ⅭCⅩⅩⅪ 星々の紅焔と黒点編 中編(4)
第1章。ラファイスの覚悟
第2章。通学路にて
第1章。ラファイスの覚悟
白金の光が、光粒が、この体に収束してゆく。
リアの容姿に変化してゆくわたしに、ラティス・ラファイアの精神波が
よみがえり、それと同時に、
青色の閃光を拡大させ、すべての大氣そのものを、
一端氷色に塗り込め、7色の光を放ちながら、粒子を生み出し、
撒き散らした圧(力)波による突風で、烈霧を纏い、
長身・藍色の瞳・青色の髪・白雪色の肌、超絶美貌の
見知った水の頂点の妖精の顕現時の姿が、思い出される。
それに、どこか、心の片隅で、この状況を楽しむ自分がいる。
ラティス・ラファイアから受領した精神波と魔力映像を、時系列順に並べてみる。
≪わたしの名は、エルメルア。・・・水の極上級妖精・・・。≫
≪・・・。わたしたちは、誇り高い妖精で、かつ妖精界の頂点に位置するもの。≫
エルメルアとか言ったか、エメラルアに比べて、その魔力如何ほどのものか!?
≪そう、始原の刻、ほとんどの妖精は人間の家畜化に、同意した。≫
そのとおり。わたしのように、家畜化に無関心な妖精、
ラティスのように明確に反対の対場を鮮明にした妖精は、絶対少数派だった。
≪そこで反対したのは、あなたラティス。
そこのラファイアとの闘いを選んでもね。≫
あのラファイアが動いたのを聞いた時、いや、
ラティスとの闘いでふたりが行方知らずになった後だったか、
妖精界は、人間界に侵略を始めると、あの時は思ったものだ。
だが、超絶級同士の妖精の闘いの終局は、
おかしいことに、妖精界に、思考停止をもたらした。
≪あわせて、あの闘いから千年以上もたてば、あなたも 目を覚まして、
人間の家畜化に、同意してくれるかとも思ってね・・・・。≫
妖精たちも、わたしも、人間というものに期待したのだ。
いや、盲目的な信頼と、置き換えてもいい。
わたしたちとの契約、そう融合で、人間は妖魔からの恐怖から解放される。
だったら、結果として、人間の数は階段的に増加するだろう。
だが、それは極めてあまい目論見でしかなかった・・・。
≪けど話は違った、あなただけでもなく、白光の妖精ラファイア、
暗黒の妖精アピス、白光の妖精ラファイス、火の妖精ルービス、
わたしと同じエレメントのエメラルア。
この世界線に現れた極上級妖精のすべてが契約者の・・・、人間の存在に
魂をひかれて・・・認め出している・・・・。≫
ふふふ、これが妖精界への、裏切りでしかないのはわかっている。
わたしだけではなく、ラティス、ラファイア、アピス、ルービス、エメラルアも、
偶然というべきか、人間のなかでも、上澄みというべき契約者と、
出合ってしまった。
≪ククク、そのとおりね。あなた方の前に現れたのは、妖精界の将来のこと。≫
≪現在、ほとんどの妖精は、家畜化に同意している。
あなた方、一時代前の極上級妖精が、反対してもね・・・。≫
だったら、どうする、エルメルア。われわれ、旧時代の超絶級妖精を、
滅ぼすか!?
≪わたしは・・・、われわれは・・・、人間たちは、われわれと共生してくれて
平穏な暮らしていくものとばかり 思っていた。≫
そうだ。それはわたしも、単純にそうなるものと想っていた。
≪だが、金・土地・称号・つがい、そんなもののために、
人間は私たちが与える魔力を、争い・同族同志での殺し合いに使い始め・・。≫
そのとおり。わたしがアピスといた1000年前の人間界も、
今、現在の人間界もそれは変わらない・・・。
≪四百年がたち、妖精界に、わたしをはじめとして、各エレメントに、
新たな極上級妖精が現れている。≫
つまりは、水だけではなく、風・火・土・光・闇の、新時代の超絶級の妖精が、
今の妖精界に、存在すると考えても・・、いや、考えるべきか・・・。
≪わたしたち、異能の妖精はいい。この世界のエーテルを直接摂取できるからね。
だが、このままでは、大半の妖精は、消滅していく・・・。≫
『・・・・・・・・。』
≪だから、人間に魂を引かれた、古き極上級妖精のあなた方が、
われわれのやり方に逆らうなら、あなた方を実力で排除する!≫
できるか、おまえたちに・・・!
≪人間は統治しなければならない・・・。≫
できるのか、おまえたちに・・・!?
≪妖精たち・・・みんなのためにも、絶対失敗してはいけない。≫
≪ラティスにラファイア、近い将来、あなた方は、どの立場を選択する!?≫
わたしは、今はただ、ノエルが優しく逝ける世界を望むのみ。
・・・わたしのなかに、ラティスから映像として受け取った、
蒼色の瞳・青色の髪・白雪色の肌、超絶美貌の妖精、
エメラルアの全身が浮かぶ。
そう、もし、それを邪魔するという妖精が出てくるのなら、
わたしは、誰であろうと、決して許さない。
第2章。通学路にて
学院に向かう、坂道の脇には、常咲種の木々が優美な薄桃色の花をつけ、
片方の緩やかな崖には、木々が枝々に白い花をつけている。
わたしと4人が、アバウト学院の尖塔が見えるところにさしかかるころには、
紺系・赤系・黄系・青系・紅系・茶系の支給服に身を包んだ学院生、
初等部の子供たち、新帝国政府から命令された訓練生らで、
人通りが増えてきていた。
わたしも、久しぶりに、紺色の支給服を纏い、学院に向かっている。
わたしの前をノエル、その横に聴講生のリア(ラファイス)、それにセプティ、
セプティの警護役のエレナが、いつもの日々のように歩いている。
先日の旅のなかで、わたしは、ラファイスの禁呪を使用したが、
その姿を勝手に使用したラファイア同様、リア(ラファイス)から、
なんの文句も言ってこない。
わざわざ、こちらから、謝ることでもないが、
おそらくは、不問としてくれたのだと、都合のいい解釈をしている。
「エリース。ミカル・ウルブスの学院って、どうだったの?」
ノエルが振り向きざま、聞いてくる。
「いろんな人に会ったけど、学生会長ルティアさんという人がいて、
こちらでは、ほとんど見かけることのない白銀の髪をしているんだけど、
雰囲気がエレナに似ていて・・・。」
「わたしに!?だったら美人ね!」
エレナが話に加わってくる。
「エリース、そうなの?」
ノエルが、もう一度聞きなおしてくる。
「美人かと言われれば、美人ね。けど、そういう事じゃなくて、
わたしたちと、親しい友人になれるという意味だったんだけど・・・。」
「だったら、いつか。一緒に、行ってみたいね。」
セプティも話に加わってくる。
「そうね。けど、ルティアに来てもらうのはいいけど・・・。
今はまだ、訪問は止めた方がいいのかもしれないわ。」
「向こうの学院には、親・貴族至上主義者という差別主義のやつらが、
結構多いようで、その一部のやつらには、お仕置きをしたけど、
まだ収まりきってはいないわ。」
「お仕置きをね・・・!?」
エレナのその言葉には、
わたしの言葉が、超上級の妖精契約者として語っているという意味での
忌避感がない。ほんとうに、これはありがたい・・・。
ま、あきれたという感想は、十二分に感じるけど・・・。
「新帝国の柱石たる、イルム・ルリ・キョウショウも、
平民階級の出と言われても、間違いではないはず。
それでも、国として、新帝国は、まわっている。
なぜ、貴族の血筋というやつらが、必要なの?」
リア(ラファイス)も、話に加わってきたが、
言葉に疑問符という思いがのっている。
「やつらに言わせると、覚悟らしいわ、・・・覚悟・・・。
貴族は、物心つく頃から、国家のために死ぬ教育を、
その覚悟を植え付けられているらしいわよ。」
「だから、のほほ~んと、子供時代を送って来た、
わたしたち平民とは違う、ということらしいわ。」
「むろん、エリース。やり返したんでしょう。」
エレナの言葉に、わたしは、多少気分が低くなり
・・凶戦士とでも思っているのかしら・・
それでも、仕方なく口を開く。
「『・・語る正義、見せる正義、誇る正義、鮮しかな仁・・。』と、
言ってやったけどね。」
「ふふふ、さすがはエリース。容赦ないわね。」
ここにいる全員が、わたしの方をのぞき込む。
わたしは、おしとやかな女性のはずだけど・・・自称でしかないのかな・・・・。
坂の手前の車泊まりの空き地に、ミカル大公国の紋章をつけた鉄馬車が、
いつものように止まっており、わたしと3人の到着を待って、
レリウス大公の3義妹が降りてくる。
「「「おはよう。」」」
爽やかな言の音が、彼女たちの口々から交わされ、空に溶けていく。
「で、なにを話してたの?」
顔色が以前のように戻ったキリナがわたしたちに、話かけてくる。
「それはね、・・・・。」
そういうノエルの声が、やはり空に溶けていく。
第231部分をお読みいただき、ありがとうございました。
また全部分を通しでお読みいただいた方が複数いらっしゃるようで、
お礼申し上げます。
あわせて、ブックマークをいただき、ありがとうございました。
第1章の方は、違ったやり方の書き方で、書いてみました。
≪・・・・・≫の部分は、過去の映像の部分で、普通の部分は、
その魔力映像内の精神波に対するラファイスさんの感想です。
もっと平たく言えば、ラティスさんから送られた
(魔力)記録映像のパッケージを、ラファイスさんが解凍して、
時系列?で鑑賞、感想を言っているという感じですか・・・。
さすがに、第2章の方は、普通に書いています・・・。