表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/239

ⅬⅩⅩⅩⅢ 星々の大三角と大十字編 前編(1)

第1章。朝帰り(1)

第1章。朝帰り(1)



 天空の2つの月が、朝の訪れを受け、姿を青空のなかに溶かしていく。

ふたつの月の光も、その後を追って、薄く消えてなくなっていく。


そのような、夜と朝の狭間(はざま)で、暗黒の妖精ラティスは、昨日帰ってこなかった

白光の妖精の代わりに、夜の警戒行動(おさんぽ)を風の妖精リーエと楽しんできている。


ラティスはこのところ、機嫌がいい。


それは、新帝国が、

人材・人員不足であり、新帝国の官吏は、テムスから借りている者を除いて、

軍人としての兼務と素養を必須(ひっす)とされたので、


当然のこととして、

リントから、旧双月教国軍・旧双月教国から新帝国軍への入隊を希望する者を、

キョウショウから、旧創派軍・旧創派から新帝国軍への入隊を希望する者を、

それにあわせて、

イルム・ルリからも、新帝国政府に官職を得た者を、


魔力訓練の場として、()()()()()()に、訓練生として入学させている。


そして、魔力実戦の講師が、当学院の名誉学長ラティスさま、そのひと(妖精)である。


全くの無関係者には、ラティスも牙をむく事はなかったが、半端に魔力に関して

(とが)った想いのある者、アマト・新帝国に対して含むところがある者は、

暗黒の妖精の精神探査の魔力で選別され、


≪10人でも20人でもまとめて、かかっていらっしゃい。≫


と、精神波で宣言されたあげく、彼らの最大の魔力攻撃は一瞬にして無効化され、

逆にラティスの凄まじく()()()()一撃に、全く抵抗も許されず、

意識を切り落とされている。


自分が、1000年にわたって、強大無比の魔力をもつ人外として語られてきた

恐怖と破滅の禁忌(きんき)である暗黒の妖精アピス、

自分がそれを超える妖精であることを、骨の(ずい)まで叩き込み、


と同時に、新帝国の皇帝位ごときものは、


【暗黒の妖精ラティスさまから、セプティという7世王帝の遺言書上の

後継者の少女に、お(たわむ)れに下賜(かし)されるもの。】


という、ラティスさまの()()()()()を、現実とともに認識させている。


これを、ミーちゃん・ハーちゃん達が、自分を院外にお誘いにくる日を除いて、

毎日のように、アバウト学院内で講義で行っているのである。


暗黒の妖精と契約者の【帝位の簒奪(さんだつ)】の(うわさ)を、底知れぬ魔力を体感させる事で、

吹き飛ばした。


ラティスさまが、機嫌が悪いはずがない。


 それに、昼のラティスさま、夜のラティスさま(ラファイアの変身体)の活躍で、

古くから皇都に巣食う、夜の人間達は極めて理性的になっていたのたが、


昨夜は、金の(にお)いにひかれた皇都に集ってきた、新しい夜の人間達が、

同夜多発()()()をしたので、()()というのを、

リーエを臨時講師・仮称ラティス様を助講師として、魂の底まで()()()

教えてあげたのである。


自分の()()()としての才覚に、あらためて満足している。



・・・・・・・



 意気揚々と、朝帰りしてきたふたりがだが、家宅から、

白光の妖精の駄々洩(だだも)れの気配と、禍々(まがまが)しい緑光の気配が()れ出してきているのに

立ち止まる。


「リーエ、あれどう見ても、エリースの怒りだよね、アンタなんかしたの?」


ラティスが、軽くリーエに問いかけるが、

リーエは、思わず硬直 のポーズで固まっている。


『心当たりがあるんだ、いやあり過ぎるというところね。』


「ラファイアの方は私がするけど、エリースの方は一刻も早く(あやま)ったほうが、

いいんじゃないの!?」


ラティスの他人事のような言葉に、リーエは泣き顔で姿を消す。


『あいつ、自分が超上級妖精だということ、忘れているんじゃないの、

なんであんなに、エリースに弱いのかしらね。』


と、自分とユウイの関係を、他人から似たように見られているとの、

思いに(いた)らない、愉快(ゆかい)なラティスさまである。



・・・・・・・・



 リーエを見送ったあと、足早に家宅の玄関の扉を開け、白光の妖精の気配が

流れてくる部屋に急ぐ。


抗探知魔力においてラファイアは、非常に強力な防御の力を持っている。


自分とリーエが、帝都の外の廃棄(はいき)された闘技場で、向かいあった翌朝、

自分の探知魔力に対し、ラファイア自身を無反応化し魔力を(かわ)し、

あげく、名誉学長室で、香茶の香りを楽しんで、自分を待ってたほどに。


自分の受動型の探知魔力に引っ掛かる、この状況はさすがにおかしい。


「なに、ラファイア。この駄々洩(だだも)れの気配は・・・・。」


おもいっきり扉を開け、部屋を見渡すラティス。


そこにはふたりの、白金の髪に白金色の瞳・大理石色の肌・

超絶美貌の白光の妖精が、49色の光彩を(まと)いながら、

対角線上の椅子に座っていた。

おもわず、暗黒の妖精ラティスは、扉をバタンと閉める。


『ラファイアがふたりいたようにみえたわ。

このところ、爽快(そうかい)な魔力の使い方をしてなかったからね。』


『特に、アピスの時は予備動作(詠唱)抜きに、連続でぶっ放したし・・・。』


『あの時、エーテルを暴走させた反反応(はんはんのう)が、感覚受容部分に障害をおこしたか?』


珍しくラティスは、たたずんで考えている。エリースが見ていたら

『あんたが考えても、結果はより悪い方に転がるのを、わかっている?』

と、皮肉のひとつも言ったところであろう。


で、(みちび)き出された行為が、再び扉を元気よく開け放ちて、扉に近い方の

白光の妖精に歩み寄り、もうひとりの白光の妖精を指差し叫ぶ。


「んなわけあるか!ラファイア、何でラファイスが、ここにいるのよ!」










第83部分お読みいただき、ありがとうございました。


前部分で書いた秘本館は、教都では、≒秘宝館として使われていると

思っていただければ・・・。

では、アマト君の「秘本館って何ですか?」の質問は、

意味を知っていて、敢えてカシノさんに聞いたのでは

ないんじゃないかと。なんせ、アマト君ですし・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ