婚約破棄されたので、悪役令嬢になり仕返しします。
今回は少しダークでデイープな短編小説になっております。
2日で、3000pv突破しました。
皆様ありがとうございます!
「カリーナ・アンデルセン、君とは、今日をもって婚約破棄させていただく。」
婚約者である、フリード・マクラル子爵子息から、いきなり婚約破棄が告げられた。
彼とは、幼い時からの付き合いがあり、婚約も10数年前から決まっていたことだった。
「フリード様、どうしてですか。私に何か良からぬ点があったのでしょうか。」
お互いの関係は、多少良好ではない時もあったが、大きな喧嘩などはしたことがなく、なぜ婚約破棄まで至ったのか、全く理解することができなかった。
少し懸念があるとすれば、私は男爵令嬢であり、身分不相応の恋であった点である。
しかし、お互いの両親からは、婚約を承認してもらっている、状態であった。
「カリーナは普通過ぎる。だから何も変化がない生活ばかりで、退屈なんだ。だから俺は、シモンズ子爵令嬢のクララと婚約することにした。だから、この家にはもう来ないでくれ。」
「はっ、はあ…?」
私は彼の言うことを理解できなかった。クララという令嬢と交流があるなんて聞いたことがなかった。
フリード様に喜んでもらうため、お菓子作りや、部屋の掃除など頑張ってきたはずだった。
それを普通だと言われ、腹が立ってきた。
「どうしても、俺と一緒にいたいなら、メイドとなって一生俺にこき使われろ。」
と言い放ち、私とのツーショットの写真を手に取りそれを、足で踏みつけた。
目の前の光景が、全く信じることができず、開いた口が塞がらなかった。
「じゃあな、俺の前に二度と現れるな、フハハハハハ」
フリード様の高笑いが、城内に響き渡った。
これまでの関係は何だったのかを考えると頭が痛くなり、体調が悪化していくのを感じた。
「ふざけないでよ。許さない。この恨みは何倍にもして返してやるわ。そのためなら、悪役にでもなってやる。」
握りしめた拳は、力が入り、大男でも引き離すことが困難なほど硬かった。
自分の瞳の中が真っ黒になり、姿勢も少し猫背気味になった。
それからというもの私は、訓練を始めた。
毎日数時間、鏡の前に立ち、眉間にしわを寄せ、悪役顔の特訓をした。
また機動力確保のための体力作りも実施した。
最高の状態でフリードを後悔させるその一心で、努力を積み重ねた。
「カラン、コロン」
「らっしゃい」
ここは、国の隅の誰も寄り付かない地域に存在する酒場。
店内も薄暗く、全く清掃がされておらず、客がいないのも納得できた。
店主の裏の顔は情報屋、この国の事はほぼすべてのことを知っている。
「ご注文は?」
「クララ・シモンズ邸の場所を教えてくれるかしら。」
「金貨10枚」
「ハイどうぞ。」
「ミハイル地区、の中心部そこにある大きな城が彼女の家だ。」
私は、店主に会釈をし、店を後にした。
シモンズ邸にたどり着いた。
城内に入るためには、門から入るのが最も簡単な方法ではあったが、その前には見張り番がいた。
当然私の顔はフリードによって伝えられているはずである。
でも、私は正面突破などはなから頭にはなかった。
今まで鍛えてきた強靭な足腰で、数十メートルほどある高い壁をジャンプで軽々超えた。
「こんなこと、今の私になら朝飯前よ。」
さて、クララはどこにいるのだろうか。
この日のために、隠密訓練は行ってきた。
私の家の、執事達数十人でも、私の隠れ場所を見つけることができなかった。
だから、誰にも発見されない自信があった。
「ああもう、あんたってホント使えないわね。」
城内から、甲高い声が響き渡った。
私は声の方に歩みを寄せ、近くの茂みに隠れた。
つややかな髪に青色瞳をした美少女が、そのメイドらしき人に、怪訝な顔を見せていた。
「すみません、クララ様今すぐにドレスの交換をいたします。」
あの生意気な少女が、クララだという事が分かった。
できるなら、今すぐに殺してやりたい気分であったが、あくまで目的はフリードに仕返しをするためだ。
手を心臓に当て、少しの間、心を落ち着かせた。
「これ私のお気に入りなの。もういいわ、しかもあんな冴えない、子爵子息と婚約しないといけないとかホント屈辱ですわ。」
「あの私と手を組みませんか?」
「なっ何?」
突然飛び出してきた人を目撃し、驚きで開いた口が塞がらないようであった。
「婚約ってフリード様とのことですよね。」
「そうだけど、あなたは誰なのよ。」
「申し遅れました、クララ様。私、フリード様の元婚約者のカリーナと申します。かねてより彼から婚約破棄というお告げがあり、突然のことで驚きを隠せずいろいろ探らせていただきあなた様の元へとたどり着いたのです。」
「つまり、私に恨みを晴らそうという事でここへいらっしゃったのでございますか?」
「いえ、そんなことはございません。むしろ、私はあなたと同じ気持ちでございます。あのくそ野郎に一泡吹かせたいそう思っている所存でございます。」
彼女の今までの言動から、フリードへは憎いとは言わなくても、悪い感情があるのは伝わってきた。
それに、2人であれば、作戦の幅が大きく広がる。
「確かに、私はアイツが嫌いだわ。婚約も多分、この屋敷に隠されている宝が目的なんだわ。だから、そんな奴との婚約なんてすぐにでも解消してやりたいわ。」
「では、暴れましょう。彼の心が立ち直れなくなるぐらい、無様に地を這いつくばらせてやろうじゃない。じゃあ、作戦会議と行きましょう。くくくくくく。」
「クララ、今日はお招きありがとうございます。」
「ごきげんよう、フリード様、さあおあがりください。おいしいお茶とお菓子を用意しております。」
今日は、フリードからのプロポーズがある。
彼が一番浮かれている日に作戦を決行するのが良いと踏んだ。
「さあ、お召し上がりください。」
テーブルの前には大量のクッキーが置かれていた。
クッキーは彼の大好物であった。
「おっおいしい、やっぱりクララの作るお菓子は最高においしいな。」
おいしいわけなどない、なぜならあの中には魔物の肉のミンチが詰め込まれている。
魔物は食べられるようなものではない。
「お茶も熱々で、うちの近くで採れた茶葉を使用しているのです。」
「うーんこれもうまい。」
これもうまいわけがない。庭の雑草で作ったお茶だ。
「お腹もいっぱいになったし、ちょっと散歩でもしないか。」
「ハイ喜んで。」
クララとフリードは、近くの丘へと向かった。
「なあ見てみろ、クララここから見る景色は格別だろう?」
「そうですね、ほれぼれしますわ。」
「あのさ」
フリードは、笑顔をやめ、神妙な面持ちになった。
「クララ、俺お前の事が好きだったんだ。だから、俺と正式な婚約をお願いします。」
掌をクララの元へ差出し、応対を求めた。
普通の人なら、こんな状況を断る理由なんてない。
だが…
「すみません。断らせていただきます。」
「えっ、どういうこと?」
「そのままの意味です。くず虫野郎様。あなた、二股してたらしいわね。あと今日食べていただいたものって…」
「なっなんてことを…俺はお前の事が好きなんだ。」
「知らないわよ。いっぺん、いや二度以上死んで下さい。ではごきげんよう。」
地面に突っ伏して涙を流す、彼の元に私は歩み寄った。
「あらフリード様ではございませんか。ここで何をしていらっしゃるのでしょうか。」
「カリーナか。俺間違っていたよ。もう一度やり直してくれないか。」
「何その上からの目線。超気持ち悪いですわね。二股野郎さん。もう二度と私の前に現れないでいただけますか。おーほほほほほ。」
フリードは、泣きわめきながら走ってその場を後にした。
その光景があまりにも滑稽で滑稽で仕方なく、笑いで腹がよじれそうであった。
「カリーナ様、ありがとうございました。おかげですっきりいたしました。」
クララは、私に感謝を述べる。
「あら、そう、よくそんな笑顔でいられるわね。」
声のトーンを何段階も落とし小声で彼女に言った。
クララは、状況を理解できず、また私を恐れ後退りした。
「あなた、クローゼットを見られるのをすごく嫌がっていたわよね。分かっちゃったんだよね、私。アメジストのきれいな指輪。それが、この家の宝でしょう?」
「なっなんで…」
「あれ、ぶっ壊して川に捨てたから。あんたも同罪よ。私の幸せを壊して、ホントふざけんじゃないわよ。」
私は二人に復讐を果たした。
クララ、フリードの泣き顔はとても嗜好であり、どんな戯れよりも心がゾクゾクした。
「いたぞ、あの女だ。捕らえろ。」
「フフッハハハハハ、今更破滅してももう遅い。任務は完了した。」
“希望などいらぬ、すべてに絶望を!”
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