スペランシアー王国会議
時は少し遡り王国会議室。
今、ここでは国の名だたるメンツが一堂に会している。
国王はもちろんのこと、宰相、魔法師団長、そして…四龍英雄の問題児、『黄昏の旅人』プロトアス・パル・エレウモスも現在、この会議に参加している。
「これより、会議を始めます」
ここはアンティークをメインにしたシックな会議室。
司会席にて髪を短めにビシッと揃えた男が言った。
「皆様も知っての通り、今回の前祝いには、本島の同盟国であるアリアン皇国の方々も参加なされます。そのアリアン皇国から今朝、親善試合をしないかとお誘いがありました」
「「あ?」」
一瞬にして、会議室内の空気が揺れる。
反応したのは、四龍英雄内で血の気の多い2人、オニピローエとアーヘルライトだ。
2人は、話を聞いた瞬間、怒りのあまりオーラを垂れ流した。
「おいおい、俺たちを舐めてんのか?あぁ?」
「こら2人とも宰相様の話の途中ですよ?オーラをしまいなさい」
「そうだぞ?あんまり顔真っ赤にしても人生つまんねぇぞ、ガキども。グアッハッハッハッハ」
反応した2人を諌めるのは残りの四龍英雄、プロトアスとネオロエだ。
「ハッハッハ。相変わらずお主たちは愉快じゃなぁ。」
「宰相、早く会議の続きを」
『国王』エルヴィア・スペランシアーと『魔法師団長』ドゥラーク・ファリスは、いつもの事で慣れている様子だ。
「はいはい、話を続けますよ」
司会役を務めている苦労人は、『宰相』トリス・ミニラブルである。
トリスも毎回のことで慣れているのか、呆れながらも次の話に移すようだ。
「オニピローエ様とアーヘルライト様が言うように、アリアン皇国からしてみたら、自国の力量を示すチャンスだとお思いなのでしょう」
「まぁ、そうだろうな。して、我がスペランシアー王国ではどのような対応を取るつもりだ、トリス?」
国王である、エルヴィアも少し不満げな様子だ。
それもそのはず。
自分が愛している国が舐められているのだから、いい気はしないだろう。
「はい、国王。それでアリアン皇国は、今年の騎士学園と魔法学園の卒業者の中から最優秀者を1名ずつ連れてくるそうです」
「なるほど。つまり、将来国の中核を担うであろう者の力を見せつけようという訳ですね」
「その通りです、ドゥラーク様」
魔法師団長であるドゥラークも、若干呆れている様子だ。
それもそのはず、アリアン皇国とスペランシアー王国は同盟を結んでいるのだ。
本来、合同訓練などをして、お互いに有益になるようにするのが普通なのだ。
子供みたいに、力の示し合いなど本来、失礼に値する。
「それで?生半可なやつを出して、恥かいても仕方ねぇ。こっちからは誰を出すつもりなんだ、トリスさん」
「そんな舐めたヤツらなんだ。こっちは、現生徒会長でも出してやったらどうだ?力の差を見せつけてやれ!」
血の気の多い2人はアリアン皇国に恥をかかせる気満々の様子だ。
「まぁまぁ。私も少し許せなくてですね…こちらも将来の我が国を支えるであろう、少年少女達を出してみようかと思います」
宰相は、ニヤリと意地悪に笑いながら言った。
「宰相様。それってもしかして…」
「はい、エオロエ様の想像している通り。我らが国の英雄、四龍英雄の子供たちに力の差を見せつけてきてもらいたく思います」
「な、なるほどな。流石、我が国随一の切れ者。えげつない手を考えよる」
国王も、ちょっと引き気味に言った。
それもそのはず、アリアン皇国側から出場する学園の卒業生と言えば、恐らく15もしくは16歳なのだ。
その歳の子が、まだ10歳にもなっていない子供に呆気なくやられてしまう。
国の面目も、その子たちのプライドもズタズタになること間違いなしだ。
「しかし、トリス殿。向こうは、未来のアリアン皇国を支える者たちなのでしょう?流石に四龍英雄の子供と言えど、ボコボコにできるのでしょうか…」
「あぁん?ドゥラーク、てめぇ。俺の息子、舐めてんのか?あぁ?」
「落ち着け、バカオニ。確かに、家の息子はちょっと不安だねえ」
オニピローエが、ドゥラークに突っかかると、珍しく、アーヘルライトが止めた。
いつもは、オニピローエと一緒に、突っかかるはずなのだが…、
「どうした、アーヘルライト。俺らの子供が舐められてんだぞ。何歳年上だろうと、ボコボコだろ」
「いや、そりゃあ、あんたのとこのバケモンなら、可能だろうけど。家は、子供と言っても男なんだぞ。最近の訓練も見ちゃあいるが、ボコボコにされる未来しか私は見えないね」
珍しく、弱気なアーヘルライト。
それにはアーヘルライトの家系であるヴァッサー家に理由がある。
ヴァッサー家の守護龍は性別が女性という事もあり、女性の方が恩恵を強く受ける傾向がある。
そのため、男であるヴィザームは、あまり恩恵を受けることがで来ていないのだ。
「でも、ヴィザーム君はユニーク魔法持ってましたよね?」
「先輩、それがそのユニーク魔法も微妙なんです。なんか──」
「まぁ、理由はどうでもいいでしょう。ヴィザーム君は欠場ということで」
ユニーク魔法とは、それを持つだけで並大抵の奴らと一線を画す程の強さを持つ事ができる。
ネオロエは、ユニーク魔法を持っているのに弱いのかと疑問に思ったようだ。
まぁ、先に進みたい魔法師団長様によって、遮られてしまったが。
睨んでくるアーヘルライトを何処吹く風と無視して、次の話に進める。
「それで?他の方たちはどうなのですか?とりあえず、オニさんのところの息子は決定ということで」
「ああ、もちろんいいぜ。あいつも乗り気で出てくれるだろう」
「反対意見もでなそうじゃな。まぁ、あの歳で邪人を撃討伐しておるのじゃ。文句はないじゃろう」
国王も、レンが出ることは賛成の様子。
レンが、邪人と戦ったことはみんな知っているのか、頷いている。
「それで、他の2人はどうですか?」
「私のところはダメでしょうね。ヴァリは、王女様の護衛の任務がありますので」
「まぁ、俺んとこのガキも無理だろうな」
ここまで、一貫して言葉を発さなかったプロトアスも、ネオロエも出すことはできない様子だ。
「まぁ、ヴァリ君は仕方ないですね。それで、パルちゃんがダメな理由とはなんなのですか、プロトアス様?」
この場のみんなが疑問に思ったことを宰相が代弁してくれたようだ。
「いや、あいつ今日ドレスなんだよ」
「はぁ、それが?」
「あいつも俺と似て自由をモットーに生きているからな。女の子が、せっかく綺麗なドレスを来てるんだ。戦いたくなるわけないだろ?」
プロトアスが言った瞬間、辺りがシーンっとなった。
皆が一同に「何言ってんだこいつ」みたいな目でプロトアスを見る。
「はぁ、まあ仕方ないですね。本人にはもう一度聞くとして、最悪、レン君1人で2人を相手してもらいますか」
「そうじゃな。まぁ、魔物を召喚できるみたいじゃし、なんと言っても、邪人を討伐しておるから大丈夫じゃろう」
国王と宰相は、2人して呆れたように議決結果を言い合う。
「グアッハッハッハッハ。すまえねぇな、みんな」
「はいはい、それでは今から控え室にいるレン君に伝えに行きますよ。国王は、今からアリアン皇国大使との面会です。秘書のセグレに伝えておりますので、1度部屋に戻られてください」
「あいわかった。」
「ドゥラーク殿は、会場の設営の方に戻ってもらって、お願いします」
「了解しました。では、皆様失礼します」
「じゃあ、わしも戻るとするかの」
そう言って、国王と魔法師団長は、部屋を出ていった。
「では、私たちは、一緒に控え室に行くとしますか」
四龍英雄の面々も、宰相に続いて部屋から出ていく。





