年上お姉さん現る!!
ここは、スペランシアー騎士団訓練所。
今、ここでは魔法師団員たちが親善試合の準備のため、慌ただしく走り回っている。
ステージは大地魔法で作られており、周りを魔法陣で囲う。
そんじょそこらの攻撃ではビクともしない作りになっている。
急遽用意された会場だが、魔法師団員総出で用意したため品質はお墨付きだ。
「ヴィザーム君!頑張ろうね!!」
「はぁ、なんで俺まで」
(当たり前だろ。僕一人に押し付けるさせるわけが無い)
僕は、親善試合に1人で参加すると聞いた時、全力で拒否した。
だって、僕が出るのなんて面倒くさすぎる。
しかし、残念ながら僕の悲鳴を受け入れては貰えず…それなら、誰かを道連れにしようということで、ヴィザーム君を道連れにしてきた。
「ちっ、なんで俺がこんな面倒なことをしなくちゃなんねぇんだよ」
「まぁまぁ、僕と君の仲じゃないか。お互い負けないようにしないとね!」
「チッ!」
明らかに不機嫌な態度を取るヴィザーム君だが、根は優しいのだろう。
仕方なく出てやるといった感じだ。
「ほら、向こうも準備できたみたいだよ?」
僕たちが、話している間に向こうの学生さんの準備も整ったらしい。
「それでは、両者中央にお集まりください」
審判の人の合図と共に僕とヴィザーム君も中央に歩き出す。
(って言うか、16歳相手に10歳にもなってない子供をぶつけるなんて、あの人たち正気か?)
僕達がいる反対の入口から男女の2人組が出てきた。
金髪慧眼でキラキラしている男と、ピンクのボブカットで、眼鏡をかけた大人しそうな女の子だ。
男の方は腰にレイピアを差しており、女の子の方は身の丈程ある大きな杖を抱えている。
「はじめまして。レン・ドル・グラナータです。こっちは──」
「ヴィザーム・ハン・ヴァッサーだ。」
なるべく、元気な子供という印象を与えるよう、元気に挨拶をした。
ヴィザーム君は、ぶっきらぼうではあったが、まぁいいだろう。
「よろしく。私はアイシュ。あの四龍英雄の子供と戦えるなんて光栄だわ。お手柔らかにね」
グハッ!
(年上眼鏡お姉さん…可愛い!!)
アイシュと名乗った、お姉さんが僕に微笑みかけた。
「よ、よろしくお願いします!!」
「あははは、そんなにかしこまらなくて大丈夫よ。私、平民出身だし」
「おい、レン。ペコペコすんな。みっともねぇだろ」
うるさい、ヴィザーム!!
こんなお姉さんを前にして、なぜお前は堂々としていられる。
「いいか、ヴィザーム。お姉さんとは至高なのだ。お前が軽々しく扱っていいものじゃあないのだよ」
「お、おい。なんか、口調変わってるぞ」
「うるさい。よーく聞け。僕らの歳じゃまだ分からないだろうが、年上お姉さんは至高だ。もう1回言う。お姉さんは至高!分かったか?分からないなら──」
「わかった、わかったから。…なんかお前怖いぞ」
ふんっ!
分かればよろしい。
全く、ヴィザーム君は…全然わかってない。
「おい、お主ら!!俺様を無視するでない」
僕とヴィザーム君が話しているともう1人の男の方が話しかけてきた。
「ああ、すいません」
「ふんっ。俺様は、『アリアン皇国第一皇子』カルヴァ・アリアンである。先程から俺様を無視しおって、謝罪を要求する」
うわぁ〜。
典型的な貴族だ。
それも、いちいち髪をかきあげたり動作がキザキザしててウザイ。
「あ、どうも。無視してすみません。今回は、よろしくお願いします」
「まぁ、良い。それにしても、スペランシアー王国は我が国を舐めておるのか?こんな子供を俺様らの対戦相手に出して」
まじか、この皇子。
僕たちの前で、国を批判しやがった。
これは、マズイッ!?
最近、やさぐれているヴィザーム君が…
「おい、てめぇ!喧嘩うってんのか?あぁ!!」
「はぁ…」
案の定である。
あのアーヘルライトさんの息子だからなのか、ヴィザーム君は喧嘩っぱやい。
「当然の事だろう。国の英雄の子供だかなんだか知らぬが、お主たちはまだ10歳にもなってない子供であろう。そんな子供に俺様らが負けるはずがない」
ピキッ、ピキピキッ!
いや、まぁ確かに、僕もそれは思ったけど、この場で言うか普通。
想定外のことで、審判さんも唖然としてるじゃん。
アイシュさんは、何処吹く風の様だけど…アリアン皇国でもこんな感じなのだろう。
「上等だオラ。レン!こいつは俺とやらせろ」
「いや、それは全然良いんだけど…相手明らかに剣を使ってきそうだけど、大丈夫そ?」
「当たり前だろ。俺を誰の息子だと思ってる。『氷蛮拳士』の息子だぞ!格闘術も仕込まれ済みだ」
なるほど…でも、剣と拳って相性悪くない?
まぁ、言っても聞かなそうだけど…
「へぇ、君が相手してくれるのかい?出来れば邪人を倒したと噂されてるそっちの子と戦いたかったんだけど…君で大丈夫?」
「プッ…」
「あったりまえだろ!!お前こ───」
「はいはい、ストップ、ストップ。お互い挑発しないように。この続きは試合で存分にしてもらって」
あっちの皇子様は凄いな。
思わず笑ってしまった。
それはそうと僕が邪人を倒したことが他の国にも噂されているのか…まぁ、カルヴァさんは信じてない感じだったけど。
「まぁ、よろしくお願いします」
「はい、お互い頑張りましょう」
自然と対戦することが決まった僕とアイシュさんはお互い挨拶をして、離れた。
自分たちの陣営の方に戻って来ると、まだヴィザームくんが怒っていた。
(ひぃー、こわっ。触らぬ神に祟りなしっと)
それから、数分後お互い準備が完了したと審判の人に合図を出す。
「えぇー、それではこれより、スペランシアー王国期待の逸材と、我が国の同盟国であるアリアン皇国の星達との親善試合を、開始します!!」
審判の人が言うと、周りに集まった騎士団員や魔法師団員、その他大勢の観客が大いに盛り上がった。
「ルールは至ってシンプル。どちらかが降参、または気絶したら負けです。我らが魔法師団の力で、この魔法陣内では、いかなる傷も自分の魔力を減らすだけとなっておりますので安心して暴れてください」
ウォォォォォォォォ!!
ウォォォォォォォォ!!
ウォォォォォォォォ!!
「お互い敬意をもって戦いましょう。それでは、親善試試合始め!!」





