前に進むしかない
「そんなことが…」
「そ」
つかさ先輩がどこか寂しげな表情をしている
「すごいですね、兄妹のために自己犠牲ができるなんて」
「家族だからさ、それにうち、お父さんが単身赴任しちゃってるからお母さんがいなかったら私が二人を守ってあげるしかないんだよね」
壁に寄りかかり、床を見つめがら答える
「どんなに辛くても、死にたくてもさ、世界は変わらないし、どんどん先に進んでっちゃうのよね。だから、それに置いてかれて欲しくなかったんだ」
「兄妹たちにですか?」
「ああ。だから私が変わって、みんなで前に進めるなら、それが一番かなって」
「で、それをどうして俺なんかに…」
「話し相手が欲しかったんだ。ずっと、一人で抱えてきちゃったから」
先輩が少し涙目になる。そっか、この人はずっと一人であの二人を支えてきたんだ。そりゃ、辛いだろう
「なら結月に話せば良くないですか?なんで俺なんかに」
とはいえ、なぜ俺に話を聞いて欲しかったのだろう。それだけがただただ疑問である
「さあ、なんでだろうな。まあ、異性だからこそ話しやすいってのもあるのかもしれないな」
「とはいえ元は俺らお互い男ですけど」
俺は困った表情でそう返す
「あはは、面白いなお前」
つかさ先輩が俺のツッコミのような返答に笑った。いや、人類の全ての男が俺と同じツッコミするぞ。多分。けど、先輩の言う通りだ。俺も、少しずつ前に進んでいかないといけない。過去ばっかにとらわれないで
「ま、ありがとな。よし、みんなのとこに行くぞ」
そう言うとつかさ先輩が走り出す。俺は先輩の背中について行った。その背中は、なんというか、長男特有の逞しさがあった。正確には長女だが




