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アヤカシ探偵物語  作者: イサシ
第3章 人狼事件
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第十五話 全ての始まりは何の為に?

こんばんわ!!本日は2話投稿です!!

28


 キングの最期を見届けた後、何をしたかといえば、寝た。

 思いっきり。それこそ1日どころではなく3日まるまる使った壮大な睡眠である。

 目が覚めたら、日めくりカレンダーが3枚めくれていたので何事かと思ったものだ。

 探偵が言うにはキングが消えた途端、俺もほぼ同時に倒れたらしい。そこから、探偵と呼ばれた泉さんが探偵の家まで運んできてくれたのだという。


「死にすぎだよ。いくら身体が治ったて、精神までは癒えないぜ」

 探偵はその眠りの原因についてそう言った。

 キングとの戦闘でヤスリのようなもので、少しづつ、だが確実に俺の心は削られていった。

 痛み、恐怖、それらを押さえつけるのにも限度がある。

 緊張の糸が切れた瞬間、それがドッと濁流のように押し寄せてきたのだ。その濁流により意識が飛び、その回復に3日を費やしたというわけだ。


「.....」

 俺が人狼になってから10日が経過した。長いんだか短いんだかよくわからないが、少なくとも人生の中で最も濃い10日になることだけは確かだろう。これだけ滅茶苦茶な事が一人の人間の一生でそう何度もあるとは思えない。

 思えば、最初は早く人間に戻りたい。それだけだった。自分のためだけに大神を殺そうとしていた。

 それがテンタコルと戦い、スナイプと戦い、そして、キングと戦い、彼らの為に大神を殺すという風に変わっていった。彼らが託してくれた願いを受け継ぎ、そして達成する。それが使命だと。そう思ったのだ。


 だが.....


「君はヒーローか何かかい?」

 

 目が覚めたその日の夜、道場にやってきた探偵と話していた時、その思いを探偵に話した。すると、探偵はそう言ったのだった。


「え?何だよ突然?」

「いや、余りに君が気を張りすぎてるからさ」

「気を張るって....」


 それはそうだろう。大神との戦闘が控えているんだから。そう言おうとしたら、探偵が俺が思った事をそのまま口にした。彼は底意地の悪い笑顔を浮かべ、瓶に入った酒をそのまま煽った。


「使命。格好いいね。僕も言ってみたいよ」

「どういう意味だよ」

 探偵のバカにしたような口調に思わず語気が強まる。探偵は一体、どういうつもりなのか。彼だって言っていたではないか。俺に託してくれた者を考えろと。


「ああ、ごめん。別に使命に燃える事は何も間違いじゃないよ。僕だってキング達の意思はぜひ受け継いで欲しいさ」

「じゃあ、どういうつもりなんだよ....?」

「...君、人間に戻るんだぜ?それなのに君はまるでヒーローみたいじゃないか」

「別にヒーローだなんて、そんなつもりは...」

「いいや。君、優先しているだろう?自分が人間に戻る事よりもキング達の願いを叶える事を」

「......!!」


 何も言い返す事ができない。本当の事だったからだ。気がつけば俺は自分が人間に戻る事よりも大神を殺し、キング達の願いを叶える事を優先していた。だが、それの何が悪いのか。俺が人間に戻る事もキング達の願いを叶える事は何も矛盾していない。どちらも大神を殺す事で達成できる願いだからだ。


「...確かにそうかもしれない。でも、何も問題ないだろ?結局、大神を殺そうとしているのにはかわりないんだから」

「いや、あるよ。大いにある。だって、それ結局は他人に縋ってるだけじゃないか。他人の為にと思わなければ戦う勇気が出ない。他人の為じゃないと、力を振るえない。それじゃ利己主義の権化みたいな大神には勝てないよ。良かったね。一番最初に戦った相手が優しいテンタコルで。もし、他の三人と戦っていれば君は痛みと恐怖で、途中でリタイアしていただろうよ」


 テンタコルは元が人間である俺を殺すのを躊躇い、そして自ら降参した。その気持ちに感化され俺は戦う事を誓ったのだった。もし、一番最初に戦った相手がキングだったら、俺は3日前みたいに戦えていただろうか。何千もの死を乗り越える事ができただろうか。自分が人間に戻るという事だけのために、俺は戦えていただろうか.....

 

「....だから確かめてきたらどうだい。君が人間に戻りたい理由を」

「人間に戻りたい理由....」

「ああ、どうして君は人間に戻りたいんだい?はっきりいって人狼の方が人間より優れた生き物だよ。ただ生きるという意味だけで考えればね」


 そうだ。今の俺は人間を遥かに超えた力を持ち、ほとんど不死身に近い身体を備えている。

 それなのに何故、俺は人間に戻りたいと思った。何故、大神に殺されかけた夜、生きたいと思った。


「探偵、大神との戦いの日ってもう決まっているのか?」

「いいや、まだだよ。結界でこの屋敷は隠してるからね。奴はこちらがどこにいるかわからないさ」

「じゃあ、明日でいいよ。明日の夜、けりをつけよう」

「いいのかい?」

「ああ、でも、明日の昼間外出させてくれ。行きたいところがある」

「構わないよ。どこにでも行ってきな」

 探偵は俺の意図を察したのか、ニヤリと笑う。彼からすれば俺はさぞ扱いやすい事だろう。彼はどこからかコップを取り出し、それに酒を入れ俺の前に置く。

「よし、今日は決起会だ!飲みたまえ!」

「いや、俺未成年なんだけど」

「関係あるか。飲め!!」

「....ったく。仕方ないな....」


 恩人の酒は断れない。探偵は俺の恩人だ。彼には一生分の借りがある。山中でキング達に殺されかけた時も、彼らとの戦いの段取りを組んでくれた時も、能力の使い方に困った時も、俺が道を外しかけた時も、いつも彼は俺を助けてくれた。

 だから、彼は恩人だ。人間に戻ったとしても、彼に何かあればすぐにでも助けにいこう。

 だけど、何故彼はここまで俺を気にかけてくれるのだろう。

 大神の眷属だからか?それにしたって、余りに世話焼きだ。


「なあ、何でここまで助けてくれるんだ?」

 初めての酒で高揚したのか、思わずその疑問を口に出してしまう。酒とは恐ろしいものである。今後は控えるべきかもしれない。失敗したと思い、恐る恐る探偵の方を見る。

 すると探偵はニヤリと不敵に笑顔を浮かべつつも、どこか気恥ずかしそうにそっぽを向きながらこう言ったのだった。


「困ってる人間が目の前にいるんだ、助けない理由がないだろう?」

 










読んで頂きありがとうございます!!

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