第十一話 全ての始まりは人造、それ故の破綻
おはようございます!!本日は2話投稿です。
フレ/ンダ
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最初に攻撃を仕掛けたのはキングだった。巨体に似合わぬスピードで手に持った十字架をこちらに叩きつけてくる。
「フッ!!」それをバックステップで辛うじて避ける。スナイプの『呪い』の能力がなければ、避けることはできなかっただろう。
十字架が地面に衝突すると、まるで隕石でも落ちたんじゃないかと思うような衝撃波が広場を席巻した。
それに吹き飛ばされないように、尻尾を地面に突き立て、腕で顔をかばう。
(一発でこの威力かよ....!!!!)
テンタコルが彼を災害に例えるのも納得だ。彼と街中で戦っていれば、間違いなく10分で街が崩壊していただろう。
「脚を止めるとは愚かな」すぐ横から声をかけられる。それに気がついた時にはもう遅い。トラックにでも轢かれたのではないかというような衝撃が身体を突き抜け、俺の身体はなす術もなく吹き飛んでいく。
「ゴホッ!!!!」
横腹を殴られたと気づいたのは、地面を10m以上転がり漸く止まってからだった。潰れた筋肉や折れた骨は再生しているだろうが、ズキズキとした痛みが身体を鈍らせる。だが、動きを止めては先ほどの二の舞だ。すぐに前を見て、相手の様子を伺い直ぐに違和感に気づく。
ないのだ。巨大な十字架が。
(どこに....!?)
すぐに周囲を見渡す。四方にはない。ならば上か、と見上げると今まさに巨大な十字架がこちら目掛けて飛来してきていた。
それを避けずに空気を吐くことで、撃ち落とす。だがそれがキングの狙いだった。猛スピードでこちらに突っ込んできた彼は途中で速度を落とした十字架を空中でキャッチし、そのまま片手で振り下ろした。
ガードしている暇もなくその一撃が直撃する。
「........!!!!!」
叫び声すらでない。身体を一瞬で潰されたのだから当然だ。だが、それでも死なないから恐ろしい。
直ぐに血が身体を再生し元の身体へと戻る。
が、再生した瞬間、今度はキングに胴を掴まれる。
万力のように胴が潰される。内側の内臓部がぐちゃぐちゃになるのが感じられた。
堪らず、尻尾を矢のようにして彼に突き立てると、それを避けるためにキングは握ったままの俺をまるで野球ボールのように投げ飛ばした。
目の前の景色がグルグル回る。脳がシェイクされ、余りの気持ち悪さに胃の中身を吐き出す。
だが、こちらが吐瀉物を撒き散らしていたとしても、キングは追撃の手を緩めない。直ぐにこちらに追いつき、その像のような脚で俺を蹴り上げる。
一瞬の浮遊感、そして、直ぐに迫り来る圧倒的なまでの圧迫感。
月をシルエットにキングは飛び上がり、めい一杯、十字架を振りかぶる。
ゆったりとした動きだ。だが、先ほどからの連撃に加えて、空中では思うような身動きがとれない。
結果、隕石と紛うかのような一撃を身体に受ける。
腕が潰れた。
脚が潰れた。
腹が潰れた。
頭が潰れた。
それでも、まだ生きていた。
血が死ぬ事を拒絶する。潰された端から凄まじい速さで再生されていく。頭が潰れた事で一瞬、視界が黒く染まるが直ぐに視界は回復する。
それをキングは待ち構えたかのように足で踏みつけてくる。
「クソッッ!!」
何度も食らう訳にはいかないので、それをすんでのところで横に転がり回避する。
再生する相手との戦いに慣れきっている動きだ。
こちらが回復した瞬間に殺し直せるよう、次の動きへの移行が早すぎる。
「どうした、こんなものか」だが、キングは一度動きを止め、失望したような目を向ける。「この程度で、大神に勝てると?」
「....」
キングは強い。彼に勝てる者など、片手で数えられるくらいだろう。探偵やテンタコルが言うには大神よりも強いらしい。そして、その伝聞は現に戦ったことで確信へと変わった。
キングは大神を倒せた。これだけ強ければ、殺せずとも幾らでも、奴を打倒する術があっただろう。だが、彼はおよそ300年間、それを実行しようとしなかった。
「その程度なら諦めろ。後は引き続き俺がやる」キングが十字架を再び構える。巨大な影が俺を覆い隠す。
「....できるのかよ?」だが、その影を打ち破るように彼に問う。
「何.....?」
「300年間、殺せなかったっていうのに、今更、大神を殺せるのかよ?....いや、違うか、あんたは殺せなかったんじゃない。殺さなかったんだ」
「どういう意味だ」
キングの表情が歪む。
「フランケンシュタイン博士の生み出した怪物。それがあんただ。そして、その願いは自分と同じ仲間を得ること。大神を殺すなんていう願いはどこからきたんだよ?」
「....教会からの指示だ」
「ああ、そうかもな。でも、それだけじゃないだろ。あんたの仲間達、テンタコル、スナイプ、リッパー、
大神を殺すためにあんたの元に集まった人たちの願いだろ?」
「....何が言いたい?」
「あんたの願いはもう叶っていたんだよ。自分と同じ伴侶を、仲間を。例え種は違くても、同じ志を持った仲間を。あんたはとっくに手に入れていたんだ。自分の本当の願いを」
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「お願い、キングを止めてください」テンタコルはその勝気な目を伏せ、俺に頭を下げた。「キングはもう、戦う理由なんてないのよ」
「どういう意味だ。戦う理由がないっていうのは?」
「....そのままの意味よ。彼の願いはもうとっくに叶っているもの」
「願いって大神を殺すことじゃないのか?」
「....彼はそう思っているわ」
「彼、は?」
「そ、は、よ。自分でそう思い込んでいるのよ。私たちの願いを自分の願いのものとして、思い続けているの」
フランケンシュタインの作り出した怪物。彼の願いは自分と同じ伴侶を得ること。小説ではそれが叶わなかった。では、現実はどうだったのだろうか。モデルとなった彼の願いは叶ったのだろうか。
「何百年か前、彼はハンター教会から大神討伐を命じられた。彼にとってそれは使命であって願いではなかった。彼は使命を果たそうとした。だけど、奴に再生能力がある以上、奴を殺す事はできなかった。
やがて、彼の元に私たちが集まってきた。スナイプ、リッパー、そして、私。彼の強さを知った私たちは彼となら大神を殺せると思って、キングとチームを組んだ」
でもね、それが間違いだった。テンタコルは後悔するように語る。かつての自分を貶すように、彼女は吐き捨てる。
「間違い?」
「間違いよ、本当に。私たちがキングの枷になってしまったの。キングは大神よりも強い。殺さずとも大神を止める方法なんていくらでもあったはず。でも、キングはそれをしなかった」
「....どうしてだよ?」
「キングの本当の願いは自分と同じ仲間を得る事。それは何も同じ種でないといけないわけではなかったのよ。同じ志を持つ仲間....まぁ、つまり私たちよ。彼の願いはもう叶っているのよ、皮肉にも大神を殺すという願いを持つという繋がりによってね」
「....なるほどね」探偵が葉巻を吹かし、深いため息をつく。「彼が大神を殺さなかったのはそういう事か」
「どういう事だよ?」
「無意識のうちに彼は恐れていたんだよ。漸く得た仲間を失う事にね。まぁ、ようは大神を殺してしまっては折角得た仲間を失う事になると思ったんだろうよ」
「バカよね....ホント。アタシたち、そんな薄情者に見えたのかした...」
辛そうな彼女は身体を抱くように身をかがめる。キングから貰ったドクロマークのTシャツを抱きしめるように見えた。
「あの人に戦う理由なんてないのよ....だから、もう休ませてあげて。そうじゃないと、彼はもう壊れてしまうわ。とっくにもう限界なのよ、心も身体も」
300年。彼は仲間を求め続け、そして手に入れた。だから恐れた。また一人になることを。大神を殺すことで、再び仲間が離れていく事を彼は恐怖した。
「大神を殺したって、アタシ達が離れていくわけないじゃない....」
「怪物である彼は誰よりも人間だった。孤独を恐れ、仲間を求め、気にする必要のない事まで心配し、他の誰よりも他人を気遣う。どうしようもなく彼は人間なんだよ」
人間。探偵はしきりにその言葉を使う。俺に境目を意識させるかのように。
君はまだ人間かい?そう言われているようだ。
昨日も考えた事だ。
人間とは何か?そんな問いに答えなんてないのだろう。
でも、これだけは確かだ。
キングは人間で、俺も人間だ。
それだけはわかった。
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孤独。いつ終わるかもわからない生の中、それは私の心を蝕んできた。
地面に転がる虫に群がる蟻のように。、心は黒く染まっていく。
その孤独を和らげる為か、私は勧められるままにハンターとなった。
ハンターになれば、いつか自分と同じモノに出会えると思ったからだ。
だが、そんなモノはいなかった。
私と同じ化け物なんて、存在するはずがなかった。
失望した。何もかも。
私が拳を振れば、胴が裂け、蹴りつければ、砕け散った。
『呪い』だって命がある。最初は多少抵抗もあった。
だが、殺戮はやがて、作業となり、日常となった。
意味があるのかもわからない日々。目標も目的もない百数十年。
それに慣れきっていく心と身体。
ゆっくりと壊れていく。ゆっくりと忘れていく。ゆっくりと自分がなくなっていく。
それを肌で感じ取る。このまま私は生きて行くのだろう。
唯々、絶望した。
そんなある日、珍しいモノに出会った。
「いや、強すぎだろ、お前」その肉塊はしゃべる。自分を亡き者にした者に対して。「化け物かよ」
「...なぜ生きている?」
「なぜって、そりゃ、不死身だからな」
その肉塊は元の形に戻りつつある。確か、人狼だったはずだ。一瞬で消し飛ばしたので忘れたが。
獣の唸り声と共に下品な声が満月の夜に響く。
「俺を殺したきゃ、マグマにでも叩き込みな。溶けては再生のサイクルはさすがの俺も死にたくなる」
不死身。目の前のモノはそう言った。私にはない能力だ。
もしかしたら、こいつは私と同じかもしれない。
そんな期待を込めて奴と戦い続けた。
流石に不死身とあって、奴との争いは長きに渡って続いた。
その間に気がつけば私はチームを組んでいた。
「目標、大神。協力要請」最初は軍服の少女。
「あんたがキングか、よろしくな!」次はキザな格好をした男。
「何よ...邪魔しないでくれる」最後は口を開けば毒を吐く女。
それぞれがそれぞれの願いや思いをもって大神を殺す為、私のもとに集まってきた。私の今までの人生で一度もなかったことだ。気がつけばただ教会からの指示はずだった大神討伐は彼らと同じ私の願いと化していた。私の元に集まった彼らの為に私は大神を殺す。
そのはずだった。
そのつもりだった。
それが本心のはずだった。
『300年間、殺せなかったっていうのに、今更、大神を殺せるのかよ?....いや、違うか、あんたは殺せなかったんじゃない。殺さなかったんだ』
だが、大神の血を持つ眷属の少年にそう言われた時、一瞬思考が停止した。まるで図星を突かれたように。
殺せなかったんじゃない、殺さなかった。
どういう意味だ。
どういう訳だ。
どうして、私の心は震える。
どうして、私の心はかき乱れる。まるで取り返しのつかない事を知ってしまったかのように。
殺さなかった?殺せなかったのではなく?
ある日大神と戦った時に言われた事を思い出した。
『お前、弱くなったな』
失望するかのようにあの人狼は心底深いため息をつき、俺の目の前から立ち去った。まるでおもちゃに興味がなくなった子供のように。
弱くなった。そんなはずはない。一人が四人になったのだ。強くなるに決まっている。
人間は守るものがあれば強くなると昔、本で読んだ。
なら、私は強くなったはずだ。
仲間を......得たのだから......
.....仲間を....得た?
私の願いは.....?
読んで頂きありがとうございました!!




