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ⅬⅠ 水面下編 前編(4)

第1章。乱入者

第2章。もうひとつの始まり

第1章。乱入者



 その時、天まで届くような巨人が、思いっきり両手で引き裂いたように

空間が破れ、隣接した空間が(のぞ)く。彼方の空間から大量の大氣(たいき)(うず)を巻いて

こちらの空間へ流れ込んくる。


激しく連続し、重なり合った白銀の輝きと、凄まじい大音量が(とどろ)く。

暗黒の閃光(せんこう)(きら)めき、ふたつの影が屹立(きつりつ)する。


≪ラティス。少しは使えるようになったじゃない!≫


≪アピス。アンタも、多少はましになったと、褒めてあげるわ。≫


再び、ふたつの巨大な(いな)光が、ふたりの妖精の中間点で輝く。


目をかばい、(かが)みこむアマトを白金に輝く多面体球形障壁で守りながら、

ラファイアは、カウシムとレティアへの白金の防御障壁さえ構築している。


「アマトさん、敵味方同舟(どうしゅう)でしたね。」


ラファイアは、綽々(しゃくしゃく)と、アマトに話かける。


「言いたくはないですが、さすがはラティスさん。ただあのアピスさんと、

雌雄(しゆう)をつけるほどの魔力の差はないようです。」


「ラティスさんは魔力は、アピスさんより上と言っていましたが、アピスさんも

1000年もあれば、(きざはし)を上がっていらっしゃるでしょうから。」


美しいその顔を、軽く傾け、しばらく考えていた様子であったが、


「けどこのままだと、この空間に置いてきぼりになりますので、

ふたりに水を差しますかね。」


と語り、契約者のアマトに、ほんとうに優しい笑顔をみせる。

それに合わせて、ラファイアの白金の背光が、(ゆる)やかに()れる。


≪アピスさんに、ラティスさん。1000年以上振りに()えて嬉しいのは

 分かりますが、そろそろおやめになりませんか?≫


なるべく(おだ)やかな精神波で、ふたりの荒れ狂う妖精に、話かけるラファイア。

空間の四方に、激しい光と凄まじい音が響く。


≪ラファイア、あんた何言ってるの。すぐ片付けてやるから、バッタもんは

 黙っときなさい!≫


所詮(しょせん)は、ラファイスのまがいもの。我らの聖なる闘いに口を出すんじゃない!≫


全く相手にされず、罵声(ばせい)を浴びせられる白光の妖精。

うつむくラファイアの顔に、急激に赤みが差し、震えがはしる。


「バッタもんにまがいもの!?大人しく話をすれば・・・。」


ラファイアは、右手と左手をそれぞれふたりの暗黒の妖精の方へ向ける。

両手の前に禍々(まがまが)しい、白金の魔法円を完成させる。


『ククク・・・ふたりとも、いっぺん滅してみるか!!』


次の瞬刻(しゅんこく)、とてつもない掃滅(そうめつ)の白金の光をぶっ放す。


ふたりの暗黒の妖精は、その(けた)外れた光の奔流に、同時に白銀の魔法盾を構築、

直撃分だけは、光揺らめく盾が吸収する。


≪ラファイア、ここであんたまでぶっ放せば、この空間の均衡(きんこう)が保てると

 思っているの!?≫


ラティスは我を忘れて叫ぶ。

アピスも無言で回避行動に移ってはいるが、その動きに余裕の色はない。


ラファイアの新たな魔力は、空間の平衡を(くず)し、

新たに空間の()け目を現出させた。


その裂け目は、白金の多面体球形障壁ごとアマトを吸い込み、

別の空間の彼方へ吹き飛ばす。


『『!!!!!!!・・・・・・・』』


白光と暗黒のアマトの契約妖精は、真っ青な顔で、その空間に()び込んでいく。


ひとり残された、殺戮(さつりく)の暗黒妖精アピス。


「ま、次の機会を楽しみにということね。」


その美しい横顔から、妖精の思いは読み取れない。


「さて、レティアとおまけを回収しなくては。」


ひと息ついて、身を返す。



第2章。もうひとつの始まり



カウシムとレティアは、アピスが構築した巨大な白銀の多面体球形障壁に包まれ、

アピスとラティスがぶつかった、焼け()げた大地に戻ってきている。


「お帰りなさいませ。」


ひとりの眼帯を()めた男がどこからともなく現れ、(かしづ)いて3人に礼をとる。


「ん!?ズースーか。よくここがわかったね。」


顔色を変えることなく、カウシムが、目の前の男に問いただす。


「カウシム殿下が、ご自身のお悩みや疑問を、神々への祈りや過去の智慧に、

解答を求めてられましても、手に入れられるのは難しいと、

そろそろ、お気づきなられる頃。

だとしたらご帰国へはこの道かと。」


「他国に去られることは、ありえないでしょうから。」


ズース―の忖度(そんたく)のない物言いにカウシムも、さすがに苦笑いを止められない。


「ズース―、義兄上が教都にくる赦しを、よく与えましたね。」


「いえ。勝手に私も出奔(しゅっぽん)してまいりました。」


カウシムは、自分がしでかした事は(たな)に置いて、

(あき)れて百戦錬磨の軍師の顔をみつめる。


「カウシム王太子殿下が出奔(しゅっぽん)なされて、レティア殿下もお姿をお消しになられた。

だとしたら、あの国に私の居場所はござらん。」


「喜べズースー。義兄上は、お戻りになられるぞ。」


レティアは誇らしい顔で、目の前の忠臣に、言葉をかける。

ズース―の強面の顔が固まり、次の瞬間、涙が(あふ)れ出し嗚咽(おえつ)()れる。


「やはり、殿下は殿下だった・・・・・・・。」


「おい、ズースー、ここにいるのは、お前だけではないだろう?」


それをしばらく(なが)めていたアピスが、ぶっきらぼうに声をかける。


「さすがは、黒騎士コールスさま。」


アピスの(いつわ)りの名を、ズース―が口に出す。無論、偽名であることは、

ズースは感じている。そう、ズース―も(いつわ)りの名だから。


(すず)やかな風が、何もない大地を駆け抜けていく。


涙をふく事もせず、ズースーは後ろを向き手を上げる。

魔力障壁が消え去り、100騎余りの鉄馬にまたがった騎士たちが

荒れ果てた大地の上に現れる。


そのズーズーの有り様をみて、騎士たちは、一斉に全員剣を抜き

胸の前に(かか)げる。

聞こえないはずの、(よろい)や剣が触れたとき発する()んだ金属音を、

カウシムやレティアは、確かに聞いた気がした。








第51部分をお読みいただき、ありがとうございます。



(作者からのお願い)


本作品も、令和3年12月末で、100部分まですすんでいます。

当初から勢いだけで、書き進んでいきましたが、だんだんそのエネルギーも

摩耗してきています。

こういう状態ですので、ブックマークをいただけると、励みになります。


作品を続ける、新たなエネルギーとなりますので、

本小説を、今後ものぞきにきてもいいよというのであれば

ブックマークの登録、よろしくお願いいたします。


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