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お家に帰るまでがデートです!

 (チャンス……?)


「エリオット…様?」

「レオナ嬢」


 レオナをじっと見る、潤んだ瞳が近づいてくるーー。

 その時、シュパンッと光の速さで、レオナはエリオットのおでこに手を当てた。


「熱ありますね」

「はい?」


 次にシュビンっと、手首に指を滑らせて脈拍を確認する。


「脈拍も早い……!大変!やっぱり体調を崩されてます!」

「ええっとレオナ嬢……?」


「シエル!」

「はい。レオナ様」


 控えていたシエルを呼ぶと、エリオットの侍従マテオールもやってくる。


「エリオット様はお熱があるようなので、すぐに帰りましょう。急いで馬車の通れる道まで……!」


 頷いて返事をするシエルがすぐに濡らしたハンカチを持ってきてくれる。


「エリオット様、大丈夫ですか?帰られたらすぐにお休みになってくださいね」


 おでこに当てようとすると、エリオットは激しくせき込む。

 大変……!どうやら喉にも来ているようだ。


「私はその、大丈夫だから……」

「いいえ!よくありません!喉にも症状が出てるではありませんか!」


 最高級のレモンとはちみつを王宮に送らなければ……っ!


 全速力でエリオット様の手を引いて、大通りにでる。

 待機していた馬車にエリオットを押し込むと、くるりとドレスを翻し、ピシィっと、会釈した。


「申し訳ございませんが、私はこれで失礼いたします!一刻も早く王宮へお戻りください」

「ちょっ……レオナじょ……」

「では!」


 優しいエリオットは、もう少し話を……!という様子で、手を伸ばしたが、もうすでにレオナには届かない。


(名残惜しいけど、ごめんなさい。エリオット様に無理をさせたくないんです……!)


 そのまま、シエルに待機させておいた馬車に乗り込んだ。


「シエル。すぐにホテルで使っている最高級のはちみつとレモンを手配して頂戴!」

「かしこまりました」


 シエルが早馬を飛ばさせる間、見せないようにしていた暗い気持ちを吐き出した。


「私としたことがエリオット様に無茶をさせてしまうなんて……。昨日までずっと忙しかったのに、無理して時間を空けさせてしまったんだわ……」


 城に戻ったら休むどころか、すぐに仕事に手を付け始めるかもしれない。


「ああっ!なんで婚約期間1年なんて言っちゃったのかしら……!今すぐにでも結婚して、エリオット様が仕事しないよう監視したい……!」


 悔しがるレオナを淡々と見て「いつも通りだなぁ」とシエルは思った。


「レオナ様、お出かけ楽しかったですか?」

「えっ?まあそれは……」


 シエルに聞かれて、抱えていた頭から手を離し、顔を上げる。


「先ほどはとてもいい雰囲気でしたが、もしかして愛の告白でも……」


 シレっと爆弾発言をするシエルは、レオナが顔を真っ赤にさせると思ったが、レオナは、はぁ?と最大限に眉を寄せてきた。


「そんなことあるわけないでしょう」


 スパンっと竹を割ったような言い方にシエルはさすがに疑問を抱く。


「婚約が決まり、即デート……となれば、それなりに好意を抱いてくださってるのでは?先ほどもミレイユ様よりもレオナ様を優先しておられましたし」


「それはミレイユがぽんこつだからでしょ。エリオット様は仕事抱えがちの社畜なんだから、仕事ができそうな人を優先したいに決まってるわ」


 シエルったら何を当たり前のことを。


「そうでしょうか?でも昨日の今日であの変わりようは……」


「だからそこはエリオット様も気づいたのよ……!ミレイユの責任はアルバートに取らせるべきだって!」


 レオナはきらんっと目を輝かせた。


「さっき言ってたでしょう?これからは外注!夫であるアルバートに仕事を振ると!」

「そうですねぇ」と、どこか残念そうにシエルが相槌を打つ。


「ああっこれから、あの二人がどんどん苦労していくと思うと見ものだわぁ……っ。もちろん、エリオット様が心を痛めないようにしていかないといけないのだけれど……っ」


(それにしても、1年か……。長いなぁ)


 エリオット様は頑張ると言ってくれたけど、もし1年後にアルバートとミレイユが、抱えきれないほどのミスを負債として積み上げていたら、結婚すらなくなるかもしれない。


(そうなればエリオット様は一生社畜……?)


 ありえそうな未来にぞっと背筋が寒くなる。

 なんとかしなければーー。エリオット様の想いも成し遂げられて、なおかつアルバート達から逃げられる最適なプラン……。


 公爵家の門に馬車が入っていく。小さなころからずっと、転生前レオナが暮らしていたこのお屋敷には、レオナの過去が詰まっている。


(これからは私の思い出が積み上げられていく……)


 ぼんやりそう考えて、閃いた。


「シエル。私決めたわ」

「なんでしょうか」


 日が暮れ始め、馬車の中に赤い夕陽が差し込み、レオナを照らした。


「アストレア公爵家を捨てる」


チャンスを...!チャンスを逃してる!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

公爵家を捨てるとは?どういうことなんでしょう?

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