ⅭⅩⅬⅠ 星々の象意と進行編 前編(7)
第1章。妖精たちの会合
第1章。妖精たちの会合
ふたつの月が、その鋭利な光を、天空に 大地に 投げかけている。
その冷え冷えとした大気のなか、よにんの妖精が空中に浮かんでいる。
多少お怒りの表情のラティス、ほんとめんどくさいとの表情のラファイス、
ふたりの妖精のぶつかり合いの予感に、ワクワク表情のラファイア、
リーエだけは、⦅早よ終わらんかな⦆のポーズで、個性を出している。
≪ラファイス。どういうつもりよ。ナナリスのなかに寝ている状態の妖精を、
気合いを注入して、目覚めさせるなんて。
この世界の歴史の流れが、またひとつ複雑怪奇に、なったじゃない。≫
≪だいたいね!妖精界は、
あんたみたいな、融通の利かない、小金をせっせと貯めこんでは、
ニヤニヤしてるような、妖精だけじゃないのよ。≫
≪ラファイアなんて、妖精みな兄弟なんて容貌のくせに、ゆだんしたら
致死の一撃を浴びせてくる、なんちゃって天の使いもどきの、
そのじつ、もろ狂戦士じゃない。≫
≪ラティスさん。そんな、ほめてもらっても。≫
なぜか、ラファイアは照れている。
≪ほ、ほめてなんか、いないわよ!≫
≪いや、ラファイアにおいては、十分に、ほめてると思うわ。≫
≪あんたたち、白光の妖精の感覚は、いったいどうなっているのよ!?
感覚与件に対する反応が、ねじ曲がっているんじゃない!!≫
≪白光の妖精っていうのは張りぼてで、正体は発酵の妖精じゃないの!!≫
≪≪発酵の妖精!!!≫≫
ふたりの妖精の瞳に、赤く光が、いとを引く。
≪やはり、あの時、おちゃらけ妖精のラファイアにまかせず、
わたしが行くべきだったか。≫
怒りの背光を輝かせながら、ラファイスの全身に7色の光粒が、
踊り狂う。
≪今からでも、遅くはないわよ、ラファイス!≫
ラティスの精神波に好戦的な色彩が弾き合う。
≪≪ん!?≫≫
あのラファイアが、ここで絡んでこないことに、ふたりの妖精は、
構えを解き、もうひとりの白光の妖精を、ジト見しようとしたが、
その姿はない。リーエの姿も・・・。
・・・・・・・・
「リーエさん。いくら極上級・・伝説・・と言われても、あれはいけません。
すぐに、魔力に訴えようとするなんて。
誇りある妖精として、あそこまで堕ちたくないですよね・・・。」
ラファイアとリーエは、空中に極小さな結界を幾重にもはり、
ラファイアは、非常に上からの目線で、リーエ相手にぼやいている。
今夜の警戒行動の機会を奪われたことでリーエも、
首を大きく振り同意している。
「しかし、おかしいですね。そろそろ、爆音か閃光が感じられはずですが!?」
ふたりは、そ~っと、結界の一部を解除し、耳を澄まして音を聴き、
結界を消去したところから、顔を上げる。
そこに、なにもない空間から妖精の声が響く。
「アンタら、なにふたりで逃げ込んで、他妖精のふりしてんのよ。」
「ラファイア、おまえが張れる結界は、当然わたしに察知できると、
考えなかったのか?」
空間の一部が崩壊していき、闇と光、ふたりの妖精が現れる・・・。
・・・・・・・
ふたつの月が、その鋭利な光を、天空に 大地に 投げかけている。
冷え冷えとした大気のなか、よにんの妖精が空中で見合っている。
「どうしてとんずらしようとしたのよ、ラファイアそしてリーエ。
最初からやり直しじゃないの!」
ふたりとも、ブーたれた表情で、仕方なく宙に浮んでいる。
「で、ラファイス。なんで、ナナリスの妖精を目覚めさせたのよ?」
「目覚めさせてはいない、だがそのキッカケは、打ち込んだけどね。」
「あの娘は、自死を覚悟していた。
今現在は、その刃をアマトたちに向けることは止めてると、
本人は言っていたけどね。」
「けど、死を覚悟して、一太刀を放つ人間の凄さは、
エメラルアの魔力を借りたとはいえ、ふたりの伝説級の妖精の結界を
超えたわよね。」
「「・・・・・・。」」
「ナナリスには、そのレウスに匹敵する剛さを感じた。
だが惜しむらくは、アマトたちを仇だという思いに、凝り固まっていた。」
「あの娘の契約妖精が、最上級なのか超上級なのかは、知ろうとも思わないわ。
だが、あの娘だったら、大き過ぎる力を持っている事の気づきが、
自分の心の檻を壊してくれるでしょうね。」
「ラファイスさん、野暮なことを、お聞きしますけど、
ナナリスさんの刃が、アマトさんの喉元に、迫ったときは?」
その時、ラファイアの笑顔も、言葉の口調も、魔力の放出も、一切変わらない。
だが、横にいたリーエは、驚いたように空間を跳び下がり、
緑金の背光を全方位に放出し、ラファイアに対して、臨戦態勢で向き合う。
「その時は、ラファイア、この白光の妖精ラファイスが、手にかけるわ!!」
そう言うラファイスも、納得した表情を浮かべたラティスも、
リーエと違い、わずかでさえ、その浮いている場所から動いていない。
「まあ、高い確率で、新帝国に、新たな戦士を迎えることになるわね。」
そのラティスの言葉が宙に響いた瞬間、さんにんの極上級妖精の姿はかき消える。
ひとり残されたリーエも、⦅まあ仕方ありませんね⦆のポーズを完璧に決めて、
後を追って消えていった。
第141部分をお読みいただき、ありがとうございます。
全部分をお読みいただいた方がいらっしゃるようで、
お礼申し上げます。
この部分の前半で妖精さんたちは、≪精神波≫で会話してます。
そして後半は、「音声」で会話してます。
なぜか?ラファイアとリーエとの距離を詰めて、
また、トンズラされないようにです・・・。




