聖女ですが、ごり押しで行かせていただきます!
目が覚めたら、知らない教会みたいな大聖堂の中、ぽつんと一人立ってた。
「ふぁ?どこだここ?」
おかしい、さっきまで徹夜でゲームしてたのに…。アレなことに学校が休みになって、発売されたゲームをずーっとプレイしていた。寝ずに…。
「なんか、ゲームの世界に似てる…」
大きな扉を押して出れば、素敵な見晴らし…。丘の上にぽつんと立つ大聖堂…。
「んー」
青い空、遠くの方に見える羊や牛みたいな生物と村!!そしてうっすら見えるお城の影!
「んー〜。どう見てもさっきまでやってたゲームの世界じゃん。これは寝落ちして夢みてるな…私」
とりあえず、おもしろそうだから、ゲーム通り進むしかないよね!
寝落ちする前までやっていたゲームは、まーざっくり言うと、厄災から国を守るゲームです。え?ざっくりすぎ?まー操作キャラは、最初に「聖女」「勇者」「賢者」のどれかを選択するんだよね、選択肢によってスタート地点がかわるし、ストーリー展開も若干変わる。
それと、自分が選ばなかったキャラも登場するんだけど、仲間にしてもしなくてもゲームは進めるし、最終ボスも倒しに行けちゃう!凄いね!
仲間にしないと攻略難しいダンジョンがあるんだけど…。
「ゲーマーな人の動画を見たかぎり、ごり押しができる!」
そう、実は1回目はクリア済みなんですよ。全員を仲間にして全ダンジョンクリア、の最終ボスも倒した。超絶大変だった!!小ダンジョンが100個あるんだよ!そして中ダンジョンが10個!中ボス10体!!そして2周目プレイ中だったんだよねー。攻略の仕方で最後のパレードのシーンが変わるらしいんだよねー。
てことでつきました。最初の村!
「なんだ?君は?」
入り口にいたお兄さんが声をかけてきた。よしよし、ゲーム通りだぞ!
「ここはどこですか?」
とりあえず、ゲームの選択肢にあった答えを言って。
「ここは、ショイサの村さ…あんた…まさか大聖堂から?村長に連絡しないと!!」
やっぱりゲーム通り、入り口のお兄さんによって説明ムービーと同じ、村長からこの村に伝わる話を聞けた。そして各地を回って証を手に入れて、厄災を封印する。必要なマップにアイテムももらえた。
「凄い…」
コスプレみたい!ウキウキしながら、ゲームでやっていたお金集め、山の中に埋められているへそくり。空き家になった小屋の中。ぜーんぶ一緒だ。
「夢ってすごい!て言うことは…モンスターも一緒かなー。んー」
このゲームレベル上げっていう概念はないんだよね。プレイヤーの腕次第、もちろんライトユーザー向けにちゃんと攻略できるようにアイテムも用意されてる。つまり。
「お金稼ぎは必須!」
近くの村に行って、必要なアイテムと回復薬。それに簡易テント。時間の流れによっては外で野宿ってありえるからね。それに夢であっても。
「夜は眠い…」
起きてられないわー。でも、この簡易テントを張るとモンスターは近寄ってこないのよねー。だって私聖女だもん。村で買った本を開いて呪文を唱えると魔除けが施されるの。勇者や賢者だと無理なんだよねー。賢者だと武器強化ができたり、アイテムを錬成できて売ったりできてお金稼ぎには良いんだけどね〜
聖女だと、モンスターを物理で倒してアイテムを拾って課金。もしくは採取や聖水を組んできて課金だ。なぜか聖水は聖女にしか取ってこれないんだよね〜。他の人が聖水が湧き出る泉で瓶に水を入れると普通の水になるけど、聖女が入れると聖水のまま。飲むと体力小回復、状態異常の小回復になる。そして祈りを捧げると大になる。
って感じに悠々自適に過ごしてたんだけど。
「それにしても、夢覚めなくない?」
お金もある程度溜まったし、ダンジョン攻略するのもいんだけど…。
「今の所、一回も死ぬほどの攻撃は受けてないのよねーん…」
そこら辺の雑魚は、店で買った強い武器でガツガツ倒して擦り傷、切り傷程度で済んでるんだけど…。流石にダンジョンってなるとなー。
「めんどくさいんだよなー」
小ダンジョンはアイテムゲットしたくて何回か入ったけど、中ダンジョンは結構広さがあるんだよね〜。何より仕掛けも結構あるから、行ったり来たりしないといけない。
「とりあえず、防具も買い揃えるか」
そう、武器に全振りしてたのよね。て言うことで、野生の馬をとっ捕まえて、王都まで。王都にしか強い武器が売ってないんだよ。このゲーム。たしかゲーム内だと、馬移動で4回夜が来てたはず。で、途中旅人が作ったテントの溜まり場があるのよね。
この世界、盆地みたいな作りで、王城がそのど真ん中にあるだよねー。そして、厄災はお城の真下。罪人達が入れられてる牢屋よりももっと下にある。
「厄災を封印しちゃえば、ゲームクリア」
ただし、各地のダンジョンを攻略してないと、厄災がいる地下に行く途中に全員出てくるのよねん。
「んー散らばってるダンジョン攻略なんて、面倒だし、ここは一気に攻めるが勝ちよね」
と言うことで、4日かけて、途中小銭稼ぎしつつ、王都についた。ゲーム通り進むなら、勇者は騎士団に、聖女は教会に、賢者は魔術協会に行けば、王様と謁見からのダンジョン攻略が始まるんだけど。説明が長い。
「と言うことで、ショートカットするか」
ゲームだと忍び込めるんだよねー。ちゃんとセーブせずに進んだ時に戻されて、強い武器買うために、あちこち探索してる時に見つけた抜け穴。
ただし、装備がそれなりにまた必要なんだよねー。フードにマスク、防具と色々つけると、もう不審者みたいで性別がわからなくなる。そして、開けられるのがなぜか夜っていう限定があるんだなー。
辺な浮遊物が浮かんで、夜なのにカラスの鳴き声が聞こえる中、お目当の場所…そう!王城の裏手にある墓地。抜け道として鉄板ですよね!!
時々骸骨が襲ってきたりコウモリが襲ってきたり、カラスが飛んできたりするけど!
「じゃまじゃま!!」
聖女様をなめるんじゃないよー!広範囲攻撃最高!攻撃呪文を唱えれば一発で浄化よ!んで、お目当の墓石は豪華なお貴族様用にお家風になってる中にあるのよね〜。
「おじゃましまーす」
石碑に書かれた名前も確認すれば、ばっちし!石碑を押せば。
「ぴろぴろりーん!隠し通路がみつかった!」
効果音がないから自分で言ってみた。それにしても…。
「思ってた以上に中、暗いな…」
いちおうランタン持ってきてるけど、灯油たりるかな?カバンを漁って、魔道書も確認する。魔道書を持ってないと魔法使えないんだよねー。光系の魔法もちゃんとあるっと。
「よし…では参らん!」
おそるおそる中に入ってみたけど、やっぱり真っ暗、そして狭い。
「光を広がれ」
簡易魔法を唱えて、ランタンの光の範囲を広げる。天井は根っこやら骨がちょっと見えてますね…。道はくねくねしながらも、一本道で進んでる。
「ゲーム通りなら、お城の庭にでるはず」
ビクビクしながら、狭い階段を登り、途中下水路を通ってやっとまともな石畳になったところで、壁にたどり着いた。
「ふぅー…」
ゆっくり壁を押し込むと、外の空気が入り込んできた。月明かりが眩しい…。
「…」
まだ夜なのに、明るく感じる。とか思っていたら、人の気配!嘘!ゲームだと人がいるのは、もっと進んだ先なはずなんだけど?!
「誰だ?君は!」
しかも声かけられた?! 急いで振り返っても誰もいない。自分が開いた扉は今しまって、ただの銅像の台座に戻ってる。その後ろにも人なんていないし、どこだ?
「ふーん。」
上だ!!見上げれば、銅像の上に身なりのいい男が立っていた…。あ、みたことあるぞ。
「不思議な空気…でも特に証を持っている様子もない?」
飛び降りてきた!急いで後ろにジャンプして回避すると、拍手された、なんで、こんなに身軽なんだよ!!こいつ!王子だろう!!ゲームだと、王様の子供である、お姫様と王子様は謁見の間で現れるのと、武器の相談とかでお話し、あとエンディングで一緒にパレードでしか登場しない。なにより、こんな場所で会うはずがないキャラなんですが?!
「勇者、でもなさそうだな、勇者は今西のダンジョンを攻略中のはずだ、賢者も南のダンジョンを攻略中…」
へー他の人たちはちゃんとダンジョン攻略してるんだ、じゃー下に出てくる中ボスって減るのかな?
「ということは、現れたという報告があって以来成果が聞かれない聖女かな?」
「…」
成果を挙げられてない?うるさい、私は一気にカタをつけるんですー!
「まさか、証を得ずに厄災を倒しに行くってわけじゃないよね?」
「…」
そのまさかです!大丈夫、雑魚キャラで要領は得たから!
「困りますね〜…証をとっていただかないと」
「…」
中ボス倒すと証をもらえるけど、あれってなんの意味があるの?王家の秘宝である武器が使えるようになるけど、ぶっちゃけ武器やで売ってる方が扱いやすかったんだよね。
「何もお答えいただけないご様子ですね?」
「…」
だって、イレギュラー発生ですよ!下手に言えるわけないじゃん!このゲーム選択肢によっては敵キャラの強さ変わったりするんだよ!知ってるんだから!ていうか、このイベント何!誰か教えて!まだ未攻略の内容だったのかも!どうする、どうする。
「仕方ありません、貴方をとら」
「せい!!」
捕まってたまるかー!!持っていたアイテムその1!煙玉!そのまんまだね!あたりを真っ白にしながら、覚えてる方向に向かって駆けていく。
見えてきた景色は、ちゃんと行きたい方向と同じなレイアウト、本当はこのまま城の中に入って警備兵の巡回を避けつつ、地下へ向かうんだけど。さっきのお騒ぎで、場内めっちゃ明るくなってる。
「イレギュラーすぎる。詰んだか?」
とりあえず屋根に登って煙突の影に隠れた。
「はー一気にごり押しで攻略しようと思ったのに、どうしよっかなー朝まで待つかな…」
「ごり押しですか、それは困ります」
「はーなんでよ…って?!」
振り返ると煙突の横にさっきの王子がいる?!
「証をとっていただかないと、私と貴方が結婚できないでしょ?」
「はい?!」
結婚???そんなエンディングなかったはずだけど?
「ご存知なかったんですか?女性たちは結構必死でダンジョン攻略をされていますよ?僕と結婚するためにね」
「はあああ??何それ!」
「王子の婚姻相手は、厄災が降りかかる時だけ、証を集めた聖女のみっと決まりがあるんです。なので、貴族達は娘達を聖女にするべくダンジョンに行かせてるんですよ。」
「えー…それって可哀想…」
確かにゲーム仕様を考えれば、ボスを倒せれば証がもらえそうだもんね。だからって、あんなモンスターだらけのところに送り込むのか?あ、騎士も一緒に連れてってるか。
「でしょう?逆に、姫は勇者か賢者を婿として迎えられるんです。ズルいですよね〜」
「えーそれはそれで微妙じゃ」
「それが今回の勇者はかなり顔が良いらしいです。」
「へー」
「でね、どういうわけか、王族は勇者や聖女、賢者がわかるんです。」
「へー…え」
「見つけました、僕の未来の奥さん」
「…じゃ!」
すごい高かったけど、今使わずしていつ使うのか!ワープ!
「はぁー…なんだろう、めっちゃ怖かった」
思わず話し込んじゃったけど、私がプレイしてたのはアクションRPGであって恋愛趣味レーションゲームでも、キャラが誰かと結婚できるってやつでもないんだよ。純粋に倒すだけのゲームなんですよ!!
そしてワープした場所はどこだかわからない森の中!あれ、高いくせにランダムなんだよなー!一応安全な場所に飛ぶらしいけど。
「それにしても、なんなんだ、あの王子。あんなキャラだったの?!おかしい、ゲームだと優しいキャラでアクティブというよりもインテリ系だろ?なんで屋根に居たの?!もしかして強いのか?!」
とか思ってたら、悲鳴が聞こえた。人助けは人のためあらず!自分のためである!そう何か貰える!!
てことで、さっきの出来事を忘れるべく、八つ当たりともいうけど。モンスターが群がってる場所に突撃です!!聖女だろうがなんだろうが、今はムカつくから体全体に聖なる守りとかいうそのまんまの術をかけて、モンスタを蹴って殴って倒しまくれば、襲われていたのは高そうな馬車…しかも馬が6頭繋がれてる…んー確か貴族だっけ?繋がってる馬の数でどうのこうのってあったんだよね。ゲーム内で。
「あ、ありがとうございます。」
そう言って出てきたのは…なんとこの国のお姫様だった。
「…護衛の人は?」
周りを見るに誰もいないじゃない。中を覗くと侍女が泡を吹いて倒れてるし、だめじゃん!主人をほっといて気絶って!
「わ、わかりません。」
「とりあえず、乗っててください。車輪は無事そうですから」
そして、私は歩かずに済む!!馬を操って近くの村を目指す。マップを見れば、村よりも街が近いみたい…ってここ、中ダンジョンに近いな…。
ふと、このお姫様の目的がわかってしまった気がする…そう、ここは今、西…。
「勇者狙いか…えー…これってご褒美もらえる前に、厄介ごとに巻き込まれるイベントじゃ…」
おかしいな、ごり押しでさっさと世界を救って終わらせようとしてたのに…。それにしてもさっぱり夢から覚めない…。
「認めない…認めないぞ…私は夢から覚めるんだ!!」