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#3 志すもの

 

 一


――見慣れた世界に戻ってきた、時計を見た。どうやら、ほとんど時間は経っていないようだ。


 (あの別の世界のようなところは何だったんだろうか。あんな建物こっちの世界では見たことがないのに、あそこでは、当たり前のように存在していた。そこらにある建物だってこの街で一番高い建物と同じぐらいの高さがあった。)


「はい。じゃあ授業始めるよー」

そんな軽い調子で扉を開けながら先生が入ってきた。

「起立、気を付け、礼、よろしくお願いします。」学級の委員長が挨拶をした。

「「「よろしくお願いします」」」

(挨拶ちょっと遅れたけど大丈夫だよな?多分。)


 「今日は、ヘデラ教の教義、そしてそれを守る重要性についての授業をします。」

(そうだった、今日の一限目は宗教の授業だった。国教はヘデラ教だからここではヘデラ教について学ばないといけない。本当に面倒臭い、けど見方によっては少し面白いところがあるから、まあそれが救いか)


「ヘデラ教には花を摘んではいけないという教義がある。なぜなら、ヘデラ教は、太陽を信仰する宗教であり、花は太陽がこの地を見守るためのものだからです。」

 

(やっぱり、先生はいつもは軽い調子なのに、授業になるといきなり固いしゃべり方をするから、いつもその落差で、ちょっと吹き出しそうになる。これがそれなりに危ない。

 そういえば、さっき当たり前のようにこっちに戻ってこれたけど、実は結構危なかったのでは?まあ帰ってこれたから今考えるのは、そのことではない気がする。そして、あんな信じられないような夢を見てしまったら、今まで抱いていた夢なんてどっかに行ってしまいそうだ。しかし、それなら何を目指せばいいのだろうか。あの見上げるような建物に、瞬いている夜景、それらを表現してみたい。

それなら、吟遊詩人?画家?小説家?

 歌は、友達からも誰からも音痴と言われているから無理なのかな。

 絵心は絶望的にないから、画家は無理。

 そうなると……小説家か?けど、文を書くには絵よりも技術が必要だと聞いたことがある。けど、自分なら何でもできるはずだ。

 まだ、何の才能があるかなんて誰にも…… いや、自分にさえわからないのだから。

だから、小説家を目指してみよう。

 絶対に楽しいだろうしね。

 

 二


「母さん。僕は小説家を目指そうと思うんだ」そう話を切り出した。

「そんな急に、なんで?」

「とても綺麗で見たこともないような景色を見た。それを表現してみたいって思ったから」

「そんなにも綺麗なものを見たのね。けど、どうやってなるの?」

「それは、まだ考えてない。けど、これから考えていく。」

「そう。また、しっかり考えたら教えて。」

「うん」


「――なると決めたら頑張りなさいよ。」

母さんは、そう言った。

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