ある司法官の嫉妬
私は、デニス・アンジュー。
スペランシアー王国で、宮廷伯爵として司法官をしている。
今日は、我が息子エルトが祝福の儀を受けるめでたい日だ
祝福の儀の結果、エルトはユニークスキルを持っていた。
これには私も目が飛び出でるほど驚いた。
ユニークスキルとは、数万人に一人持っていると言われる希少なスキルだ。
ユニークスキルを、持っているだけで組織の上位に入ることは容易い。
これは私が出世するべきと神からの啓示が来ているのかもしれない。
そんな私は、今玉座の間にて英雄達を待っている。
しかし、彼らは王が入って数十分は経つというのに一向に来ない。
「どういうことなんだ?」
「流石に遅すぎないか?」
周りからもそんな声が聞こえ出した頃。
「四龍英雄の方々がお入りになります」
やっと、来たようだ。
入口から、ネオロエ様を筆頭にオニピローエ様、アーヘルライト様が入ってくる。
ん?オニピローエ様の後ろに白髪の子供がいるな。
・・・はぁ。グラナータ家の子供はまた、純血ではないみたいだな。
それもよりによって、白髪とは…欠陥品ではないか。
だから私は結婚することに関して、あれほど反対したのだ。
高貴な血に、どこぞのエルフの血を混ぜるなど…。
私の意見も聞かずに強行突破するからこうなるのだ。
王の挨拶をそこそこに、王は今回集まってもらった経緯を話した。
なんと、魔道具開発局が魔力量を量り、更には魔法適性まで分かる魔道具を開発したらしい。
本島との共同開発と言ってはいるが建前だろう。
本当は、局長がほとんど作ったに違いない。
(ふむ。これは使えるな)
これは、私にとってもチャンスかもしれない。
エルトのユニークスキルは、〈魔導の導き書〉。
なんと、沢山の魔法について書いてある魔法書が出せるのだとか。
こんなユニークスキルを持っているということは、魔力量もすごいはず。
ここは、王にアピールをして私が出世する足掛かりにするしかない。
それから、局長が、魔道具を持って現れた。
大きな台座に大きな布がかかってある。
「それでは、皆さんご覧下さい。我等、魔道具開発局と本島の素晴らしき技術者の方々の共作。魔道具名は、魔導判明機です」
局長が布を取った瞬間、その場にいた全員が驚いた。
局長が言っていた魔道具とは、向こうの方まではっきり見える程に透明で大きな水晶玉だった。
「おぉーー、あれが」
「すごいなんて綺麗なんだ。あんなに透明なものは見たことないぞ」
「素晴らしい!!」
なんとすごい。芸術品にも見える素晴らしい魔道具だ。
それから、局長は魔道具の使い方を説明した。
使い方は簡単で、魔道具の前に立ち、水晶に手を添えるだけでいいらしい。
試しに、魔法師団小隊長が現れ、魔道具を使った。
小隊長レベルだと、ぽわっと光るレベルだ。
それと魔法適性は、光る白で分かるらしい。
小隊長の光は、茶色に光ったので、土魔法に適性があるということらしい。
「なるほど。素晴らしい魔道具だ。なにか褒美をやろう。後で聞くので考えておくといい」
「王よ、ありがとうございます」
「では、これより未来の英雄達の力を見てみようじゃないか」
デモンストレーションがやっと始まるようだ。
「王よ。私に1つ提案が」
「おぉ、そなたはアンジュー伯。どうしたのだ?」
「はい。僭越ながら私の息子エルトが今日の祝福の儀にて、ユニークスキルを持っていることがわかりました。なので、今回のデモンストレーションに加えていただければと思い進言した次第です」
私は、膝をつきながら、はっきりと言った。
「な、なんとユニークスキルが」
「アンジュー伯の所にユニークスキル持ちだと」
「なんとそれはめでたい」
周りの貴族は、私を次々に褒め称える。
そうだろう、そうだろう。
もっと私をほめるがいい。
いずれ、私は司法長官になるのだからな。
「ふむ、それは素晴らしい。では、最初はエルト殿に魔道具を使ってもらおう」
「提案を受け入れていただき、ありがたき幸せ。エルト、前に出てきなさい」
エルトは、緊張した面持ちで、魔道具の前に立った。
「緊急ではあるが、ユニークスキルを持っていたというエルト殿から、魔道具を使ってもらう」
エルトは、王の許可を貰うと、魔道具に手を添えた。
次の瞬間、先程の小隊長の時よりも少し輝きが強く、色は赤と緑であった
「おぉー、凄い。2属性に適性があるぞ」
「魔力量も、4歳にして小隊長にならんでいるとは…
「4歳にしてその魔力量。更には二適性とは素晴らしい」
「はっ!お褒めに預かり光栄です」
ふっふっふっ。
流石は私の息子。
素晴らしい。
これで、私も昇格のチャンスが舞い降りて来るかもしれんな。
私は、将来の司法長官になった妄想を1人していると急に目の前が茶色と金色の光でいっぱいになった。
な、なんだ?
魔道具の方を見てみると、ネオロエ様の息子であるヴァリエンテ様が魔道具を使っていた。
「こ、これは」
「流石は四龍英雄の血」
「金色の光!?」
「局長、金色は、なんの魔法属性を表しているのだ?」
「・・・すみません。今まで観測できていません。…推測ですが、ユニーク魔法を表しているのではないかと考えます」
「ユニーク魔法!?ネオロエよ。そなた息子はユニーク魔法を持っておるのか?」
「えぇ、持っております」
「なんと、ユニーク魔法だと!?」
「魔力量だって小隊長レベルを軽く超えておるぞ?」
「局長、この魔力量はどのレベルを表しておるのだ」
「はい、以前魔法師団の大隊長殿に試してもらった時にこのような輝きが出ました」
「では、ユニーク魔法を持ちながら、魔力量は大隊長レベルだと」
ク、クソぉぉぉ。
これじゃあ、私が前座みたいじゃないか
次にアーヘルライト様の息子であるヴィザーム様も魔道具を使うと、先程と同じ輝きをした。
更に、光った色が金、赤、青、緑、茶、黒であった。
「全適性で、ユニーク魔法持ち?更には、魔力量も大隊長クラスだと!?」
な、なんだと、!?
クソォ、これではせっかく私が出世できるチャンスが潰れてしまったじゃないか
忌々しい、四龍英雄め。
だか、次は大丈夫だ。
なんて言ったって、あの白髪だからな。
せいぜい、しょぼい結果をだして少しでも、私の評価をあげてもらうとしよう。
「次は・・・ああ、グラナータ家か」
「次は、期待できなそうだな」
周りの貴族も、白髪だということもあり、残念な雰囲気が漂っていた。
白髪の子供が魔道具の前に立ち手を添えたその瞬間。
目が開けれないほどの、白と金の輝きが魔道具から発した。
数秒、その状態が続くと、次の瞬間。
ピキッ、ピキピキ、パリン
何か割れたような音が聞こえて、輝きも無くなった。
目を開けると、そこには無惨に割れた魔道具の姿が。
「な、何が!?局長、これは一体どういうことだ?」
「私にも何が何だか…。王よ、少し時間を貰ってもよろしいですか?」
「もちろんだとも。よろしく頼む」
なんだなんだ?
目を閉じてたら、魔道具が壊れているではないか。
やはり白髪だな…魔道具を壊してしまうとは。
それから数分、局長は魔道具を検査した。
「王よ、お待たせしました。なぜ割れたかわかりました」
「うむ。一体何で割れたのじゃ?」
「はい。恐らくですが、レン様の魔力量が魔道具の判定の範疇を超えたため、暴走して割れたのだと思います」
「ほお。それは真か!? 」
「はい。それにここからは推測になってしまうのですが、大隊長でも割れなかったのですから、レン様の魔力量はそれ以上、魔法師団長または四龍英雄級であると思われます。更に、ユニーク魔法まで持っているようです」
はあああああああああ!?
それなわけあるか、白髪だぞ!!
白髪が、ユニーク魔法を持っているだと!?
更には、魔力量が師団長クラスだと!?
ふざけるのも大概にしろよ?
ただの魔道具の故障だろ!!
「それは凄い!!これは将来が楽しみだな」
王は、これみよがしに喜び、レンを褒めた。
だが、周りの貴族は素直に喜べはしない。
なぜなら、レンは白髪なのだ。
白髪とは、無属性しか使えない、無能と蔑まれている。
「だけど、白髪だしな?本当か?」
「白髪がそんなすごいわけないだろう?」
「局長は、魔道具の故障を隠したいだけだろ?」
周りの貴族たちが懐疑的な発言をする中、遂に一人の男が切れた。
デニス・アンジューである。
彼は、はじめにいい結果を出したにも関わらず、次から次に凄い判定結果が続き、イライラしていた所に、白髪が凄いという内容が入ってきたのだ。
「王よ!それは間違いではないんですか?局長も、もう少しちゃんと調べてください。こんな判定になるわけないのは皆分かりきっていることでしょう?」
私は我慢の末、王に進言した。
周りの中で、王に進言できるのは、宮廷伯爵である私だけだろう。
「アンジュー伯、そうは言うが事実であろう。アンジュー伯も見たじゃろう?目を開けることの出来ぬ程の金色と白の光を」
「王よ、あれは偽りであります。王も分かっているはずです。白髪がそんな凄い訳がないと──」
「アンジュー伯。その辺にしておけ。事実は事実じゃ。周りの奴らもあまり騒ぎ立てるな」
そう言うと、王は私を見ずレンという白髪のガキを見た。
「すまんな。レンよ。それにしても、その魔力量にユニーク魔法とはすごいじゃないか」
「王よ!!だからこれはそこの白髪が起こした、事故なんです。周りは気づいてるのにどうして気づかないんですか?四龍英雄と言っても白髪ですよ?白髪は無能な証なんですから、この結果自体間違ってるはずです。どうせ、家の力を使い局長に無理言ったに違いありません!王よもう一度お考え直しを。白髪は無能───」
ドゴ
ガシャーーーン
「あんたね、さっきから私のレンに無能無能ってうるさいのよ。殺すわよ?」
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「レンたちはこの後一体どうなるのっ……!?」
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