表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けは星の泉で 〜アストレアの星蝕と祈りの巫女〜  作者: 星谷明里
第五章 祈り 〜夜明けの泉〜
30/32

第二十八話 心に灯る願い

 明るくなり始めた空からは、かすかな光が差し込み星の泉を淡く照らしていた。静かに揺れる澄んだ水面が、煌めく星々を映して、静かに光を返していた。

 ルナリアはゆっくりと立ち上がると、そっと泉に足をつけた。まだ濡れたままだった白い衣が、泉の中で足に纏わりつく。

 ──瞬間、背後から水音がしたかと思うと、ルナリアは右手を掴まれた。


「──何をなさるおつもりですか?」


 低いサイードの声にルナリアが振り返ると、彼の虎眼石の瞳がルナリアを見つめていた。その瞳は揺れていて、握ったルナリアの手首を通じて、その震えが伝わってきた。


「サイード……」


 ルナリアは、一瞬だけサイードを見ると、すぐに目を伏せて黙り込んだ。

 答えないルナリアに、手首を握るサイードの手に力が籠る。


「……俺は、あなたの祈りの代償を知っている……この場所での祈りが――あなたの祈りが……どれほどの代償を求めるか、わかっているのですか?」


 絞り出すような、サイードの低い声が泉に響いた。


(……お母様もきっと、星への祈りで――いつも優しく微笑んでいたけれど、きっと、ずっと覚悟していたんだわ……)


 ルナリアは、答えることが出来なかった。顔を上げることもできないまま、ただ揺れる水面を見つめている。


「俺は、あなたを失うのが怖い……祈るのは、やめてください」


 懇願するようなサイードの声に、ルナリアはその目蓋をきつく閉じる。


「でも、わたしが祈らないと、この世界はいずれ──っ……!」


 言い終わる前に、ルナリアは後ろから抱き締められた。両肩を包むように回された褐色の両腕は、震えている。


「構わない……この世界がどうなろうと……俺はあなたを失いたくないんだ。俺は、最期まであなたの側を離れません、だからどうか……」


 サイードの震える声に、ルナリアの瑠璃色の瞳から涙が零れた。


(わたしも……あなたと一緒にいたい。でも、あなたを、皆を……守りたいの)


 アレクシスは、その様子を見ながら、泉のほとりで立ち尽くしていた。揺れる瞳で、サイードとルナリアを見つめている。


(姫様の祈りの代償は、姫様の命だったのか? 姫様は、命を賭けて祈りを捧げてこられたというのか……?)


「姫様……私は、命を懸けて姫様をお守りすると誓いました……それは、姫様も私も、生きてアリシオンに戻るということです」


 アレクシスの語りかけるような声が、静かに響いた。


「世界を救うために……姫様は、犠牲になるおつもりなのですか?……そんなの、悲しすぎます……」


 静かに響いたその声は、震えていた。

 淡い星々が瞬く中、優しい光が三人をそっと照らしている。


「サイード、離して……」


 そう言ったルナリアの声も、震えていた。


 包み込むように回された褐色の腕をそっと外すと、ルナリアはふたりを振り返る。

 その瑠璃の瞳は涙に濡れていて、けれど、その瞳の奥には、確かな意志の光が宿っていた──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ