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ⅩⅧ フェーリアイ(1)

第1章。アウト・ディスケ(学べ さもな)アウト・ディスケーデ(くば 去れ)

     (新アバウト学院 標語)


第無章。《インターミッション》

第1章。アウト・ディスケ(学べ さもな)アウト・ディスケーデ(くば 去れ)

     (新アバウト学院 標語)


 

 セプティが、フレイアさんを許した事で、私はアストリアさん・エレナさんと

5人でまた休憩室で、集えている。無論、もしセプティが3人と付き合うのを

拒否したら、私もそうするつもりだった。


だが、フレイアさんが『就学するのに、お金が必要だった。』と恥をかくのを

覚悟して正直に話たため、お金のために入学を辞退しようとしていた

セプティも、思うところがあったんだろう。


 フレイアさん達3人が、アマト義兄ィが、道徳上の大忌避(きひ)である、

『暗黒の妖精と契約』していると知っても、一瞬は躊躇(ちゅうちょ)したみたいだけど、

普通に付き合ってくれるというのは、本当に嬉しかった。


ま、学内を、自分ちの庭のように、超越した力の波動を拡散しながら、

颯爽(さっそう)と歩く、超絶美貌の人外を実際に目にすると、【殺戮(さつりく)の妖精】とは

思えないのが、理由かもしれないけど。


「魔力・妖精学、戦略学はわかるけど、あとの史学・統計学・経理学・法学は

必要と思う?」


常に思っている事を、みんなに問いかけてみた。


「ほとんどの学生は、自分が生き残ったあとの事を、考えているからね。」


とフレイアさんが答える。


「4科目は面白くないの、エリース?」


と、アストリアさんが、香茶を飲むのを止めて、質問してきた。


「いや、面白くて、楽しいけど。けど、この帝国でそれなりの地位を

得るには、戦場に出ないとならないわ。」


「出身階級による差別をなくした、ノープル大公国軍でも、初陣でも

生存確率は6割よ、私たちがどの大公国に所属しても、回される部署は

営業(最前線)中の営業、生存確率1割未満、所謂(いわゆる)墓所と呼ばれるところ。

なら、実技を重視して、9割以上にすべきだわ。」


「エリース、あなたの言う事は真理と思うわ。けど、教わる講義のすべてが

人を殺すためのものというのは、精神的にきついわ。」


と、エレナさんが微笑(ほほえ)みながら言う。


「それに、生き残ったあと必要なものを、受講しないというのは、

不吉と思わない。」


と、アストリアさんも同意し、フレイアさんも(うなず)いている。


「だからこの学院は、男女のお付き合いが、盛んなんですね。」


『わ!セプティが、強力な燃爆石をぶち込んできた。』


と、友の顔を驚いてみる。


「そういえば、アストリアもエレナも、複数対複数(コンパ二ス)にいったんだろう。

その後の、結果報告がないけど。」


「とてもパーニス(パン)を分け合うような、男はいなかったわ。

年下もいいかなと思ったけど、1回外の世界を見てるとダメね。

たよりなくて。」


「そうなんですね。」


えらく、セプティの食いつきが(すご)い。


「いい男に育てるというのも、出来る女の証明だろう?」


と、いつものように、フレイアがアストリアをからかう。


「それまで、命が持たないわよ。私は今が大切なの。」


「そういうあなたはどうなの、フレイア。」


「わたし!?わたしは男からのお誘いはないわ。むしろ女の子からのエピストゥラ(手紙)

や、お茶へのお誘いが多いわ、傷つけぬように断るのがしんどくて。」


「そんな事に気を(つか)うことはないと思います、フレイア姉さま。」


「そういえば、あなたはどうだったの?」


「最悪だったわ、姉さん。」


「どうしても人数が足りないからと頼まれたから行ったけど。」


「ネコをかぶっていたせいかしら、私だけが何回もダンスに誘われるし。」


「そのダンスも妙に体を密着させてくるし、手は腰より下に動かしてくるし

小声で『ふたりで抜けない』とか言ってくるしね。」


「ふたりきりだったら、消し炭にしてやりたいぐらいだったわ。」


「それに、他の女の子からは、〈空気読めよ〉と(にら)まれるしね。」


そら、エレナさんを誘ったら、周りは引き立て役にしかならないでしょう。

そうか、エレナさんが参加するという事を(えさ)にして、いい男を集めるつもりが、

逆に総取りされちゃったというわけね。


「そういえば、こういう本が(ひそ)かに、はやってるようよ。」


アストリアさんがサッコス(携帯バック)から、一冊の本を取り出す。


《心地よくデーウェルソーリウム(その手の宿)に誘う100の方法》


「「「「はあ~。」」」」


男って・・・・。そういえば義兄ィも裸の女性の絵本を持っていたよね。


「ま、これはこれとして、エリースはモテるんじゃない?」


フレイアさんがアストリアさんを(にら)みつけながら、話題を変えようとしている。

確かに、セプティの顔は真っ赤だしな。


「私と付き合うって事は、アレと身内になるかもしれないという事だし、

まずそんな奇特な、男はいないわ。」


と、遠方で、腕を振り回しながら闊歩(かっぽ)している、暗黒の妖精を軽く指差す。


「「「そうねぇ~。」」」


「私はラティスさんが身内になってもかまいわせんけど。」


「「「「え~~。」」」」


「いえ・・・ア アマトさんの事じゃなくて・・・、わ 私が男だったら、

エリースみたいな、魅力的な美人を射止めるためなら・・・という事で・・・」


「あ、予鈴が鳴りだした、ではここまでだね。」


と、フレイアさんが席を立つ。


「あくまでも、今日はね。」


と、アストリアさんがセプティにウィンクをして、立ち上がる。

エレナさんは、ニタニタしながら、無言でアストリアさんに続く。


「セプティ、行くわよ。」


耳まで真っ赤にしているセプティに、友として声をかける。

しかし、ひとりの女の子としては、


『負けないわよ、セプティ。』


と思ってしまう。我ながら複雑だ。


『は~あ~。』





第無章。《インターミッション》



妖精契約の説明



 妖精契約とは妖精と人間の同一化現象の事である。


妖精契約が締結されると同時に、超上級妖精以外の妖精は、非覚醒状態で、

契約者と同一化し、契約者の人間が死亡するまで、

己の存在維持の粒子であるエーテルを、

人間を通して吸収・貯蔵していく。


人間は、妖精を経由して、貯蔵されたエーテルを利用し、

魔力を使用する。

 だから、契約者が魔力を使いすぎると、魔力の素となる貯蔵された

エーテルを急激に消耗、妖精との同一化の維持は不可能になり、

契約者はよくて廃人、ほとんどは死亡する。


 ではなぜ、妖精と人間は契約をはじめたのか。

それは、時間を遡らなくてはならない。 


 千年より(はる)か昔、妖精界と人間界の世界を隔てる空間の壁が壊れた。

その結果妖精界から人間界へ天文学的量のエーテルが流れ出し、

妖精界におけるエーテルは激減した。


妖精界においても人間界においても、エーテルは古代より宇宙より

降り注いでいたが、壁の崩壊前の時点でも、使用者がいない分、

妖精界より人間界の方が、エーテル量が豊富であった。


 エーテルは重力的な性格を持つ粒子で、通過できる亜空間がある場合、

双方の世界に同じ濃さで、存在するのではない。

濃い方の世界に一方的に集まっていく。

つまり、妖精界は、空間の壁が壊れて以来、

常にエーテルの枯渇(こかつ)状態になったのだ。


 妖精たちは、その魔力で妖精の門を構築し、人間界にやってきたが、

人間界ではエーテルを直接吸収することができなかった。


 そして、やってきたのは、妖精だけではなかった。

妖魔という一群も、侵入してきた。

彼らも、エーテルを直接吸収はできなかったが、野生の本能で気付いた。

人間というエーテルを溜めた生き物を、

捕食・同一化する事によってエーテルを吸収できる事を。


その魔力によって、食物連鎖の頂点にたった妖魔は、ひたすら人間を捕食した。

人間は20人中19人が、妖魔の餌となり、絶滅するのは時間の問題だった。


 それを食い止めたのが、大賢者マーリンだった。

彼は人間でありながら、エーテルを利用し魔力を使用できる異能者だったのだ。

 【妖精契約】が見つかったのは、本当に偶然だった。

マーリンは、当初、妖精を妖魔の一形態と誤認、

人間界に来ていた妖精と戦闘状態に(おちい)った。

その戦いのさなか、マーリンと妖精との間に、意思の疎通が行われた。


 矛を収めたマーリンは数人の妖精と意思疎通をし、

妖精の能力・思念を読み解き、同一化できる魔法を発見。

妖精がその魔力を使用すると同時に、非覚醒状態になれば、

エーテルを妖精に供給できる人間であればだれでも、

同一化ができる事が証明された。


 それからは早かった。マーリンの仲介によって、

人間の代表と妖精の代表とで話し合いが行われ、

現在の形の妖精契約という同一化が始まった。

むろん、お互いに同一化をしなければ、その先に待ち受けてるのは<滅亡>。

選択の余地はなかった。


 妖精との契約後、魔力が使える人間が中心となり妖魔の掃討(そうとう)が行われ、

多数の妖魔が駆逐(くちく)された。

しかし、妖魔はその後も次々に人間界に侵入。

人間は妖精との契約を続行し、戦い続けることになる。


 なお妖魔で、人間が捕食できず飢えのため、わずかなエーテルを求めて、

肉食獣や肉食鳥を捕食したものは、思考を失い、ただ捕食し続けるだけの

魔獣や魔鳥と呼ばれるものに変化していった。


 『しかし、時代を経るにつれ、人間側の方で変化が起こった。

魔力を使用する主な相手が、妖魔・魔獣・魔鳥から()()になったのだ。

それに対して、妖精側は何も咎める事はなかった。』





 

第18部分をお読みいただき、ありがとうございます。



(作者からのお願い)


本作品も、令和3年12月末で、100部分まですすんでいます。

当初から勢いだけで、書き進んでいきましたが、だんだんそのエネルギーも

摩耗してきています。

こういう状態ですので、ブックマークをいただけると、励みになります。


作品を続ける、新たなエネルギーとなりますので、

本小説を、今後ものぞきにきてもいいよというのであれば

ブックマークの登録、よろしくお願いいたします。


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