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第二皇子エンドなのに幸せになりませんっ!

 転生前は、田舎から出てきた地味なOLだった。

 希望を抱いて上京したのに、毎日毎日誰かのストレス発散や尻拭いに使われて終わる。


 終電ギリギリに帰ってきて、実家から送られてきた野菜の入った段ボールに思いっきりつまずく。

 荒れた部屋の冷たい廊下の上に顔をぺしゃりと打ち付けて、気づいたんだ。


(最初からなにもないじゃない)


『田舎じゃ無理だよね』『ここじゃないどこかなら』と夢見て、何もしようとしなかったのは、他でもない私。


 過去の私が、今の私を生み出した。情けなさに涙が出た。

 泣いて体力を使い果たしたお知らせみたいに、お腹が鳴る。


(……なにか食べなきゃ、お腹が減ったら何もできないってお母さんによく言われたな)


 母が送ってくれた段ボールを開けると、旬の野菜とは別に小さな小包が入ってた。

 そのとき、妹からの『布教』として入っていたのが私が転生した乙女ゲームのアクリルスタンドだ。

 

 恋愛する暇もないし、イケメンとときめきをほんの少しでも摂取するのもいいかもしれない。

そんな思いで始めてみたゲームの中に、エリオットがいた。


 乙女ゲーム『薔薇の誓い~運命に抗う恋の行方~』は、聖女ミレイユとして、イケメンたちと恋をして世界の平和を守るために頑張るストーリー。


 魔界編、天界編、地上編……とある中で、私の推し、エリオットがいるのは地上編。

 第一皇子アルバートと第二皇子のエリオットのメインエピソードだ。


 アルバートは武力で敵国を倒す。そしてエリオットの2つのルートは、博識な知識で民を救う。聖女ミレイユと共にこの国に平和をもたらし、王座に就くまでがエンディング。


 エリオット様はいつも気高く優しい。ミレイユの力でフォローしきれない感染症さえも、独自に開発した薬で、民たちの病気を治し、自分には癒しの力が使えないミレイユの身体も気遣ってくれる。


 ミレイユが育った孤児院が戦火に巻き込まれ、跡形もなくなり、悲しんでいた数か月後。

 エリオットは、その土地を緑にした。


『めげずに種をまけば、必ず緑が芽吹く。君の居場所は、これからも僕が守るから』


 幼いころから実家の畑仕事を手伝ってきたから、植物を育てることの難しさと、厳しさは知っている。

だから、荒れ地の中でどれだけエリオットがミレイユのために手を尽くしたかを考えると、言葉が出なかった。


 どんな逆境でも諦めずに、前を向き再生しようとするエリオットの姿に、私の中で革命が起きた。


(私が諦めちゃだめだ。私の人生なんだから)


 それからは、エリオットのおかげで、つらい毎日も頑張ることができた。

 綺麗に部屋を整え、ベランダにはつぼみをつけ始めた小さな家庭菜園。実家の野菜で作ったご飯を食べながら、いつしか私は毎晩エリオットに会って、英気を養うようになっていた頃……。


「おかしい……。何回やってもエリオットが幸せにならない……?」


 なぜかどのルートでも、エリオットは王位をアルバートに譲ってしまう。


「君の幸せを願ってる。だから、兄さんと共に生きてほしい」


(ハッピーエンドが1つもないとかある⁉運営どうなってんの⁉エリオットを生み出してくれた感謝余って憎さ100倍……っ)


 そしてミレイユも、抵抗することなく、アルバートと生きる道をすんなり選び、強制アルバートエンドに持っていかれる始末。


(意味わからないのだが……⁉)


 戦いが弱いわけではなく、剣を持つことで相手を傷つけることをエリオットは好まない。

 武力も知力も、優しさも持ってる、王にふさわしい人物なのに……!


 あらゆる方面から地上編のルートをなんどもやりなおしたが、エリオットは絶対に幸せにならない。


 SNSでは、むしろこの引いて国の地盤を支えていくものとして生きていく様が、エリオットの尊すぎる神精神を描いてるのではと、激しい議論が交わされた。


(どうして幸せになれないの?こんなのおかしいよーー。エリオットは私の人生を明るく導いてくれたのに……幸せにならなきゃ、私が許さないんだからーー!)


 ぺしゃんこ布団で泣きながら眠りについた、翌朝。


 転生前の1Kの部屋が一体どのくらい入るだろうと、思うくらい高い天井に広い室内。

 赤と金を基調としたインテリア、天蓋付きのベッドの中に私はいた。


「前半を読みやすく修正しました!

転生前の部分をサクっと短縮し、推しの第二皇子を救う本編にすぐ入ります!

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