表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/239

ⅭCⅩⅩⅩⅦ 星々の紅焔と黒点編 後編(4)

第1章。立ちくらみ(1)

第2章。立ちくらみ(2)

第1章。立ちくらみ(1)



 二つの月が、驟雨(しゅうう)が闇夜で 霧舞うような光を、

大地の上に、降り注がせている。


そんな夜、ふたつの超絶な魔力を存在が、月光を背に、(たたず)んでいる。


・・・・・・・・


≪おそいわよ、ラファイア!≫


ラティスさんから、怒りの精神波が、わたしに浴びせられます。

いつものことですが、どうして、この妖精(ひと)は、

こう、わがままなんですかね。


そう、わたしは、イルムさんとルリさんの夜のお仕事が終わる時間を見透かして、

その()()()()()時間に、南宮の執政官室に、瞬間移動をして、

ルリさんに香茶のご相伴を、()()()して、香茶の世界に(ひた)っていたんです。

そこに、あの精神波です。


思いっきり無視しようとも思いましたが、キンキン・ギーギーと、

うるさいったらありゃしません。

お互いに超絶した探知魔力を持ち合わせていますからね・・・。

逃げ出すわけにもいかずに・・・、ここに来たわけですが・・・。

あ、今度はラティスさん、なにか話出すようです・・・。


「リーエ。あんたの、わたしへの今回の注進は、非常に有意義なもの。」


ラティスの言葉に、リーエさんが、軽くポーズを決めています。


「コウニン王国とかいうやつらが、わたしと闘いたいとはね・・・。」


へ!? わたしは、重層的に幾重にも折りたたまれている、探知記録のなかから、

わたしの記憶として、ある場面を取り出します。


ん~、なにか盗聴・盗視している気分ですが、気にしないでいきましょう。


「なんで、人間はこう バカなの。お前らが束になっても、

わたしに(かな)うはずないじゃないの・・・!」


ラティスさん、そういう話ではなかったじゃないですか・・・。


<・・・我が国も、双月教国に対する貸が回収できるのであれば、

 このように、戦争になるようなまねは、いたしません・・・。>


<・・・それに、最期通牒(つうちょう)の形で、我が国から、

 新帝国に公文書を出す準備は、すでに終了しております・・・。>


<・・・新帝国さまに、超絶級の妖精さまと、

 超上級の妖精さまがいることは、 重々承知しておりますし、

 近頃は、テムス・ミカル両大公国や、武国とさえ、

 友誼(ゆうぎ)を結んでおられるようで・・・。>


・・・ここからどう読み解けば、

ラティスさんとコウニン王国間の喧嘩(ケンカ)になるんですかね!?

ほんと、ラティスさんは、病気ですね。

(やまい)膏肓(こうこう)に入るとは、ラティスさんのためにある言葉でしょうね・・・。


「そう、わたしは、ガキどもの教育を通して、ひとつの真理にたどりついたわ。

聞きたい、ラファイア!」


別に、聞きたいとも思いませんが・・・。

聞いてるように見える姿勢だけは、とっておきましょう。


「それは、()()()()よ!」


「ほぇ?」


わたしは、思わず奇妙な声を出してしまいました。


「わたしは気付いたわ。人間に大人の状態なんかないのよ、

リーエにラファイア。」


「あるのは、小さいガキか、大きいガキかの違いだけ。」


「だから、常に教育してやらないと、いけないのよ。」


「そのガキどもが、戦場なんて言っているところで、

このわたしがキッチリと、教育し(しめ)てやるわ!」


「これで、()()()なんて下らないものに、力を注ぐなんて、

バカの3乗のような事などせずに、故郷で子作りに(はげ)むんじゃないの!」


「そうすれば、妖精契約できる人間が増えて、妖精界の方も万々歳じゃない。」


あ~。倫理的には破綻してると思うんですが、

結果はそれでいい方に進みそうですね~。


ん、すきを見つけて、リーエさんが、逃げ出そうと(たくら)んでいますね。

目ざとく、わたしは見つけましたよ。


ハハハ、白光の妖精の魔力にかけて、あなただけ逃がすなんてことは、

させませんから。


【自由への逃亡】の挑戦は、またも頓挫(とんざ)させてあげましょう。


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・。」


「・・・・・・。」


・・・・・・


・・まだ、何かしゃべり続けてますよ、このお方は・・・。

わたしの笑顔がてついくのを、自分で感じてます、

そして、無意識に、わたしの右手に、攻撃の用意魔力が集中していき、

妖しく白金に輝きだすのが止まりません。


そろそろ、アホの4乗の御方(おかた)の演説を、実力行使で止めさせないと、

ふたつの月が、山の端に沈んでいく時間になりそうです。



第2章。立ちくらみ(2)



 「それじゃあね。セプティ、エリース。」


椅子から立ち上がったエレナが、軽く手を挙げて去ってゆく。

わたしたちは、いつものように、校内の休憩所で、

果実水を飲みながら、学友たちの下校の波が消えるのを待っている。


今日は用があるということで、キリナたちミカルの3義姉妹や、

ノエルやリア(ラファイス)も早々に人波に交じって消えていったわ。


「エリース。キリナさんの用って?」


セプティが尋ねてくる。


「たぶん、アストリアさんの墓標での語りかけじゃないかな。」


わたしは、音響と普通の障壁をはりながら、静かに答える。


「やはり、アストリアさんは・・・。」


「きびしいだろうね・・・。」


これは、戦士としての、ひとつの現実、ひとつの未来・・・。

たとえ、超絶した魔力を持つ妖精と契約したとしても、戦士としての生と死は、

それはあくまでも、相対的なものにすぎない。


「ふう~。」


わたしの口から、ため息が転がり出る。


「どうしたのエリース。ため息なんかついて・・・。」


「今、世界には、超絶の魔力を持つ妖精が複数名いるわ。

けど、戦争も争いも、無くなりはしないのねと思ってね・・・。」


セプティは、複雑そうな顔をして、わたしを見つめている。


「エリース。猊下(げいか)から教えてもらったことがあるわ。」


「人間の歴史は、らせん状に上がっていくようなものだって・・・。」


「ある時点で物事の解決に、戦いを望み、戦いをして、そして反省して、

しばらくの平和の時期が訪れる。そして、また戦いを望む・・・。」


「らせん状に()()()()()()というのは?」


「同じような時間が繰り返すんじゃなくて、使う武器の質・力だけが上がってゆく。」


「妖精たちが、いるいないに関わらずにね・・・。」


セプティの顔色が曇ってゆく・・・。


猊下(げいか)に言わせればある時点に達したら、戦争はできなくなるそうよ。」


「ある時点って?」


「武器の性能が、一発でこの世界を滅ぼしてしまう時点だそうよ。」


「・・・・・・。」


「そこで初めて、武器を使用できず、戦いができなくなり、

()()()()で、物事を解決する努力するようになると。」


わたしの契約妖精リーエも超絶の魔力を持っているけど、

この世界を瞬時に消し去ることはできないだろう。


じゃ、ラティスやラファイアは?


無理のような気がする・・・。


つまり、今、現在は、戦争を失くすことはできないということか・・・。









第237部分をお読みいただき、ありがとうございました。

なんとか時間内に、本部分も、書きあげることが出来ました。


今まではは、日曜日の午前中に投稿してますが、

投稿時間を、土曜日の夜間も加えて、投稿していきたいと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ