悪役令嬢がですが、心から祝福します
「次期国王は、聖女ミレイユと力を合わせ、帝国統一を果たした第一皇子アルバート・ルクセリオンとする!」
「帝国の太陽と月に祝福を!」
王宮の舞踏会、紳士や令嬢たちの盛大な拍手で祝福される2人の男女。
誰もが認める癒しの聖女ミレイユと、帝国となったルクセリオン一の騎士、第一皇子のアルバート。
戦争で近隣諸国を統一したアルバートが未来の国王陛下に、治癒の力で癒し続けたミレイユが未来の皇后に決定した。
「アルバート様......!おめでとうございます」
「ミレイユ。君がいてくれたからだ」
「ただ奇跡を祈っていただけですわーー。この国とアルバート様のために」
「ええ、本当にそれだけしかしてませんわね」
喜びの目で見つめ合う2人の間に、レオナは扇をずいっと割り込ませる。
淡いプラチナホワイトの髪と水色の瞳を持つ。レオナ・アストレアは、これまでアルバートとミレイユの邪魔をしてきた、まさに悪役令嬢そのものだった。
「レオナ嬢...…!また君か!」
「このような場でまでっ。どうかお気をお鎮めに!」
アルバートが怒り、ミレイユが宥めようとして、宮殿中が注目する中、レオナはまっすぐ国王陛下の前に進む。
「国王陛下、発言をお許しください」
「君が入る隙など、私の心のどこにも―――」
アルバートがレオナを止めようと、腕に手を伸ばす。
ところがレオナは、「王になるものが下々の話を聞かないのはよくありませんね?」と、小さく呟き華麗にアルバートの手をかわす。
そして次の瞬間、国王陛下と隣にいる第二皇子エリオットに向かって、レオナはずっとためていた言葉を投げかけた。
「私をエリオット様の妻にしてくださいませ」
「「「!?」」」
逆プロポーズとも言える発言に、一番驚いてるのは誰でもないエリオットだった。
エリオットよりも早く、アルバートがレオナに指をさして発狂する。
「いっいきなり何を言ってるんだ!?エリオットと結婚なんて私が許すわけがないだろう!?」
「私は国王陛下に聞いております」
ツンっと返すレオナに、アルバートはよりイライラを募らせる。
「私は認めないぞ……!そなたの悪しき心はミレイユの力を持っても浄化できん!」
「では申し上げますが……。ミレイユ様は本当に聖女としての務めを果たしましたか?」
突然矛先が自分に変わり、ミレイユはたじろいだ。
「どういう意味でしょうか……」
「そのままの意味ですわ。 騎士団長として、数々の勝ち星を挙げていくアルバート殿下を癒しの力で支えられたのでしょうが……他の兵士たちはいったい誰が治療なさったのかしらね?」
上品にミレイユに笑顔を向けるレオナの隣で、エリオットは、どうして、と息を呑んだ。
(私は全部、知っておりますわ)
小さな微笑みを見えないように扇で隠し、国王陛下に向き直る。
「陛下、いかがでしょうか。エリオット様は、かねてから帝国の森林問題と自給自足率の向上に取り組まれ、近頃は希少な薬草を用いた研究も進めておりますでしょう?」
見る限り国王陛下、皇后、側近の反応は、悪くない。
大きく反論してるのは、アルバートだけ。
「広大な土地と豊かな緑を持つ我がアストレア公爵家が、今後エリオットさまの研究をすべてバックアップいたします!」
好条件なのは誰にでもわかる。
だって、私は勝てる勝負を準備してきたのだから。
「だから!そのような妄言通るはずがっ」
「お待ちなさい、アルバート!」
ありえない!と声を上げたアルバートを皇后がぴしりとはたきとめると、国王陛下と側近で円陣になって話し始めた。
「なんてことでしょう……アストレア公爵家と良縁を結べるのなら、断る理由などありませんわ」
「エリオット殿下の研究が実を結べば、国としても……」
「レオナ嬢ならばエリオットの足りない部分を補ってくれるのでは?」
「母上⁉父上⁉」
「国王陛下様……!」
国王陛下夫妻と側近たちのひそひそ話を、ミレイユはおろおろ困惑し、アルバートは猛反対して止めているが、聞いてもらえる気配もない。
陛下と皇后は、コクリと頷き合い、手を挙げてざわつく王宮を鎮めた。
「レオナ・アストレア嬢。エリオットの妻となり、この国を繁栄することを誓うか?」
「はい。必ず!エリオット様と共に、この国をより豊かにすることを誓います!」
いきいきと返事をする。満足そうな陛下たち。
「そうかそうか。エリオットをよろしく頼む」
「なんてことを……」と消え入りそうなアルバートを支えるミレイユたちを素通りし、
驚きと困惑でどう反応していいかわからなさそうなエリオットに手を差し伸べる。
「レオナ嬢……どうして……?」
笑顔で一歩一歩彼に近づいていく。
「ようやくあなたの隣にこれた」
ぼそっと呟いた小さな小さな声が聞こえたのだろうか。
エリオットの目は、驚きに満ちている。
「私と結婚しましょう!エリオット様」
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