過去の清算
俺は虹咲さんを連れて花火大会への会場にやってきた
「うう、締まる…」
慣れない浴衣に戸惑う虹咲さん。ちなみにこの浴衣はお母さんが仕立てたものだ
「とりあえず俺、会う人がいるから、人多いけど好きに回ってていいよ」
「あ、うん。わかった」
「合流する時電話するから、じゃ」
「あ、優!」
俺が集合場所へ向かおうとすると、虹咲さんが俺を呼び止めた
「き、気をつけて!」
「ああ、ありがとう」
俺は笑顔でそう返した。さて、向かうとしますか。大衆を掻き分け、指定された場所へ向かう
するとそこには、懐かしいかつての恋人が、切ない表情で木の前に立っていた
「あ、優くーん!」
俺に気づいたあっちゃんは、こっちに向かって手を振る。どういうわけか、この時、怒りという感情が湧かなかった。むしろ、安心感を感じてしまっている
合流した俺たちは、会場内を歩き出した
「ごめんね、急に呼び出したりして」
申し訳なさそうに言う。あっちゃんってこんなに礼儀正しかったっけ
「いやいや、大丈夫だよ」
「…こうして二人で歩いてると、付き合ってた頃を思い出すよね」
「確かに…ちょっと懐かしいな」
「私がちょっとふざけて、優くんがツッコんでさ」
「あ〜なんかそんなこともあったようなないような」
あれ、俺楽しんでる?なんで
「…優くん、ごめんね」
「?」
「私、傷つけたよね。君のこと。でもさ、過ちはやり直せると思うんだ」
なんだ、突然何言って
「あっちゃん?」
「実はさ、私、別れたの。気が合わなくなっちゃって」
「…」
「だから、今私彼氏いなくて…だからさ、やり直そ?全部、ゼロから」
ふざけるな、あれだけのことしておいて…今更やり直したいなんて…言うんじゃねえよ…でも、なぜだろう。あっちゃんの願いを受け入れたい自分もいる。どうしてだろう?結月との友人関係がなくなりかけているから、復縁で心の穴を埋めたいと思っているのか?
…
もう、自分の気持ちがわからないや




