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夜明けは星の泉で 〜アストレアの星蝕と祈りの巫女〜  作者: 星谷明里
第五章 祈り 〜夜明けの泉〜
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第二十七話 夜明け前の迷い

 ──空が、静かだった。

 星蝕の嵐が去ったあとの泉は、まるで何事もなかったように澄んでいて、かすかなさざ波の音だけが、世界の輪郭をなぞるように響いていた。


 ルナリアは、泉のほとりに静かに腰を下ろしていた。その隣には、サイードとアレクシスの姿がある。

 誰も、言葉を発さなかった。

 淡い光が、夜空の端に滲んでいる。もうすぐ、夜明けが来る。


(……お母様の祈りは、確かに星に届いていたのね……)


 そう、知ってしまった。

 でも、心の中にはまだ答えが出ないままの問いが残っていた。


(わたしは、何を選ぶべきなんだろう……)


 母の想いは、ただ優しく……自らの命を賭けて祈りを捧げたことも、また事実だった。

 王宮に星蝕が堕ちたあの日からずっと、ルナリアは誰かのために祈ることで、自分の存在価値を感じていた。

 でも──今は、違う。

 目の前にあるのは、サイードの真っ直ぐな視線。傷だらけの身体で、命を懸けてわたしを守り、ずっとそばにいてくれた人。

 隣に寄り添うのは、アレクシスの揺れる眼差し。騎士として、そして友人として、幼い頃から守り、寄り添い続けてくれた人。


(わたしも、まだ一緒にいたい……もう、使命だけで心を閉ざしたくない……)


 だけど──


(わたしは、唯一残された星の巫女……この世界を、この人たちを守れるのは――今はもう、わたししかいない……)


 ルナリアの瑠璃色の瞳が揺れる。


(わたしが祈らなければ、この世界はいずれ………)


 ルナリアは天を仰いだ。

 輝いていた星々は、静かにひとつ、またひとつとその姿を儚く消していく。

 ルナリアは、ゆっくりと立ち上がった。

 まだ答えは出ていない……けれど、ほんのわずかに、確かなものが芽吹きはじめている気がした。

 ──空は、ほんのりと明るんでいた。

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