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ⅭⅬⅩⅩⅧ 星々の天頂と天底編 後編(9)

第1章。彼らは去り、かれらは語る(1)

第2章。彼らは去り、かれらは語る(2)

第1章。彼らは去り、かれらは語る(1)



 結局、暗黒の妖精アピスと、暗黒の妖精ラティスの、(いさか)いが終わり?

影のように、スッ―と戻ってきたのが、深夜近くになったこと。


それに、ラファイアの、レティア王女への語りの際の思い入れが、

あまりに大きかったため、

自らの契約者のアマトへの、魔力のさじ加減の方を狂わせてしまい、

アマトが、ラファイアの世界から、ハッと起き上がったのも、夜になってしまい、


新帝国の使者としてのアマトたちが、ミカの街を出立したのは、

翌日の早朝になってしまった。


それとはべつに、ミーユをはじめ、武国の騎士の何人かから、

()()()()()()()の護衛への帯同の申し出があっていたので、

ラティスらによって新たにできた、

武国と旧教国への街道の確認に(おもむ)くことを条件に、

カウシム王太子は、(ゆる)しをだしている。


・・・・・・・


「よく、あのラティスが、ミーユらの帯同進行に同意したものだ。

なんせ、ユウイとやらの()()()、お小言が、多大になることを()けるために、

全力で帰還しなければ、ならないはずだが・・・。」


と、言いながらも、黒騎士コールス(アピス)は、なにかを思い出したのか、

含み笑いが止まらない。


「わたしも、あなたが、(くだ)けた話し方ができるとは、初めて知りました。

それにしても、きのうは、ラティスさんとお楽しみでしたね。」


武国の王太子は、書類に目を通しながら、コールス(アピス)に声をかける。


「白光の妖精ラファイアも、超絶級の妖精ではあるけど、あいつが相手では、

ここ千年の自分の魔力の進捗(しんちょく)は、(はか)れない。

やはり、同じ暗黒の妖精でなければね・・・。」


「で、義兄上もわたしもほっといて、手合わせに夢中だったと!」


レティアが、自分の契約妖精に、厳しい口調で、口を(はさ)む。

それを笑顔でかわし、コールス(アピス)は、なおも語る。


「あいつも、あいつで、相当にチャランポランで、ま、本質は冷酷な奴だが、

千年を超える異空間の中で、この世界で実体化する魔力を、

(みが)き上げていたのだから・・・、測定器の代りにはなろう。」


「そう、超絶のレベルにある妖精(もの)は、

互いに無関係・無関心にならざるを得ない。

そうしないと、あっちの世界では、たいへんなことになる。」


「しかしわたしは、妖精界の頂点の座を、この手に入れたいという(よこしま)な想いを、

捨てきれていないらしい。」


「だがら、レティアのいう、今回の手合わせでも、・・、やはり・・ね・・。」


そう言い終えながらも、コールスの笑顔に、不敵さが浮かぶ。

そして、コールス(アピス)は、レティアに、水を向ける。


「レティア。あの、()()()()の妖精のラファイアは、

何を語ったんだ?」


レティアは、コールス(アピス)をひと(にら)みしたあと、

義兄カウシム王太子に話し出す。


「そのまえに、義兄上。あの白光の妖精、ラファイアの話のなかで、

あの情けない容姿のアマトの義妹、たしかエリースとかいう名の・・、

・・その契約妖精は、おそらく超上級妖精だというのが、判明しました。


むろん、今、新帝国は人材の流入が、相次いでいますので、

彼女は、以前の報告どおり、最上級妖精の契約者で、

他に、超上級妖精とその契約者の参入が、あった可能性は捨てきれませんが。」


「そして、それ以上に、白光の妖精ラファイスが、新帝国内にいるのは、

確かのようです。」


「カウシムにレティア。白光の妖精ラファイスに関して言えば、

その推察は間違いない。」


コールス(アピス)が、他人事(ひとごと)のように、口を(はさ)む。


「アピス!あなたね~~!!」


コールス(アピス)のその態度に、レティア王女は、無意識に、腰の剣に

手をかけていた。


「レティア、さっき言ったように、

極上級の妖精たちは、よほどの争いにならん限り、

基本、お互いのことに、不干渉だ。」


「だから、この世界で、その存在を知ったとしても、

その妖精が、【わたしはいる。】というのを、あからさまにしていないのなら、

その存在を、人間に話すことはしない。」


「たとえ相手が、わたしと1000年前、滅し合いの戦いを繰り広げた、

あのラファイスでもね。」


「では、ほかにも、この世界に、極上級の妖精さんがいると?」


カウシム王太子は、顔色ひとつ変えることなく、自分の契約妖精アピスに、

問いかける。


「さてね。」


短く、しかし誠実に、コールス(アピス)は、返事を行う。

怒りが収まらず、何かを叫びたいような義妹を手で制し、カウシム王太子は、


「レティア。その前に、あの白光の妖精さんが、あなたに話したことを、

教えてくれませんか?」


と、やさしく、問いかけた。



第2章。彼らは去り、かれらは語る(2)



 「・・・そういう事でしたか。だったら、わたしたちもオフトレさんのように、

恨みと怒りの(ふち)から、その狂気の深淵(しんえん)に、

心を()とさないようにしないと、いけませんね。」


義妹の話が終わったあと、カウシム王太子はそのような感想をもらした。

しかし、コールス(アピス)の無関心とみせるような表情をチラ見し、

その心中を察し、話題を変える。


「レティア、それにしても、まいりました。

アマトくんの提案、わたしたちの戦後の仕置きの素案と、

基本一緒でしたね・・。」


「まさか、義兄上は、あの情けない容姿の若者が、新帝国の女狐(イルム執政官)なみの

思考力を持っていると、考えているのではないでしょうね?」


「レティア、()()()なみとは、言わないのですか?」


「とんでもない。わたしも武人の(はし)くれとして、女狐の対帝国本領の戦略を

自分なりに読み解いてみました。

しかし、今回の義兄上の戦略と比較すると、数段劣るかと思われます。」


カウシム王太子は、義妹のレティアにしか見せない、優しい表情となり、

自分の考えを、ゆっくりと話し出す。


「レティア。当時、イルム執政官は、正規の軍師でもありませんでした。

彼女の考えた作戦のすべてが、採用されていたとは、限りません。」


「では、レオヤヌス大公が、最適解を選択しなかった可能性もあると・・・。」


「武人として読み解くのであれば、レオヤヌス大公が英傑(えいけつ)であるという評価、

これに(まど)わされることなく、そのへんは忖度(そんたく)をした方が、

いいでしょうね。」


「・・・・・・。」


口をつぐんだ、レティア王女を温かい目で見守りながら、

カウシム王太子は、先程の話へと戻ってゆく。


「才能のある人間を育てるに、最良の方法は、一流の人物のもとで、

その人物に教えを()えという、至言があります。」


「あのアマトくんの(まわ)りの人物、イルム執政官はともかく、

出自はわかりませんが、諜報部門を担当していると言われるルリ副執政官、

旧創派出身のキョウショウ将軍。

それらの人物と、同じ屋根の下に住んでいるそうですね・・・。」


「義兄上は、あの情けない容姿の若者が、常に(みが)かれていると・・・。

いえ、(みが)かれるに足る人物だと・・・?」


静かに、愛義妹を見つめる武国の王太子。

少し悩んだ口元から、次の言葉が、語られる。


「レティア。あのアマトくんの才能は、何だと思いますか?」


「人に(ひい)でる才など、わたしには感じられませんでしたが。」


「そうですか。では、わたしの推量をお話しましょう。」


「アマトくんの才能は、超一流といわれる人間が、

アマトくん(このひと)と話してみたいと、思わせることです。

たとえ、本人の容姿を見たとしても。」


「義兄上、それを才能と、おっしゃるんですか!?」


「レティア。あなたもアマトくんに、敵意や殺意など向けてるじゃありませんか。

敵意にしても、殺意にしても、好意という感情の表と裏。

容易(たやす)く逆転するものです。

その、好意や敵意の反対の言葉は無関心と、わたしは思います。」


自惚(うぬぼ)れて言わせていただけるのなら、わたしも、そのアマトくんの才能に、

(から)めとられているんです。レティア、あなたもね。」


「・・・・・・・・。」


「イルム執政官ら、新帝国の人物は当然としても、モクシ教皇猊下(げいか)

おそらく、ミカルのレリウス大公(餓狼)、テムスのファウス妃(女虎)も、

アマトくんと、親しく話をしていると思いますよ。」


「カウシム、人間だけではないぞ、妖精もだ。

わたしが、言える範囲だけでも、ラティス・ラファイア・ラファイス・

それにわたし、アピス。」


それまで、沈黙を守っていたコールス(アピス)も、言葉を入れてくる。


「レティア。もし、アマトくんが、予告された帝王だとすれば、

それを創りあげるのは、この世界の一流の人間たちと、超絶級の妖精たちに、

なりますね・・・。」


そう語った、カウシム王太子は、いつもの表情とは違い、

(かた)くある一点を(にら)んでいた。








第178部分をお読みいただき、ありがとうございました。

また、全部分を通読された方が、いらっしゃるようで、

あわせて、お礼申し上げます。


やっと、星々の天頂と天底編が終了しました。

それに約70万文字を使用したところで、

アマトくんの、特殊な能力を、書くことができました。

ホント長かったです。


【おわび】

172部分の第2章後半で、

クレイ卿と書くべきところを、コールス卿と書いてた部分がありました。

お詫び申し上げます。(訂正済みです。)


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