邪神の呪い
目を開けると、真っ暗な暗闇の中に白く神々しく輝く2つの球体があった。
隣を見ると、びっくりした顔をしたしゅんちゃんが僕と球体と視線を交互に動かしている。
この感じ…僕は前に体験したことがある。
「はじめまして、神様。僕たちに何か用ですか?」
そう言うと、しゅんちゃんは、大袈裟にこっちを見てきて
「はぁっ!? 大将、今神様って言いました?」
「うん。神様には何回か会ったことあるからね。雰囲気で分かるんだよ」
すると、白く輝く球体の表面が波打って
「流石、我が宇宙の最高戦力。その通り、わしこそこの第3宇宙を統べる主神である」
その瞬間、目も開けられないような強烈な光が球体から溢れてきた。
「うわぁっ、眩し!」
しばらく経って目を開けてみると、目の前には「私たちが神様です!」とでも言わんばかりのオーラを纏った2人の老人がいた。
僕としゅんちゃんが、神様から発せられるオーラに呑まれていると、片方の神様が突然、土下座をし始めた。
「この度は、我が宇宙の不始末に巻き込んでしまい大変申し訳ありませんでした」
僕達は、あまりの突然過ぎる出来事に対応することが出来ずしばらく固まってしまった。
「ねぇねぇ、しゅんちゃん。あの偉大な神様が、僕たちに土下座してるよ」
「――えっ、えっ!? なんで大将そんな冷静なんすか」
数分経ってようやく飲み込めた僕は、まだ惚けている鬼に声を掛けた。
それにしても、神様の土下座とは…滅多に見ることの出来ない光景を見てしまった。
それに、土下座してない方の神様は、土下座を止めるということなど全くせず、満足そうにさっきからずっと頷いているだけだ。
「あのぉ~、すいません。僕たち、いまいち状況が理解できてないのですが、なんで僕達は、神様に土下座されてるんでしょう?」
至極真っ当な疑問をぶつけてみると、後ろで頷いていた神様の方から返事が帰ってきた。
「うむ、簡単に言うとそこの神の不始末によって、君たちが今の状況にあるからじゃな」
今の状況?
僕達は今、神域みたく周りは何も無い所にいるが、何かあったのだろうか?
「今の状況ってどういうことですか? 僕達、確か転移魔法陣っぽいのに乗ってきたと思うんですけど…。」
「その説明は、私からさせて下さい」
僕と主神が話していると、今まで空気と化していたもう1人の神様が話し出した。
「初めに私の自己紹介を。私は第86宇宙で主神をしております。好きに呼んでください。この度は、私達の不始末に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」
そう言って第86宇宙の主神様は立ち上がり直角の綺麗な礼をしながら言った。
「じゃあ、ハロ様って呼びますね!ほらっ、86だから」
「おぉぉ、いいなそれ。わしもハロって呼ぶことにしよう!」
何故か、もう1人の神様までハロ呼びをするそうだ。
「それに、1つやり残したことはありますけど、今はワクワクが勝ってるので、気にしてません」
「うわぁ、さすが大将ですね。どんな状況でも楽しむことができる」
「えぇー、なんだよしゅんちゃん。こんなハチャメチャな展開ワクワクしない?こんなにワクワクするのは、このピアス貰った時以来なんだけどなぁ~」
僕は、ピアスを払いながら言った。
このピアスは特別で、なんと神さんから直接授かった物なのだ。
形は、陰と陽のマークがあり、そこから下に神さんの髪の毛で編んだ糸が流れている。
「ありがとうございます。そう言って頂けると少しは楽になります。」
「いえいえ。それで、僕たちの状況を説明してくれるんでしたっけ?」
「はい。今回、このような自体が起こったのは私たちが、ある1柱の神を逃してしまったからです」
そう言って、ハロ様は話をしてくれた。
ある日、第4宇宙で禁忌を犯した神の一柱が、第86宇宙に逃げてきたという。
その邪神は、降りてくるやいなや、第86宇宙を侵略し始めたそうだ。
第86宇宙の神達も応戦して戦いの末、何とか邪神を封印することが出来たらしい。
しかし、最近その封印が、内側から破られてしまい邪神の意識だけが外に出てしまったのだ。
そこで、封印されていた邪神は力をつけるため比較的、生物が弱い星を選んで、僕が住む地球に侵略を開始した。
しかし、いくら刺客を送っても侵略が進まないので業を燃やした神は、その原因を調べてみる。
すると、ある1人の男の手によって全ての刺客が殺されていることがわかった。
はいっ、一人の男というのは僕です!!
ここからは簡単。
僕の存在が邪魔になった邪神は、僕を殺そうと計画を立てて僕を罠に誘導した。
その罠にまんまと嵌ってしまった僕は、今の状況に至るという訳だ。
「あぁ、なるほど。最近やけに異界からの贈り物が、多いなぁと思ってたらそういうことだったんですね」
「はい、大変申し訳ありません」
「ああ、全然大丈夫なんで、顔を上げてください。――それで、僕達はこれからどうなるんですか?」
すると、今まで後ろで黙っていた主神が口を開いた。
「うむ、そこからはワシが。実はその落ちた邪神というのは、わしの後輩での。生意気にもわしの管轄内の住民を殺そうとしておったからな。邪魔をしてやろう、という事じゃ」
「あぁ、なるほど。そういう事ですか」
「それでじゃ。あいつが今、嫌がることは、お主がずっと生き続けることじゃ。なんなら、あいつを直接ぶん殴りに行ってもいい。そのために、わしはお主にチートスキルを渡しに来た。しかしな、ちと厄介な事が起こっての…」
僕と主神様が話をしていると、ハロ様が気まずそうに目を背けた。
「あのぉ~、ハロ様どうしたんですか?」
「ハロよ。覚悟を決めよ。」
「分かっています。どの道、転生前に話さなければならないこと」
さっきまでの和やかな空気から一転して、急に2人から、どんよりとした不穏な空気が流れてきた。
・・・ん?転生?
「では、我が宇宙の住民である蓮よ。心して聞くのじゃ」
「ははぁー、なんなりと。──それで、なんなんですか?」
「簡潔に言うと、お主には邪神から無茶苦茶な呪いが付与されておる。このまま行けば転生して5年も待たずして死んでしまうのじゃ」
「・・・はぁ?」
急に何を言われたかと思えば、僕が5年も経たずして死ぬ?
それに、転移じゃなくて転生?
突然過ぎて、何を言われたかいまいち分からない。
「あのぉ〜、神様。一体どういうことなんですか?それに、今転生って…」
それはそうだろう。急に転生だの、死んでしまうだの言われた所で???という状態なのだ。
「本当にすいません。これが転移魔法陣ならまだ良かったんですが…。邪神の野郎が、転生魔法陣なんて厄介なもん組んだせいで……」
どうやら、邪神のバカタレのせいで来世の僕はとんでもなくなっているみたいだ。
「なんで、そんな早く死ぬんですか?」
「それはじゃな。邪神の馬鹿がお主に、呪いをかけたからじゃ。敵意ある者から襲われ易くなる呪い、スキルLvがあげられない呪い、一部のステータスを除き、全てが一般人並に下がっていて、レベルをあげることが出来ない呪いじゃ。」
「・・・え?それって僕に死ねって言ってるようなもんじゃ…」
「まぁ、普通はそうじゃな。じゃが、安心しろ。お主が死なぬようするため、わしが来た。」
第3宇宙の神様は胸を張ってドヤった。
ってか、呼びずらいから、主神様って呼ぶ事にしよう。
僕の宇宙の神様みたいだし。
「まず、襲われる呪いに関してじゃが、ワシが7歳まで、呪いの発動を抑える。じゃから、その歳までに自分を守る術を必死で習得してもらいたい」
なんと、初っ端から、僕任せだった。
それに7歳って小学生じゃないか。
「話は理解したんですけど、それって無理ゲーじゃないですか?」
「そんなことは無い、今から話す裏ステータスと、お主に渡すスキルがあれば、容易な事じゃ」
ふむ、そういえばまだ、残り2つの呪いについて、教えて貰ってなかったな。
「それで、残りの2つの呪いについてじゃが、これは逆にこちらにとって嬉しい誤算じゃ」
「???」
スキルLvが上がらなかったり、ステータスが低いことが嬉しい?
「なんでって顔をしておるな。それはじゃな、転生時のステータスは、転生前を基として、担当神が世界の理を壊さないように調整するのじゃ。今回の場合だと邪神がお主の担当神になる」
ますます、分からない。
僕の担当神が邪神なら、好き勝手弄れるのでは?
「理とは、バランスじゃ。あの馬鹿は、魔力量と魔力防は攻撃性も高くないし、高すぎたところで別に怖くないだろうと、この2つの能力に他のステータス値分を調整して割り振ってしまったのだ。そのため、お主の魔力と魔力防がとてつもなく高く調整されておる。チートと言われても遜色ないくらいじゃ」
「はぁ。でも聞いてる限り、その2つが高くてもって気はします」
「そうじゃろう?あ奴もそう思って他のステータス分のポイントをそのふたつに極振りしたのじゃ。しかし、このふたつのステータスが高いということは、守ることに対してチート級の力を、発揮するということじゃ」
???
「まだ、分からぬのか。つまり、お主は枯れない魔力量で強力な防御魔法が使えるということじゃ」
!?
・・・なるほど。
「確かに、それ聞いて、死ぬ気はしなくなってきました」
「そうじゃろう。それにスキルLvが上がらない呪いに関しても、上がらない代わりに、ユニークスキルや、その上の階級のスキルの習得がしやすくなっておる」
「え!?それは凄い!!」
という事は、頑張って使っていれば、いきなり強力なスキルに変化するということか……楽しそう!!
「そうじゃろう?あ奴は、昔からこういう凡ミスが多い」
なんか、1周回って同情してきたな…まぁ、絶対許さんけど
「それじゃあ、次はお主に3つのチート級スキルを与える。お主のチートステータスと合わせることで、7歳までには必ず、どんな攻撃が来ても耐えることの出来るすべを身につけることができる」
ふむ、なるほど。
それはそうと、お待ちかねのチートスキルの時間だ。
「どんなチートスキルが貰えるんですか?」
「チートスキルじゃなくて、チート級じゃ。実は、お主に与える予定の本当のチートスキルは、まだ世界に落とし込むまで完成しておらんくての。前世に関係があるスキルだけ与えておくのじゃ」
そういう事か。
しかし、チート級と言っているのだ。
絶対強いスキルに違いない。
「何から何までありがとうございます」
「スマンの。チートスキルは、完成次第与えるから、転生後の楽しみとしておいとっておくれ」
「了解しました。それで、スキルの内容ってどんなのなんですか?」
「うむ、スキルというか魔法じゃな。神・空間魔法、神・召喚魔法、神・結界魔法 (ユニーク)の3つじゃな。特に結界魔法は、ユニーク魔法と呼ばれる世界にひとつしかない魔法じゃ」
主神様が魔法名を言っていくと、突然空中に文字が浮かびだした。
結界魔法の文字だけ光り輝いており、ほかの魔法名はうっすら輝いているだけだ。
僕の前世が影響しているらしいので、空間魔法が僕だけが使えた陰の元素で、召喚魔法は式神のこと、結界魔法は僕が得意だった九字護身法のことだろう。
「なるほど。確かに、このスキルなら、僕が使っていた術に似てるから、使いやすそうですね。」
「そうじゃろう?それに、最高域まで強化しとるから、魔力攻が低くても、ある程度最初から高出力で魔法が使えるぞい」
「凄い!至れり尽くせりですね!ても、最初から、最高ランクの力使って、自滅したりしないですか?」
「それは、大丈夫じゃろ。お主は元々、神気を操れるぐらいに制御力は、あるんじゃから」
神気を操れる様になることが、こんな時に役に立つとは。
主神様と話していると、突然世界が暗くなり、地面だけ光り輝く状態になった。
「主神様、邪神に気づかれたようです。あと数分で、転生が完了してしまいます」
「ふむ、意外と早かったな。腐っても、元12柱だけのことはある。すまんな、もっと他にも説明したかった所じゃが、バカが気づいて、転生を早めてしまったようじゃ」
なんと!?
僕も、呪いとスキルについて聞いただけで、他にも聞きたいことが山ほどあったというのに…
「じゃあ、スキルとしてもうひとつ、世界のアカシックレコードに接続できるスキルを与えておくのじゃ。聞きたいことがあったら、そいつに聞いたらいい」
「おぉぉ、マジすか!何から何までありがとうございます」
3つのスキルにプラスして、ガイドスキルっぽいのも獲得できたみたいだ。
これで、安心して、転生できる。
「最後に、酒呑童子についてじゃ」
「わしですか?わしも大将と一緒に転生するんじゃないんですか?」
「それは、そうなんじゃが。お主は人間じゃなく、魔物として転生することになっておる。それから、呪いに関してもお主にはかかっておらん。よって、お主は少しの間わしらの所で鍛えて、蓮を守れるぐらい強くなってもらう」
つまり、このまま転生すると、今より弱い状態で転生されるため、僕を守るには力不足になる。
そのため、主神様達で鍛えてから、僕の元に来るということか。
「分かりやした。すいません、大将。なるべく早く向かうようにします。主神様よろしくお願いします」
「あい、分かった。任せておれ、最強にしてやる」
「主神様、そろそろ」
僕たちが話している間にも周りから足場がなくなりつつある。
「では、お主も頑張ってな。チートスキルも楽しみにしておけ。多分、10歳の時期になると思うから」
「分かりました。何から何までありがとうございます。無茶苦茶なチートスキル、楽しみに待ってます!!」
「蓮殿、今回はすいませんでした。私が言うのもあれですけど、私の世界は景色だったり街並みが綺麗なところがたくさんあるので、ぜひ興味があれば観光など楽しんでください!」
「ありがとうございます。僕、前世では旅行とか好きだったんですよね。外に行けるようなったら、冒険とかしてみたいと思います」
「大将、頑張って。ワシが来るまで何とか生きといてくださいよ?」
「舐めんな。僕は、最強陰陽師だぞ。もしかしたら、来た時には、しゅんちゃんがいらない子になってるかも!」
「もう、10秒で転生します」
「主神様、ハロ様。ありがとうございました。しゅんちゃん、頑張れ!僕は、異世界を楽しんでこようと思います!」
次の瞬間、僕たちの足場が一気に崩れ、僕は深い闇に落ちていった。
※※※※※
「はて?あ奴の容姿について、説明したっけ?」
「あぁぁぁぁ、言ってない、言ってないですよ!!どうしよう」
「なんですかい、大将の容姿がどうかしたんですか?」
「いや、何でもない。まぁ、あ奴のことじゃ、何とかするじゃろう。そんなことよりも、スキル作成と酒呑童子のことじゃ。ビシバシ行くぞ」
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