さんかくかんけい!?
なんとか布団から出ることのできた俺は、虹咲さんと結月と共に役所へと向かう。バスは子連れの親子でいっぱいだった
「ねえ優」
虹咲さんが俺の袖をつまみながら小声で話しかける
「どうした」
俺が訊ねると恥ずかしそうな表情になる
「この服、やっぱり落ち着かない」
そう、虹咲さんは出発する前に結月が持っていた水色の服に着替えさせられたのだ。側から見たら美少女が可愛い服を着ているだけに見えると思うが、当の本人は気に入ってないらしい。なんて贅沢な悩みだ
「春瑠ちゃん、だめだよ。せっかくのお出かけなんだから」
結月が割って会話に入ってくる
「で、でも」
「いい!?JKとしてお出かけできるのって今しかないんだよ?おしゃれして出かけなきゃ勿体無いよ」
だとしてもそれを虹咲さんに押し付けるのは違うと思うのだが、それを言ってしまったらなんとなく殺されそうな気がしたので黙って会話の動向を見守ることにした
「ああ、う...」
「もうちょっと女の子としての自覚持とうよ〜」
「う...」
結月の圧で虹咲さんが白目を向いてしまった。そしてタイミングよくバスが停留所に止まると、俺より少しだけ背の高いお姉さんが小学生の男の子と、一人で歩けるようになって間もないくらいっぽい幼女を引き連れて入ってきた。お母さんだろうか?それにしては若すぎる気がするが
「あれ結月じゃんやっほー」
「あ!つかさ先輩!!」
お姉さんがこちらの方を見て手を振り、結月が振り返す。ひょっとして知り合いなのか?
こっちに向かってくる
「よっ!もしかしてこの子が」
「そうです。優です」
あれ、しかも俺の事知ってんの。こわ
「えと...」
俺は困惑してこの人が誰か聞こうとするが上手く言葉が出なかった
「ああ、橋元つかさ先輩。中学の時からの知り合い。んでもって」
「私も性転換した人の一人だ」
「...」
得意げにそう言うつかさ先輩。俺は唖然とした。この人も...?まじかよ。一見するとただのツインテールで胸がちょっと大きくてメガネっ娘のお姉さん属性な先輩って感じなのに...
「あれあれ、お姉さんに見とれちゃったのかな?」
気がつくとつかさ先輩はかかんで俺に顔を近づけていた
「いや、ちがっ」
俺は思わず顔を真っ赤にした
「ふーん?」
何この人、怖い。仲良くなれなさそう
「ねーねーおねーちゃん」
つかさ先輩のスカートを小さい少女が掴む。可愛い。そういえばあっちゃんとかこういう小さい子好きだったよな
「どうしたの佳奈」
先輩が優しく問いかける。へぇ、佳奈ちゃんって言うんだ。可愛い名前だ
「このおにーさん、なんでおねえさんたちにはさまれてるの?」
ドキッ。なんか雲行きが怪しくなってきたぞ
「なんでだと思う?」
先輩が意味深な笑みを浮かべながら再び問う
「うーん。!わかった!さんかくかんけいだ!」
「いや違うよ!」
俺は真っ青になりながら否定した
「さいてー」
「違うんだって」
この子、見た目と名前に反して恐ろしい。というか、多分3歳くらいだよな。なんで三角関係なんて言葉知ってるんだ
「へぇ、優ってそういう趣味あったの」
え、なんか結月が怖い目でこっち見てくるんだけど
「だから違うから!違うから!」
「最低...だと思う」
虹咲さんが床を見ながら言う。いや君まで便乗したら終わりだよ。とにかく別の話題、別の話題を
「お姉ちゃんも佳奈も、やめてあげろよ。可哀想だろ」
置き去りにされていた少年がここでようやく口を開く
「冗談だよ〜ごめんて健」
「じょうだん!だだ!」
なるほど、この子は健くんというのか。名前を聞かずに知ることが出来た。とにかくこれで助かったぞ...
「もう優はノリ悪いんだから」
結月が肘でつついてくる
「やめろ、痛い」
「でも、嫌な思いにさせた。ごめん、優」
虹咲さんがしょんぼりしながら言う
「いや、虹咲さんは謝んなくていいよ。別に怒ってないし」
俺は落ち込む虹咲さんをフォローする
「随分と嫌そうだったのに春瑠ちゃんには優しいのね」
結月が怖い目でこっちを見つめてくる。あれ、まずくない?
「やっぱさんかくかんけいだー!」
結局、バスを降りるまで気が休まることはなかった




