SSSその1「私たちの愛の形」
大切な人の変化を受け入れることは難しい。と私は思う
彼氏が女性になった
この事実を受け入れることは容易ではなかった。私は悪夢に襲われたんじゃないかと思った。というか、そう信じたかった。でも
「…花名?」
聞き覚えのない女性の声で彼氏だったはずの女子高生が私の名を呼ぶ。その一言が、これは現実だと無情にも私に突きつけてくる。私はその場にうずくまった。信じたくない、愛していた人が、見慣れない姿で帰ってきたことを
事情を知らないわけではない。お母さんを失った妹のため、それくらい分かってる。そしてそれが家族想いのつかさ君だからこそできた行動であることも…でも、じゃあ私はこの思いをどこにぶつければいい?誰を責めればいいの?
「ひっ…ひ…」
私はうずくまったまま、耐えられなくなって泣き出した
「ごめん、花名」
「いやっ!離してっ!」
つかさ君が私を抱きしめる。私は彼から離れようとしたが、離れようとするたび力強く抱きしめられるので、離れられなかった
「…つかさ君」
自分でもよく分からない、でも、強く抱きしめられた時の暖かさと、安心感は、つかさ君そのもので、私は反射的に泣きながら抱きしめて返した
「ごめん、もうどこにも行かないよ」
つかさ君が優しく語りかける
「でも、女の子同士なんて」
「確かに変に思われることはあるだろうが、俺たちには俺たちの愛の形がある。そこには誰も干渉する権利はないと思うんだ」
「やっぱ、つかさ君だ」
私は泣きながら笑って見せた
「俺と一緒に来る?」
「うん、つかさ君と一緒にいたい」
愛する人がどんな姿に変わってしまっても、私は愛し続けたい。例え化け物に変わってしまったとしても
だから
私はつかさ君を愛し続ける。そう誓いながら、私たちは唇を交わした




