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エリオット様の為ならどんな条件でも受け入れましょう

「レオナッッ!どういうことだ!」


 レオナが自室で書類を片づけてると、怒号と共に、扉が勢いよく開く。

 慣れた日常にレオナとシエルが顔をあげると、そこにはレオナの父、ドイルドがいた。


「あらお父様」


 ごきげんようと軽く挨拶するレオナとは、正反対に父は震えていた。

 レオナが仕事をしているデスクまで近づき、手をテーブルにダンっと乗せる。


「聞いてないぞ……っ!」

「なにがですの?」

「1年って言ったじゃないかっ……。それなのにもう結婚するなんてぇ―――!」


 涙を流す父に、力いっぱい抱きしめられるレオナ。


(あ……説明するの忘れてた)


 シエルに入れてもらったお茶を飲みながら、レオナは父を宥めながら言った。


「婚約してるのですから、いつ結婚してもおかしくないでしょう?」

「それはわかってるが……」


 涙をうぐうぐとぬぐいながら、父はレオナを見て、また目を潤ませる。


「ちなみにもうエリオット様にはお話を通してありますわ」

「え?」


 しおしおとお茶を飲もうとしていた父が、跳ねるようにコップから顔をあげた。


「国王陛下から、結婚と共に新しい爵位をいただきましたの。これからはレオナ・ルクストレーヴ伯爵夫人にになります」


 レオナが持つ書類には、国王陛下、そしてエリオットのサインが書かれ、王の印章がきっちりと押されていた。


「お父様がこちらの書類にサインしていただければ、私側の手続きは終了です」


 レオナの合図とともにシエルがすっと、父にペンを差し出した。


「早すぎないか⁉」

「とんでもない!これでも遅いくらいです」


 あれから1週間……。この根回しがどれほど大変だったか。



 1年後にもしかして、結婚できない位の状況になってるかもと危惧した私は、国王陛下とエリオットに直談判した。


「皇族としての立場では動ける範囲が限られていますが、伯爵として独立すれば、より実務的な活動が可能になります!」


 レオナがあらかじめ配っていた資料を手に持ち、国王陛下と皇后はレオナのプレゼンを興味深く聞いてくれている。


「だが、皇族の影響力を捨てるのは……」

「さすが国王陛下。エリオット様を思う気持ち、痛いほどわかります…!」


 盛大に手を伸ばし、陛下に感嘆の息をつくレオナ。


「確かに皇族としての負担はありますが、それが実際足かせになる場面も多いです。貴族としての立場であれば、より自由に動け、結果的に王家の負担も軽いでしょう」


 税的な意味でも、しっかり王家が伯爵家から徴収できるし、支援を得る時も経費として落としやすいと力説すると、陛下もなるほどと納得する。


「王族として庇護を受ける身ではなく、一貴族として独立することで、公爵家と王家の両方の繋がり強化できると考えています」


「ふむ……」


 帝国統一前ならば、他国へ婿入りすることも考えられた。だけど今となっては、領地は増えに増えた状態だ。一刻も早く安定させるためには、強い力を持つ家門がもっと必要なのだ。


 つまりこれは、エリオット様を国務からも切り離せて、好きな仕事だけに熱中でき、国力をあげて、税金も徴収できる、一石四鳥の話!


(初めてアルバートとミレイユに感謝したわ……!)


 一番の懸念は、エリオットが皇族の立場を捨ててくれるか……ということだったが、なぜか快く快諾してくれたのだ。

 心配でエリオットの方を見ると、エリオットはこの前と変わらない優しい笑顔を見せた。


「私も賛成です。任命された領地をうまく運営できれば、他領地の参考になりますし、元皇族の後ろ盾があれば、各地に派遣もしやすいでしょう。それに……」


 エリオットが立ち上がり、ははははと完璧な笑顔を浮かべ、レオナの隣に並んでみせる。


「レオナ嬢からの申し出を、断るわけにはいきませんから」


(ん??公爵家の私より皇族の意見が優先だけど……)


 と疑問に思ったが、まだ体調が戻ってないように見えたし、きっと自分を理由には言いにくかったのだろう……。かわいそうに。



(ブラック企業で自分から『辞めます』ってなかなか言えないのと同じよね……)


 そんな出来事を遠い目で思い出していたレオナは、父の声で現実に戻ってくる。


「わかった、サインする……」

「ありがとうございます」


 これで後は、引っ越しに、人事異動に、諸々の手続きを済ませてと……。

 これからのことを考えながら、父がサインしてくれた書類に手を伸ばす。


 が、父は書類から手を離してくれない。


「お父様?」

「ただし、条件がある!」


 どんな条件を吹っ掛けられるのだろうかと、レオナは身構える。


(いくらお父様と言っても、そこまで甘くは、なかったか)


 アストレア家の事業を引っ掻き回したあげく、シエルをはじめとする優秀な人材を引き連れて家を出ると言ってるのだ。しかも、共同事業という形で、利益は分散するが、実績はこちらがもらう前提なのだから……。


(利益率?いえ、投資額が減らされるかしら……ううん、それとも……)


 いいとこどりの泥棒娘と、縁を切られるかもしれない。もちろん、公爵家の立場があるから、皇族とのメンツは保ちつつ……にはなるだろうけど、そこで私が家族の愛は求めるのは欲張りというものだ。


 ほんの少しの間だったけど、レオナとして両親と過ごした時間を思い出す。

 どれも暖かい思い出ばかり。


 だけどーー。


(エリオット様を早く、アルバート達から逃がせるなら、それでいい)


 レオナは覚悟を決める。


「わかりました。どんな条件でも受け入れましょう……!」


 2週間後、新しく伯爵領としてルクストレーヴが設立された。

 アストレア家公爵家の3つほど隣にあり、広大な大地と緑が広がっているという。


 伯爵家の屋敷は、アストレア家公爵家の全勢力を持って、新しい伯爵夫妻にふさわしい、白と緑、ゴールドを基調とした装飾で彩られていた。


 そして今、着飾った紳士令嬢たちが、今か今かと新郎新婦の登場を心待ちにしている。


 屋敷の奥、鏡の前で、純白のドレスを着て振り向くレオナ。

 金色の糸で、胸元には、銀と緑の宝石が綺麗にちりばめられてる。

 

 この結婚式を開くため、全力で奔走した立役者、レオナの父が一筋の涙を流した。


 「とても綺麗だ……!」


お父様、大暴走です!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

1年どころか1ヶ月で結婚できることになりました…!

次回、結婚式は波乱万丈な予感がします……。

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