プロローグ:平凡な日常の終わり
その日、僕はいつもと変わらない日常を送っていた。花芽三月、十七歳。ごく普通の高校二年生で、成績は中の上、部活動は帰宅部。特に突出した才能があるわけでもなく、ただ漠然と将来を考えている、どこにでもいる少年だった。放課後、コンビニで肉まんを買い、熱気を帯びたそれを頬張りながら自宅へ向かう。明日は土曜日。たまにはゲームでも一日中やって過ごすか、とそんな他愛もないことを考えていた。
しかし、その日は違った。突然、視界が真っ白な光に包まれた。
「うわっ!?」
思わず声が出る。だが、それは僕の声ではなく、どこか遠くで聞こえるような、不確かな響きだった。光は容赦なく全身を飲み込み、意識が急速に遠のいていく。まるで宇宙空間に放り出されたかのような浮遊感と、全身を駆け巡る激しい熱。そして、まるで頭の中に誰かが大量のデータを無理やり詰め込んでいるかのような、情報の奔流。
『現代医療知識、インストール完了』
『チートスキル:薬物生成、獲得』
『転生先座標、設定完了』
そんな、ゲームのシステムメッセージのような声が、意識の底で響いていた。なんだこれ、夢か? 壮大すぎる夢だ、と思いながら、僕は完全に意識を手放した。