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根回しはしっかりしなければいけません

 すかさずエリオットが連れていた1人の護衛騎士がエリオットの前に立つ。


「ま、待ってください。私たちは……!」


 近くのテーブルに置かれた、エリオットが持ってきたであろうカバンから見える薬瓶は底をついているのが見えて気づいた。


(助けに来たんだ……!)


 思いっきり裏声で、叫ぶ。


「私たちは『どんな国境でも越える医師団』です!病人ですね。すぐにお手伝いします!」


 エリオットはすぐに護衛騎士に、剣を降ろさせ、頭を下げた。


「協力を頼む!」

「~~~っ!お任せ下さい」


 元々変装してきた私は、シエルに止められて、指示と雑用しかこなすことができなかったけれど、偶然を装った医師団と協力し、エリオットは病人たちを看病してくれた。


 清潔感のあるシーツ、澄んだ空気、栄養のある食事、子どもや病人たちはみるみる元気になっていった。


 2~3日でひと段落したので、存在がバレる前に、シエルとこっそり帰ることに。


(悪役令嬢がこんなことやってるのバレたら、ルートがずれちゃうかもだしね)


「シエルは馬も乗れるのね」

「公爵家のメイドの嗜みです」


 小川で馬に水をやっているとき、息を切らしてエリオットが探しに来た。


「おーい!おーい…っ!もう行ってしまわれるのか?」


 さっさとフードを深くかぶり、シエルの後ろに隠れて、裏声で返事をする。


「え、ええ。次に助けを求める者を救いに行かなければなりませんので……」

「そうか……。ご協力、誠に感謝する。私たちだけでは救えなかったかもしれない」


 第二皇子の権力を使えば、医師団なんて自在に動かせたはず。できなかったのは恐らくアルバートが、直接医師団に出向を禁止させていたからだろう。


「大したことはしていません。それに……私はエリオット様の行動に、心動かされた者の1人ですから」

「えっ……?それはどういう……」


 ざぁっと風が吹き、フードが捲れそうになる。

 手早くフードを抑えて、隠すように馬へと乗せてくれるシエルの行きましょうという視線に、コクリと頷く。


「申し訳ございません。そろそろ行かなくては」


「せめて名前をーーー」


 エリオットが見てくれた。声をかけてくれた。それだけで幸せだ。


「きっと、また会えますわ」


 最後だけ裏声で話すのを忘れてしまった。

 だけど、風の音が大きかったから、エリオットには聞こえていないだろう。


……と、まあこんな感じで、たまにアルバートとミレイユの邪魔をして、暴走するアルバートとミレイユの尻拭いをさせられるエリオット様を陰から支え続けていた。


(1回目以外は、全部変装してたし、遠くから見てるだけだったから、 きっと気づいてないわね)


 悪役令嬢として動くと決めた時から、本当は、アルバートが起こす戦争も止めたかった。


(アルバートルートで、ミレイユを助けるシーンで必要なイベントなのはわかってる。でも、ここでは実際に人が死ぬのは、イヤだもの)


 だけど、アルバートとミレイユは本当に自分たちのことしか見えておらず、誘拐事件以降も、どれだけ根回ししても、アルバートは戦争を始めてしまった。


 結果的に帝国統一し、安定はしたものの、裏で平和を支えたのはエリオットだ。


(ミレイユ、全然聖女の仕事しねぇ……!ゲームでエリオット様がミレイユを振ったのって、性格についていけなかったからんじゃ……⁉)


 つまり……!


「エリオット様、働きすぎ!」


 という結論に至った。


 実際ミレイユの性格は、天然のいい子なのだけど、行き当たりばったりで、愛されて当たり前、優しくされて当たり前の世間知らずと言っていい程だ。


(このままだと、あのバカ夫妻に、エリオット様がさらに酷使される未来しかない!)


 だから、アルバートが王位を授かり、ミレイユとの結婚が決まるあの日に、エリオットに求婚した。


 そして、あれから数時間後、私は王宮の一室に案内されていた。


(ここはエリオット様の暮らすトパーズ宮よね……)


 きょろきょろと、ゲームで見た小物や装飾品を見つけては脳内で大声をあげ、興奮を落ち着かせる。


(ああ……うまくいってよかった。人生最大の賭けは、成功ね)


 国中の貴族が集まる王宮で、心の中は拒否されたらどうしようと、本当は震えていた。


(エリオットにいい条件って思ってもらえたならよかったぁー!)


 コンコンとノックが鳴る。


「はいっ」

「失礼、待たせてしまってすまない」

(エリオット様っっっっ!)


 こうして2人きりで言葉を交わすのは初めてで、胸が苦しくなる。


「お気になさらないでくださいませ。突然のことで、みなさまを驚かせてしまったのは私ですもの」


 エリオットから見えないところで、太ももを思いっきりつねり、公爵令嬢としての品性を保つ。


「いや、本来一旦持ち帰るはずの話を、あの場で即答してしまった父上たちがよくない」

「それは……結婚の話は、なし、ということでしょうか」


(ああ、やっぱり駄目だったんだ)


 かすかに息を飲み、声のトーンが低くなってしまう。

 エリオットはすぐに、レオナの変化に気づき、訂正しようと慌てて口を開いた。


「ちがう、誤解しないでくれ。私は結婚したいから……」





か、結婚したいって言いました?


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしかして、エリオットと相思相愛...?

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