毎回思うよ。本当に、どれだけ綺麗だったのか見てみたいね」
「そんなに話してたっけ? けど、ごめんよ」
ちょっと申し訳なさそうに言ってみる。
「良いさ良いさぁ。サザンカの話聞くのは楽しいからね」
「そう言ってくれるとありがたいよ」
「まぁ、話は戻るけれども、また将来について迷ったら相談してくれ、ちゃんと乗るからさ」
「じゃあ、早速と言っては難だが――、ちょっと練習として書いてみたんだよ、物語を。見てくれないか?」
「いいよ。どんな物語なんだい?」
「それは見てからのお楽しみさ」
悪戯っぽく、笑って言った。
「じゃあ題名は?」
「『恋文』」




