ⅭCⅩⅩⅩⅦ 星々の紅焔と黒点編 後編(4)
第1章。立ちくらみ(1)
第2章。立ちくらみ(2)
第1章。立ちくらみ(1)
二つの月が、驟雨が闇夜で 霧舞うような光を、
大地の上に、降り注がせている。
そんな夜、ふたつの超絶な魔力を存在が、月光を背に、佇んでいる。
・・・・・・・・
≪おそいわよ、ラファイア!≫
ラティスさんから、怒りの精神波が、わたしに浴びせられます。
いつものことですが、どうして、この妖精は、
こう、わがままなんですかね。
そう、わたしは、イルムさんとルリさんの夜のお仕事が終わる時間を見透かして、
そのちょうどの時間に、南宮の執政官室に、瞬間移動をして、
ルリさんに香茶のご相伴を、お願いして、香茶の世界に浸っていたんです。
そこに、あの精神波です。
思いっきり無視しようとも思いましたが、キンキン・ギーギーと、
うるさいったらありゃしません。
お互いに超絶した探知魔力を持ち合わせていますからね・・・。
逃げ出すわけにもいかずに・・・、ここに来たわけですが・・・。
あ、今度はラティスさん、なにか話出すようです・・・。
「リーエ。あんたの、わたしへの今回の注進は、非常に有意義なもの。」
ラティスの言葉に、リーエさんが、軽くポーズを決めています。
「コウニン王国とかいうやつらが、わたしと闘いたいとはね・・・。」
へ!? わたしは、重層的に幾重にも折りたたまれている、探知記録のなかから、
わたしの記憶として、ある場面を取り出します。
ん~、なにか盗聴・盗視している気分ですが、気にしないでいきましょう。
「なんで、人間はこう バカなの。お前らが束になっても、
わたしに敵うはずないじゃないの・・・!」
ラティスさん、そういう話ではなかったじゃないですか・・・。
<・・・我が国も、双月教国に対する貸が回収できるのであれば、
このように、戦争になるようなまねは、いたしません・・・。>
<・・・それに、最期通牒の形で、我が国から、
新帝国に公文書を出す準備は、すでに終了しております・・・。>
<・・・新帝国さまに、超絶級の妖精さまと、
超上級の妖精さまがいることは、 重々承知しておりますし、
近頃は、テムス・ミカル両大公国や、武国とさえ、
友誼を結んでおられるようで・・・。>
・・・ここからどう読み解けば、
ラティスさんとコウニン王国間の喧嘩になるんですかね!?
ほんと、ラティスさんは、病気ですね。
病膏肓に入るとは、ラティスさんのためにある言葉でしょうね・・・。
「そう、わたしは、ガキどもの教育を通して、ひとつの真理にたどりついたわ。
聞きたい、ラファイア!」
別に、聞きたいとも思いませんが・・・。
聞いてるように見える姿勢だけは、とっておきましょう。
「それは、生・涯・教・育よ!」
「ほぇ?」
わたしは、思わず奇妙な声を出してしまいました。
「わたしは気付いたわ。人間に大人の状態なんかないのよ、
リーエにラファイア。」
「あるのは、小さいガキか、大きいガキかの違いだけ。」
「だから、常に教育してやらないと、いけないのよ。」
「そのガキどもが、戦場なんて言っているところで、
このわたしがキッチリと、教育してやるわ!」
「これで、いくさなんて下らないものに、力を注ぐなんて、
バカの3乗のような事などせずに、故郷で子作りに励むんじゃないの!」
「そうすれば、妖精契約できる人間が増えて、妖精界の方も万々歳じゃない。」
あ~。倫理的には破綻してると思うんですが、
結果はそれでいい方に進みそうですね~。
ん、すきを見つけて、リーエさんが、逃げ出そうと企んでいますね。
目ざとく、わたしは見つけましたよ。
ハハハ、白光の妖精の魔力にかけて、あなただけ逃がすなんてことは、
させませんから。
【自由への逃亡】の挑戦は、またも頓挫させてあげましょう。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
・・・・・・
・・まだ、何かしゃべり続けてますよ、このお方は・・・。
わたしの笑顔が凍てついくのを、自分で感じてます、
そして、無意識に、わたしの右手に、攻撃の用意魔力が集中していき、
妖しく白金に輝きだすのが止まりません。
そろそろ、アホの4乗の御方の演説を、実力行使で止めさせないと、
ふたつの月が、山の端に沈んでいく時間になりそうです。
第2章。立ちくらみ(2)
「それじゃあね。セプティ、エリース。」
椅子から立ち上がったエレナが、軽く手を挙げて去ってゆく。
わたしたちは、いつものように、校内の休憩所で、
果実水を飲みながら、学友たちの下校の波が消えるのを待っている。
今日は用があるということで、キリナたちミカルの3義姉妹や、
ノエルやリア(ラファイス)も早々に人波に交じって消えていったわ。
「エリース。キリナさんの用って?」
セプティが尋ねてくる。
「たぶん、アストリアさんの墓標での語りかけじゃないかな。」
わたしは、音響と普通の障壁をはりながら、静かに答える。
「やはり、アストリアさんは・・・。」
「きびしいだろうね・・・。」
これは、戦士としての、ひとつの現実、ひとつの未来・・・。
たとえ、超絶した魔力を持つ妖精と契約したとしても、戦士としての生と死は、
それはあくまでも、相対的なものにすぎない。
「ふう~。」
わたしの口から、ため息が転がり出る。
「どうしたのエリース。ため息なんかついて・・・。」
「今、世界には、超絶の魔力を持つ妖精が複数名いるわ。
けど、戦争も争いも、無くなりはしないのねと思ってね・・・。」
セプティは、複雑そうな顔をして、わたしを見つめている。
「エリース。猊下から教えてもらったことがあるわ。」
「人間の歴史は、らせん状に上がっていくようなものだって・・・。」
「ある時点で物事の解決に、戦いを望み、戦いをして、そして反省して、
しばらくの平和の時期が訪れる。そして、また戦いを望む・・・。」
「らせん状に上がっていくというのは?」
「同じような時間が繰り返すんじゃなくて、使う武器の質・力だけが上がってゆく。」
「妖精たちが、いるいないに関わらずにね・・・。」
セプティの顔色が曇ってゆく・・・。
「猊下に言わせればある時点に達したら、戦争はできなくなるそうよ。」
「ある時点って?」
「武器の性能が、一発でこの世界を滅ぼしてしまう時点だそうよ。」
「・・・・・・。」
「そこで初めて、武器を使用できず、戦いができなくなり、
言葉のみで、物事を解決する努力するようになると。」
わたしの契約妖精リーエも超絶の魔力を持っているけど、
この世界を瞬時に消し去ることはできないだろう。
じゃ、ラティスやラファイアは?
無理のような気がする・・・。
つまり、今、現在は、戦争を失くすことはできないということか・・・。
第237部分をお読みいただき、ありがとうございました。
なんとか時間内に、本部分も、書きあげることが出来ました。
今まではは、日曜日の午前中に投稿してますが、
投稿時間を、土曜日の夜間も加えて、投稿していきたいと思っています。




