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仕事はこれからどんどん外注いたしましょう!

「エリオット……!?本当に婚約したのですか……?」


「昨夜、ミレイユ様の目の前で、婚約成立したではありませんか?」


「……ッ!」


 硬直するミレイユをスルーして、侍女に店の前にいる騎士たちを連れてきてもらうようにエリオットは頼む。


「ミレイユ様。マテオールに改めて家庭教師を用意させます。皇室に入るのですから、一から勉強も必要ですしね」

「あ……だから、エリオットも……?」


 エリオットにかわされるとは思ってなかったのだろう。本当に断るの……?と聞きたそうな声だった。


「どうしてもわからないなら、兄上に聞いてください。では」


 これまで見たことないくらい、完璧な笑顔を貼り付けてるのに、声だけはあっさりしてる。


 私はエリオットに連れられて、そのままレストランを後にした。


 レストランから出て、十数分。

エリオットと並んで歩いていた。


 シエルやマテオールは、騎士たちと一緒に後ろから護衛しながら、着いてきてくれてるのだけど……!


(どうしようどうしよう…………!手が!!)


 手がずっと繋がれている!

 さりげなく段差で手を出されてから、そのまま「少し歩こうか」と言われて、ずーーっと!



「あ、あのエリオット様?」

「なんでしょう?」


 振り返るエリオットの眩しすぎる、笑顔が目に収めきれない……!

 でもどこか、さっきまでは見えなかった疲れが見えた。


「ミレイユ様のこと、気になりますか?」


 ピタッとエリオットが立ち止まる。

 世間知らずのミレイユをずっと陰で支えていたのはエリオットだ。


(まあ周りに迷惑をかけないようにと、尻拭いだけど……)


 エリオットがいつもそうやって仕事を増やしてしまうことを知っていたから、私が率先してミレイユを制したわけなのだけども……。


(正直、最終的にエリオットさまが、仕事積んじゃうと思ってたのよね……!)


 責任感の強い人だから。でも、なんでも背負い込みすぎるのよ。


「エリオット様!ミレイユ様の皇太子妃指導!外注されるのはとてもいい案ですわ!」

「!」


 責任放棄……なんて思わせないために!きっぱり褒めることにする。


「もともと第二皇子なのです。聖女のサポートはしても、皇太子妃となるミレイユ様の教育を、エリオット様が監督する必要は一切ございません!」


 だけど、エリオットの気持ちをないがしろにもしたくない。


「もちろん、ご厚意なのはわかりますけれども……。でもアルバート殿下が今後は面倒を見るべきなのです!」


「レ、レオナ嬢……」


(そうだ。そもそもそうなのよ!)


 加勢してくる心の声に、自分の声が同調して止まらない。


「だってミレイユ様の夫は、アルバート殿下ですもの!」


 言い切ったあと、束の間の沈黙が流れる。


(も、もしかして……ひかれたっ……⁉)


『君は自分の利益しか考えてないんだな……』とか言われるかも……っ!


 繋いでもらってる手に力が入らない。


「あっははははっ!」

(あっははははっ?)


 嘘でしょ。エリオット様がーー爆笑している。


「そうですね。その通りです。今後は私が間に入るのも、よくないでしょうし」

「そ、そうです!」


 なんだかわからないが、エリオット様が明るい方向に向かっていると察知する。


「もっともっと仕事を減らしていきましょう!アルバート殿下とミレイユ様には極力関わらなっ…いえ、仕事をどんどんふっていかなければ!」


 エリオットがクスクスと笑う。


「ああ。すぐにはできないかもしれないが、善処する」


 善処。すごい、すごい進歩だ。


「ありがとう……ございます……っ」


 まだ、何も変わってない。何も進んでない。


 だけどーー。


(少しずつ、幸せになろうとしてくれたら。それだけで)


 胸が温かくなると、自然と微笑んでいた。

 エリオットは、少し咳払いして、私の手をきゅっと握りなおして歩き続ける。


「もう少しだけ付き合ってくれるかな」


 馬車では入り込めない細道を抜けると、高台にある広場に出た。


「うわぁ……っ。素敵ですね」

「気に入ってくれてよかった」


 町全体が見渡せる高さだ。さっきレストランで出会った子どもたちのエリード孤児院もよく見えた。


(エリオット様と食事できて、こんな景色も見れるなんて、生きててよかった……!)


「本当にデートみたい」


 感動しすぎて、ぽろっと口から出た言葉に、エリオットが気づく。


「本当にって、私はずっとデートのつもりなのですが?」

「えぇ⁉」


 ひょいっと顔を近づけてくるエリオット。なんだその尖らせた口は!


「さっきも仰ってましたよね。『私とのデートなんて嘘つかなくていいくらい』と」

「だ、だって今日は視察なのでしょう!?」


 エリオットの顔が少し迫ってくるので、後ろに少しだけ後ずさりする。


「ちがいます。レオナ嬢と話をしたかっただけです。でも結局、つい仕事の話をしてしまって……誤解されても仕方ありませんね」


 休むことに慣れてないことが垣間見えて、胸が切ない。


「昨日から気になってたのです。私たちはビジネスパートナーでなければいけないのでしょうか?」

「はい?」


(え?それってどういう意味?)


 そう言えば昨日、『雇う』とか『将来仕える』とか、そういうこと散々言ったようなーー。


「資料を拝見して、レオナ嬢が王室の力を最大限に利用したいことは十分に分かりました。もちろん、民とこの国の繁栄を願う善意からだと重々理解しています」


 朝から徹夜で作った資料見せたもんね。根回しだって昨日の夜からシエルに頼んでいた。


「この国をよくしたい。その気持ちは私も同じです。だから、力を貸していただけることを、本当に嬉しく思っています」


 なぜだろう。エリオットの顔が少しだけ赤い気がする。まだ夕日が出る時間じゃないのに。


「婚約期間の1年で、仕事の基盤はきっと固めます。だから、私にチャンスを下さい」


これってまるで....?


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

次回、エリオットとレオナの距離が近づいて...?

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