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かませ犬魔法士の学園狂騒  作者: どうしようもない新人
1/1

助けました!!

プロローグ、

 「やっちまったっ」

  

 ウェインはそんな事を言いながらヨレヨレのシャツに着替え身支度を急いで終わらせ学生寮の自室を飛び出した。


 「やばい殺される!!」

 あまりにも物騒な言葉が彼の口から飛び出した。

 自分の腕時計を確認すると遅刻まであと20分しかないことが分かってしまった。

 

 そもそもなぜ遅刻くらいで殺されるなんて言葉が出てきたのか?

 

 それは彼の度重なる寝坊癖のせいである、ウェインには少々朝が弱いところがあるのだが、それに業を煮やした担任が「次遅刻したら殺す」と脅してきたため今現在本気で走っているのである。


 そもそも教師が生徒に向かって殺すなんて言っていいのかよ。


 などと自分の行いを棚に上げる言い分を心の中で言っているが、そんな毒を吐いたところで今直面している問題が解決できるわけではないので、とりあえず走ることにした。


 がむしゃらに走りいつもの公園についた、まだ早朝だから子供たちの姿もなく静寂に包まれている。そんな公園どこか寂しそうに見えた。

 しかし今は、そんな事どうでもいい。

 この公園は自分の中で目印にしているポイントなのである。学生寮から学園までの道のほぼ中間位置にあるためここまでにかかったタイムがこの遅刻レースの大きなターニングポイントになるのだ。

 ウェインは自分の時計を確認すると10分立っているのが確認できた。

  

 10分であと半分なら理論的には学園に間に合うそう思っていたがダッシュによる体力の消耗が激しくとても間に合う気がしない。


 

「もうやるしかないよな。学園の外では使用が禁止されてるけどばれなきゃいいよね。」

 

 彼の口ぶりからこの絶体絶命のピンチを切り抜ける名案があるように見て取れるのはなぜなのか。その答えはすぐに分かった。

 

 周りを見て誰もいないことを確認し、次の瞬間彼の体の周りに光り輝く小さな粒がたくさん現れそれが彼の体を包むように纏った。

 

身体附加フィジカルエンチャントくらいは学園の外でも使えるようにしてほしいよな。」

 

 これが彼の奥の手だ。

 

 そう彼はただの学生ではなく、ニックスレイン魔法学園で魔法について学ぶ魔法士なのでる。(厳密にいうと魔法士候補生なのだが)しかし、学園外での私的な魔法使用は許されてはいない。

 

 (身体附加とはマナにより己の身体能力を向上させる魔法であり魔法士なら誰もが使うことのできるランク五等級の初歩魔法である。)

 

 身体附加を使っているため先ほどよりも速く走れている。

 なぜ最初から使わなかったのかというと学園に禁止されているためではなく、最初の半分のエリアは商業エリアが多く人の目につきやすいため使用しなかった。しかし残り半分の学園までの道のりは人目につかない道が多いため使用したのだ。

そのため、学園に近づいたら一度フィジカルエンチャントを解除しなければならない。


 公園からかなり走った。


 腕時計を確認したら安全圏内の時間だったので、そろそろいいかと思い身体附加を解除しようとした時、後ろで何か言い争っている声が聞こえた…。

 

 振り返ると女の子が二人組の男に絡まれているのが見えた。

 明らかに嫌がっている女の子を誘っているナンパに見える。さらには絡まれている女の子が着ている服装が自らが通うニックスレイン魔法学園の制服なのである。

 

 

「まぁ誰か助けるだろ」

 ウェインはぽつりとそうつぶやく。

 彼にも助けたい気持ちは当然あるのだが、今は都合が悪い。

安全圏内ではあるとはいえ、ここで時間をつぶせば遅刻する確率が一気に跳ね上がる。

それに見たところうちの生徒ならば、そこら辺のゴロツキには負けないと思い何かここを去る言い訳はないかなど考え始めた。



「それにもしかしたらあの三人は兄弟で喧嘩しているのかもしれないしな。うん、そうに違いない。」

 

 いかにもわざとらしく言い自分に納得させようとしているアホな男子学生の姿がそこには存在した。

 都合の良い解釈をしてその場を後にしようとしたが、やはり自分のわずかに灯されている良心のコンパスに導かれるように彼女たちの方に足が進んでいく。


「神様どうかあの三人が仲の良い御兄弟でありますように、そして僕が学園に間に合いますように」

 などと、そんなわずかな望みにかけているあたり本人の中である程度の想像は出来ているのであろう。





「私には学校があると言っているだろ」

 通れば誰もが振り向きそうなほどの美少女が明らかに不機嫌そうな言葉で相手に威嚇している。一切おびえた様子などなく男ら二人をにらんでいるが、絡んでいる男らもそんな事お構いなしに彼女に詰め寄っていく。


「いいじゃねぇーか1日くらい休んだって」

「せっかく兄貴が誘ってやってるんだから大人しく着いてきなよ」

 もう一人の男が兄貴と呼んでいるあたりこの二人には主従関係があるのだろう確かに兄貴と呼ばれている男の方が大きく見えるがそんな事今の彼女からしたらどうでもいいことだ。


「いい加減にしろ!!」


「怒った顔もマジかわいいわ」

「マジでそうすっね」

 

 卑しい笑みを浮かべながらそう言ってくるこの二人に我慢するの彼女にはは難しく見える。まず格好からして気に食わなかった、指にはでかい宝石が装飾された指輪をはめ首元には肩が凝りそうなほどにネックレスをつけている。

 こんな格好の男にホイホイついていきそうな安い女に見えるのだろうか、と考えますますこの二人への怒りが増していく。


「いやマジで悪いようにはしないって」

 そういいながら大きい方の男が彼女の肩に手をかけてきた。

ブチっという音が聞こえたのではと錯覚してまう。とうとう限界が来たらしい…。


「貴様ら殺す!!」

 触られた瞬間彼女の怒りのトリガーがひかれ、彼女の周りに急に陽炎が見えるようになった。怒りによる錯覚かと思ったが、そうではない実際彼女の右腕には大きな火球が出来上がっている。

 

 彼女もウェインと同じ制服を着ていることから想像できる通り魔法士である。しかし、ただの魔法士ではなく学園では【爆炎姫】ミランの異名で恐れられている学園最強の魔法士なのである。

 そんな彼女の魔法が一般人に行使されてしまってはただのやけど程度ではすまない、いつもの冷静な彼女ならそれくらい、考えずとも分かる事だがいかんせん彼らへの怒りで冷静さを欠いているのだ。

 今にも彼女の手から飛び出したがっている火球。しかし、その火球が放たれる事は無かった。


「はーい、そこまで」


「……」


 外から聞こえてきた気の抜けた声。これにより彼らへの攻撃は防がれたのである。

 一瞬沈黙の時間が流れる。攻撃の邪魔をされたミランはふと我に返り声のした方に視線を向ける。そこには、黒髪に寝癖が残るウェイン少年の姿があった。

 




 少々時を遡る。ウェインは彼らが彼女に絡んでいるのを近くにある、ケーキショップの看板に隠れながら見守っていた。もちろん彼女が一人で解決するのを信じながら。

 少し観察して分かった事だが、どうやらこの三人は兄弟ではないらしい。少し大きめの男に向かって兄貴と呼んでいたように聞こえたのだが、どうやら兄貴分的な意味で使われている。


「はぁーやっぱり彼女を助けなくちゃダメなのかな?」

「てか、助けなくちゃいけないのはあいつらの方じゃないか?」


 などと一人で自問自答している。学校に間に合う事は無いと半分諦めているため返って落ち着いて見えた。そんな落ち着いた頭で彼らのやり取りを見ていたためか、彼らの不自然な点に気づいた。

 

「そもそも、あの男ら二人組はなぜうちの学園の女子をナンパしているのだろう?」


 これが疑問なのである。確かに彼女は可愛い、しかしニックスレイン魔法学園の制服を着ている。それはつまり魔法士であることの証明にもなる。                 

 見たところあいつらはただの一般人にしか見えない、自分たちとの戦力差は分りそうなものだがそれほど馬鹿なのだろうか。それに先ほどから彼女をわざと怒らせているように見える。

 

そんな事を考えながら事の成り行きを見守っていたら彼女が魔法を使おうとしたためウェインは止めに入ったのである。





「貴様何者だ」

 彼女ミランから発せられた第一声は強烈なものだった。

言葉に怒気が込められている、攻撃の邪魔をされたためだろう。


「名乗るほどの者じゃない」

 

 決め顔で格好つけてみた。

 どんな反応だろうかと彼女の方を見たが全くはまっていないのが彼女の表情から読み取れた。

なんなら不機嫌度が増しているように見える。

 

「貴様もこいつらと一緒に黒焦げになりたいのか!?」

 そう言いながら彼女の右腕には先ほどと同じく火球が生成されていく。


「いやいや、なんでそうなる」

 ウェインは軽い感じで返すがどうもそれがまたミランにとっては気に食わないらしい。

「私に向かってふざけた挨拶をしたのだ、万死に値する」

 全く持って死に値するような行動をしていないのだが、このままだと本当に自分が焼かれかねないと思い、頭をフル回転させる。

 そんなウェインの頭がはじき出した答えは笑いであった。この状況で相手に笑ってもらえるネタは下ネタしかないそう思い彼は覚悟を持って言い放った。

 

「全く気の短い女だなもしかして生理か?」

 ミランは自分が何を言われているのか一瞬分からなかった。 

 頭の中で今言われた言葉を反芻したその結果どうやら自分の聞き間違いではないと判断し、気づいたらウェインの胸ぐらをつかみ上げていた。顔を赤く染めながら。

 


 

 そんなウェインとミランのやり取りが続いている中、ナンパの邪魔をされた男たちはウェインの方を少し殺気がこもった視線で見ているのであった。これが横恋慕による嫉妬からきているものなのかは定かではない。


 一連のやり取りの発端になった少女ミランの方はというとウェインへの怒りが男ら二人への怒りを超えたらしい。何なら男ら二人の存在を忘れているようにすら見える。

 

 



「任務の方は遂行できそうにありませんぜ兄貴」

「そのようだな」

 などと小声で話している男ら二人、任務が何なのか気になるところではあるが、どうやらウェインが来たことにより彼ら本来の目的は失敗したらしい。

 

 失敗した男たちが次にすることがこの場からの速やかな離脱である。

 二人はウェインとミランの方を見る。どうやら彼女の方は自分らの存在を完全に忘れているように見えた。ならばもう一方の少年の方を振り返るとミランに胸ぐらをつかまれすぐには身動きできないのが確認できた。


 そこからの行動は迅速であった、お互い目くばせで合図を送り同時にダッシュでその場を離れる。


「放せあいつら二人が逃げちまうぞ」

 

 ウェインが唐突にはなった言葉その意味が全く分からない。しかし、目の前の少年が必死に自分の後ろ側に指をさしているので何かと思い、後ろを振り返る。そこに見えたのは走って逃げる二人の小さな背中が見えるだけだった。



初投稿なのでお手やわら化にお願いします。

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