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読書体験記ー私の運命の本

作者: 雨咲 佑希

 私はもともと本好きだ。幼少期からたくさんの作品に触れてきたが高校二年生の秋、ある一冊の本と運命のような出会いをしたのだ。

 きっかけはある一曲の曲だった。運命の本との出会いになぜ曲がきっかけなのか疑問に思うだろう。しかし、運命の本はきっかけの曲と密接に関係がある。

 始まりは2018年9月8日。動画共有サイト「ニコニコ動画」に投稿された初音ミク歌唱のボーカロイド曲「Liekki」。ボーカロイドプロデューサー通称ボカロPのyukkedoluceが作詞作曲した曲であり、私の運命の本であるライトノベル作家東雲佑の著書「図書館ドラゴンは火を吹かない」とのコラボレーション曲だ。この曲を書くにあたり、作曲者のyukkedoluceさんは作家の東雲佑先生とふたりで作られたそうだ。yukkedoluceさんは東雲先生の大ファンであることもあり、曲の動画内に出る文章はすべて東雲先生が書かれている。

 もともと曲自体が好きで聞いていたのだが、コラボ小説の存在を知り読書家の血が騒いだ。本屋に行き、まだ新刊扱いの「図書館ドラゴンは火を吹かない」(以下図書ドラ)を手に取った時のワクワク感はいまだに昨日のことのように思い出せる。あまりの興奮にそのままSNSに投稿した文章が作者の東雲先生の目に触れたことも記憶に新しく思える。

 ライトベルのジャンルは一般的に若者が好むアニメ調の本という印象が強いであろう。しかし、この図書ドラはただのライトノベルではなかった。ただ一言、引き込まれる。そもそも図書ドラは幻想小説にあたり、作者自身速読ができない構成にしたと語っていた。その言葉通り速読が特技の私も見事にその手を封じられ、ただ物語の世界に引き込まれて3日は経っていた。

 ここで簡単に図書ドラについてお話しようと思う。物語のあらすじをざっと語るとするならばこうだ。物語詩を目指すために旅に出た少年ユカと森の中で孤独に暮らす火竜のリエッキ。心を通わせともに旅にでた2人は道中様々な困難や出会いに立ち向かう。途中ユカに魔法使いとしての能力が芽生えリエッキは人間の姿を得ることが出来る、というお話だ。

 一般的なファンタジー小説だが、話の構成にも惹かれるものがある。この本は過去と未来が交差するような構成で描かれている。冒頭は司書王の住処を守る緋色のドラゴンと盗賊の話。過去回想のように話される図書館の在り方を語る今は亡き司書王と図書館の番人を頼まれる緋色のドラゴンのお話と図書館に蔵書される貴重な本を狙う海賊と図書館の番をする緋色のドラゴンのお話で構成される。司書王の死後も何年も彼の図書館を1人守り続ける彼女が、かつての友人の影を思い出し会いたいと涙を流すその様にまず心打たれたのだ。しかし、この図書ドラは冒頭の数十ページだけで良さが語れるほど軽い物語ではない。次章から主人公であり語り部を目指す少年、ユカの人生譚が始まるのだ。物語はユカの乳児期から始まる。森の奥に住む慈悲深い骨の魔法使いは街では悪いことをすると誤解されている。この誤解を解くために成長したユカは旅に出るのだが、この動機にもユカの育ての親である骨の魔法使いへの思いも垣間見えて心を打たれたのだ。



 ここで少し話が変わる。この本の魅力は体験記では到底語りつくせないものだ。さらに運命の本だとも思う。なぜこの1冊の本が今までの読書歴で最高の1冊であり運命だと思うのか。それはこの本を通じて著者の東雲佑先生を筆頭に沢山の小説家の皆様とかかわりを持つ機会がとても増えたことだ。しかし関係が広がったのは2020年、コロナ禍第一波のさなかだった。私はそのころ東雲先生の息をするように美しい文章にどっぷりはまり込み、パンタポルタで連載されている「女化町の現代異類婚姻譚」や「作家学ぶ異類婚姻譚」を読み漁っていた。

 そもそも東雲先生は「小説家になろう」という日本最大級の小説投稿サイトにて作品を投稿する所謂「なろう作家」と呼ばれるものである。そのため図書ドラ以外にも「フラニーの帰宅」、「絞首台の街、安楽死の少女」、「遺体の街の壁、死体の町の溝」など数々の作品が小説家になろうのサイト上に投稿されている。その投稿された作品たち(通称なろう小説)を暇を見つけては片っ端から読み漁っていた。書籍化されていた図書ドラも元はなろう作品であり、第三回なろうコンの追加選出作品として2016年ハード本として発売されたものだった。しかし2018年ハード本より中身を変え文庫本として発売されることが決定し、Liekkiで紹介されている本もこちらの文庫版である。

 とにかく東雲先生の世界にほれ込んだ私はSNSで彼の魅力を語るだけのアカウントを作成し感想や魅力を沢山書き込んだ。その感想一つ一つが東雲先生の目に留まり反応が返ってくるようになった。コロナの影響で女化町のイベントが中止になり、東雲先生が生放送をしたり活動を広げていったためさらに彼の世界にはまり込んでいったのだ。

 彼が活動を広げていくことによって沢山の出会いがあった。東雲先生とかかわりのある作家先生に出会い、新しく沢山の本たちに出会うことができた。もちろん多くはなろう作家なのだが、ライトノベルのジャンルで様々な文章の表現をしていく彼らにひどく心を揺さぶられたのだ。

 2年前初めて図書ドラを手にしたあの頃の私では到底考えてもみなかった世界がこの一冊に詰まっていたのではないかと思う。ただの一冊の物語で終わってしまうのではなく、この一冊の本をきっかけに新しい関係、新しい世界に出会ることが物語の本当の良さなのではないかと図書ドラを通じてとても強く感じた。今までの本の楽しみ方は静かに一人で楽しむものという認識がとても強かった。もちろん楽しみ方は人それぞれではあるし、ひとつの楽しみ方として大いに賛成である。しかしこの一冊の本を読み終えた後どうするのかも一つの楽しみ方ではないだろうか。私自身、初めて感想が著者自身に届き喜んでもらえる、ということがいかに幸せか、なぜ今まで行動に起こさなかったのかと後悔した。この図書ドラは文章で人を魅了させ、私の考え方や新しい世界との出会いをつないでくれた大切な運命の本だ。この本を通じて出会えた数々の出会いを大切にし、これからもたくさんの本を手に取りその本が見せる世界に触れていきたいと思う。

初めて書いたものです。今度は読書感想文でも書きましょうか。これを機にこの作品に触れる方が増えていってくれるといいな。

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