ⅭⅬ 星々の象意と進行編 後編(3)
第1章。エリースのとある一日(3)
第1章。エリースのとある一日(3)
≪ラファイア。こっちの本は、著者順に並べたので、分身体に棚に並べさせて。≫
暗黒の妖精が、大広間の3割方を占め、山積みになっていた書物を、
大広間の残りの部分に、魔力で著者毎に、分け終えたらしい、
精神波で、叫んでいる。
さすがに器用なものねと、わたしは思う。
ただ、ラファイアとその分身体たちが、あちこちと飛び回り、なんか煩わしい。
だいたい、自分の契約者の、アマト義理兄ィの手伝いなんだから、
なんでふたりとも、快く引き受けないかな。
あの後、朝の香茶の時間に、ユウイ義理姉ェから、
『ご機嫌ね、ラティスさん。学院がお休みで、お暇なら、
だったら、わたしの方のお手伝いを、頼もうかしら。』って、言われただけで、
青くなって、こっちを手伝いにくると宣言したよね。
ほんと、信じられない。
日頃、〖わたしは、ふたつの世界を超え、暗黒を支配する者!〗と、
宣う姿、あれはなんだっていうのよ。
ラファイアも、ラファイアよ。コイントスで勝ったとしても、
教都で確保した書物類は、自分の魔法箱?魔力箱?の中にあるんじゃ、
絶対手伝いをしなくちゃ、ならなくなるでしょうが・・・。
ホント妖精の考えは、分からないわ。
ま、互いにじゃれ合っている分には、平和でいいんだけど。
双月教国からの離脱者で、新双月教会に教会内の職を頼ってきた人々も、
禁書館への案内をし、アマト義理兄ィが副館長だという事実を知ると、
全員が断るらしいわ。
眼の前の、この暗黒の妖精の契約者だしね。
だから、教会の方の運営が上手く進みだしたのに対して、
禁書館の開館の準備の方は、全く進まない。
だから今、わたしとセプティ、それに臨時館長を兼務する予定のヨスヤ教導士が、
筆者の名前毎に分けてある記載帳に、書名を書き入れている。
記載帳は、後日、教会、いえカシノの方で、活版印刷にかけ、複数製本し、
禁書館の保管の助けにするとの、段取りになっている。
手を動かしながら、昨夜の夢について、思いかえす・・・。
あんな夢をみた理由は、もうあれしかないわね。
先日、学友のキリナから、『婚約が決まった。』との、告白があったから。
ご婚約相手は、なんと、ミカル大公国の柱石たるトリハ宰相。
ひとまわり以上、年齢が違うけど、セリナもミリナも、
違和感なく喜んでいたから、ミカルでは普通に、年の差婚はあることなの?
とも思ったんだけど、どうもそういうことはないみたい。
三人とも、ミカル大公レリウスの義妹という生まれがあったので、
ミカル、いえ義理の兄レリウスのために、どんな男にでも嫁ぐ覚悟は
あったみたいね。
まあ、年齢云々など言わなければ、トリハさんは、
レリウス大公救出の警護のときに、お話をしたけれど、
小娘のわたしなんかに、自然に礼を尽くすことができるなんて、
ほんと、押さえるべきところがわかる、いい人だと思うわ。
レリウス大公同様、歴史に名を残して当然の人物だしね。
セリナやミリナによると、イルムに直談判した際、
三人の中心になって赴いた行動力が、
レリウス大公の母君であるミリア妃を、いたく感心、感嘆させたらしい。
それで、レリウス大公に御答申があったのが、そのきっかけだそう。
ただ、あのレリウス大公のことだから、
自分の結婚へ追及の矛先をかわすために、
御母君に対し、慇懃にもみえる態度をとって、
うまくキリナを、トリハさんに押し付け、
その話題から逃れたのかもしれないけど。
わたしが、『トリハさんが、キリナを泣かすことをしたら、わたしに言って。
いつでも、意見しに行ってあげるから。』と言ったら、
『エリース、それは止めて。あなたとリーエさんが、超高速で飛来したら、
新帝国とミカル大公国の、戦争になりそうだから・・・。』
もうなんだって言うのよ、ほんと失礼しちゃうわ。
これは、絶対リーエが悪い。
わたしが自分で言うのもなんだけど、清楚な美少女の心象が、ズタズタね。
ま、いいけどね。
そう言えば、きのうの朝、ラファイアが、夜の街から持ってきた、
【最新、新帝国、怒らせてはいけない順位表!】って、あれ何よ。
「エリースさん、順位外から、一気に3位ですよ!」
と、ラファイアにお祝いされたけど、嬉しくもないわ。
ま、ミカル公国の公都の門のところでしたあれこれが、
情報として、皇都の裏の世界に伝わっているということね。
わたしが、超上級妖精の契約者であるのを隠しているのが、
むずかしくなってきたのかもね。
それにしても、イルム執政官とモクシ教皇猊下が、同率5位で、
今、椅子の上で、ふんぞり返っているラティスが、なぜか2位。
ユウイ義理姉ェが、堂々の1位!?
アマト義理兄ィは、順位つけられずか・・・。
新帝国のいろんな人たちが、わたしたちの力関係を・・・、
日頃の行動を、間違いなく注目しているのよね・・・。
リーエのつくった優しい光が、禁書館で筆をすすめるエリースたちの
手元を照らしている。
心のなかでは、いろいろと考えを飛ばしていた、エリースだったが、
静かに本を書き写す姿は、清楚で凛とした美少女であった。
他のだれかが何という言おうと、清楚で凛とした美少女だった。
第150部分をお読みいただき、ありがとうございます。
150部分を迎えまして、
あらためて、第1部分から、お読みいただいている方々にも、
お礼申し上げます。
作品の方ですが、作者のなかで、話が転がり出さず、
今回は短めです。
ふたりの超上級妖精と契約者の話、皇都と教都との街道の護衛の話など、
きっかけはあるんですが、どうも違うような気がして・・。




