双子
真夏の太陽がギラギラと照りつける中、中庭には大柄な男と小さな子供がいた。
「78っ、79っ、80っ…」
「いいぞ!その調子!!」
今、僕は小さな木の棒で素振りをしている。
「99っ、100っ!終わったー」
「よく頑張った!!少し休憩して、素振りもう100回だ!」
はぁ!?あと、100回だと…
こちとら5歳だぞ。
スパルタにも程があるだろ。
僕が何故剣の素振りをしているのかと言うと、あれは5歳の誕生日にさかのぼる。
誕生日プレゼントに父から子供用の木刀を貰ったのだ。
「レン。明日からその木刀で剣術の練習だ!」
「え?」
どうやら、グラナータ家では代々5歳の誕生日に木刀をプレゼントし、その木刀で次の日から剣術の練習をするという伝統があるらしい。
兄弟たちも例外なくこの試練を乗り越えたのだとか。
だが、ここでひとつの問題に当たった。
「うんっしょっと!これ、重すぎない?」
木刀が重すぎて、抱えることで精一杯だったのだ。
それもそうだ。
僕は、兄や、姉と違い邪神によって身体系ステータスが一般人レベルなのだ。
そりゃあ、そこら辺の5歳児がいくら小さくても木刀なんて持てるわけが無い。
「うーん、どうしようかな…」
父は、困ったように考え出した。
まさか、グラナータ家の子供が木刀を持てないなんて本来ありえないからだ。
木刀が持てないから、このまま剣術練習はお預けか?と思い始めていた時、予想外の援護射撃が来た。
「ねぇ、あなた。木刀が持てないなら、最初は木の棒とかでやってみたら?」
おい、コラ母よ。
今、いい感じで無くなりそうだっただろうが!
「あっ!流石、レジーナ!その手があったか」
クソっ…
お父さんも納得してしまった。
「じゃあ、レン。明日から木の棒で剣術練習だからな。魔法もだが、グラナータ家にいる以上、剣術もしっかりやっていかないとな!」
「えぇーーー」
まぁ、こんなことがありまして現在、僕は素振りをしていたのだ。
「よしっ、十分休んだな。次は、姿勢を意識しながら素振り100回だ!」
まだ、休んで10分も経ってないぞコラ。
5歳児を殺す気か?
「お父さん、あともう少し。 ていうか、もう今日は、終わらない?僕、200回は素振りしたよ?」
「何を言うか。ロイもクロエも乗り越えた道だぞ!お前ならできる、頑張るんだ!!」
何言ってるだ、こちとらゴミ邪神によって、ステータスおかしんだぞ、わかってんのか…って分からんか。
まぁ、しゃあない。
あと100回だけだぞ、父よ!
「分かったよ。じゃあ、あと10──」
「御館様、御館様!!」
「なんだ、一体」
「お子様が産まれそうです!!」
「何!?」
あれから、僕とお父さんは急いでお母さんの元に駆けつけた。
僕たちが着くと、兄や姉も着いておりソワソワしている。
幸い、子供はまだ産まれて無いみたいで、外で待っておくようにと言われた。
僕たちが、ドキドキしながら待って1時間。
突然、壁を突き破るような産声が湧き起こった。
僕達は、一斉に立ち上がり部屋の扉を見た。
(?産声が2つ聞こえるような…)
それからすぐの事。
扉が開き見習いメイドのセルティカが出てきた。
「皆様、もう中に入って大丈夫ですよ?」
その言葉を聞いた瞬間、父が目にも止まらぬスピードで入って行った。
僕達兄弟は、その後に続いて部屋に入った。
部屋に入ると、父のびっくりした声が聞こえた。
「双子!?凄いぞレジーナ。男の子と女の子だ」
「はいはい。分かってるわよ」
何と、僕に弟と妹が同時にできたらしい。
「わぁ、本当だ。可愛い」
「父さん、僕にも抱かせてくれ」
姉と兄も一目散に2人のところに行った。
僕も彼らに遅れないように駆け足で近づいた。
「レン。この子があなたの妹よ」
そう言って、お母さんは僕に妹を渡してきた。
しっかりとした重さで、落とさないよう必死に持つ。
(実感はまだないけど、この子が僕の妹か…)
《可愛いじゃないですか!これでマスターも、お兄ちゃんですね》
前世では、一人っ子だったため、下の兄弟を持つという経験がない。
というか、赤ちゃんをだくという経験すらない。
これが、下の兄弟を持つ気持ちかと、なんとも言い難い不思議な気持ちで胸がいっぱいになった。
僕にも、守るべき大切な者が増えたようだ。
── 4年後 ──
《マスター、10メートル先にジャブリン三体確認しました。5秒後に脇から出て来ると思います》
(了解。結界で迎え撃つよ)
今、僕は裏山にて、邪獣と戦闘訓練をしている。
訓練と言ってもガチの殺し合いだ。
邪獣とは、魔物が邪神の邪気に触れて邪物化した姿のことだ。
僕が住んでいるこの島は、元々邪神との最終決戦の場所ということもあり、今だに大量の邪気がそこら中に漂っている。
そのため、出てくる敵が全て邪物化しているのだ。
ジャブリンは、ゴブリンを黒と紫で禍々しくカラーリングしたみたいな姿だ。
まぁ、ほとんど色違いなだけで背格好などは変わらない。
それに名前もゴブリンの邪物化だから、ジャブリンというシンプルな名前だ。
これがコボルトの邪物化ならジャボルト、オークの邪物化ならジャークと言った具合だ。
元々、この土地でもジャブリンを、ゴブリンと言っていたようなのだが、50年ぐらい前にいきなり名前変更があったらしい。
その名前変更に僕の父が関わっているとか、いないとか…
まぁ、そんなことで僕は実践訓練中だ。
《来ますよマスター》
(はいよ!)
僕は身の回りを見えない結界で包む。
数秒後、両脇から現れた3匹のジャブリンが一斉に棍棒を振り下ろしてきた。
ガンッ!
勢いよく来た棍棒は、僕の結界の前に虚しく止まる。
(よしっ、今!)
次の瞬間、僕を包んでいた結界がハリセンボンのように周りにトゲを出し、ジャブリン達を滅多刺しにした。
(よっしゃあ!なかなかいい感じだな)
《はい、マスター。これは実践で結構使えますね!》
最近、やっと結界変形を瞬時に行えるようになった。
これにより、僕の戦法の幅が、無茶苦茶広がった。
(これで今日、48匹目だね。この魔法にも慣れてきたかな)
《そうですね。なかなかいい感じです。欲を言えばもう少しトゲを多くして、長く伸びるようにしたらさらに強い魔法になりそうです》
(そうですか…流石、スパルタ鬼教官。ちょっとは喜ばせてくれよ)
《いいじゃないですか。伸びしろがまだまだあるってことですよ!それはそうと、そろそろ日も沈んできましたし、家に帰りましょう!今日は、パーティなのでしょう?》
(まぁな。寂しくなるなぁ。明日からロイ兄と2人か…)
僕は、アカさんと明日からの修行について話しながら家に帰った。
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