二話 忠告
二話です!読んで貰えるとありがたいです。
話と全く関係ありませんが、物語シリーズで一番好きなのは猫物語(黒)、(白)だったりします。
2
「それにしても、君のその体質も難儀なものだな」
神島が茶を啜りながら、茶化した風に言う。あの後、救急車が来る前に立ち去ろうという神島の提案に従い、現在、彼の家にお邪魔していた。彼の家はまるで大名でも住んでいるのかと思うほど、大きく、かつ、綺麗に
清掃されていて、荘厳かつ清廉な雰囲気を纏わせ、和風な家の少ないこの街において、名物と化していた。
「大きなお世話だ。でも、仕方なかったんだよ」
「わかっているよ、君が見えるくらいしか取り柄がないのに首を突っ込むお人好しだというのはね」
「うぐっ」痛いところを突かれて、声を詰まらせる。事実だけに何も言い返せないのが悔しい。
「まあ、だが、自分の身を顧みず、その女子高生を助けようとした勇気には賞賛を送ろう。技術はやっているうちに身につくものだが、心はどうにかなる問題ではないからね」
神島が珍しく褒める。どういう風の吹きまわしだろうか。
「そりゃ、どうも」普段、滅多に褒められないから、どうしたらいいかわからず、ぶっきらぼう返事してしまう。
「照れるなよ、気持ち悪い」
「う、うるさいな!慣れてないんだよ、褒められるの」
「この褒めて伸ばすが良しとされる時代においてかい?」
「スパルタだったんだよ、うちの家は」
「君の家が子供に矯正ギブスを強制する家庭だったとは驚きだ」
「巨人の星を目指した覚えはねぇよ!」我が家は巨人どころか野球すら誰も見ない。
「巨人の星は世代を超えて受け継がれるべき漫画だと思うけどね。花形が大リーグボール1号を骨折しながら、スタンドに叩き込んだときは感動したものだよ」
「それはそうだけど!確かに花形は元祖ライバルとして歴史に残ると思うけど!でも今は巨人の星の素晴らしさを語っている場合じゃないだろ!」
大量の大蛇を使役していたと思われる女子高生。それに噂の探偵。この街で一体なにが起きているのだろうか。疑問を口に出そうとする。だが、それは口に出かかったところで遮られた。
「君は首を突っ込むな」
神島の雰囲気が急に変わる。先ほどまで、気さくに話していたのに、一転して先ほど、路地裏で身に纏わせていた威圧的な雰囲気がこちらにのしかかる。
「どういうことだよ?」
「そのままの意味さ。今回は僕がたまたま近くを通りかかったから良かっただけで、本来、君は今日、間違いなく死んでいた。わかるだろう?君は関わるべきじゃない。今度こそ死ぬよ?」
「でも!?」
あの数の不良やチンピラをものの数分で片付けた人間がこの街、いや、自分たちが通う学校にいるのだ。そんな状況を放っておけるわけがなかった。
「いいかい?君は学生で僕は専門家だ。君はあくまで見ることしかできないんだ。それだけであれだけの惨事を起こした人間に太刀打ちできると思うかい?後のことは僕に任せて君は学生生活に戻りなさい」
神島はまるで教師のようにこちらを理路整然に言い聞かせようとする。彼の口調はこちらの頭に直接響いているかのようで、納得してしまいそうになる。頭ではそんなことはわかっていた。だが、納得はできない。このまま何もできないから、何もしないなんて、絶対に嫌だった。
「俺にできることは何かないか?」往生際悪く、神島にすがるように聞く。だが、彼はそんな俺をバッサリと切り捨てる。
「ないよ。この件に関して君ができることは何もない。だから、君はまず自分のすべきことをしなさい」
「すべきこと?」
「ああ、心配していたぜ?空ちゃん。君の様子がおかしいと慌てて電話かけてきたんだよ。感謝しなさい。彼女は君の命の恩人だ」
「そうだったのか・・・」妙にタイミングよく登場したものだから、おかしいとは思っていたが、俺が店を出た後、空がすぐに神島に連絡してくれたからだったのか・・・・・
「感謝しないとな」
「そうだよ、彼女、僕に借金してまで君を探してくれって言ったんだぜ?いい娘じゃないか。大事にしなよ」
「わかっているよ、そんなこと。・・・・・というか、やっぱり、金とったのか?」
「そりゃ、そうだろ。商売なんだから、当たり前さ。君の借金も膨らんでいく一方だから、早く返さないと大変なことになるよ」
神島が冗談めかして言う。だが、彼のその風貌からそういう風に言われるととても笑う気分にはなれなかった。夏休みに俺は神島に助けられた。だが、その報酬として、学生ではとても支払えない報酬を彼から請求された。それ以来、彼は何かにつけて、俺をいいように使うようになった。
「ま、彼女の借金は君に比べたら微々たるものだからね、彼女ならバイトでもしてすぐに返してくれるだろ。問題は君さ、いい加減にしないと、臓器の一つは覚悟してもらうよ?」
まずい。さっきのは冗談ではなく本気だったらしい。いつまでたっても返す目処の立たない俺にいい加減、業を煮やしているようだ。顔は笑っているようで目が全く笑っていない・・・ここはどうにか話題を変えなければ・・・・
「あ!?そうだ、あの噂知っているか?困っている人の電話に探偵がかけてきて解決法を教えてくれるってやつなんだけど?」
「なんだい、それ?」
知らない様子の彼にその噂について知っていることを話す。
「・・・・・」
一通り話し終えると、神島は懐から葉巻ケースを取り出し、一本の葉巻を手に取り火をつけ、ふかし始める。表情はいつにも増して険しく、好意的に受けとってはいなのいのは明白だった。
「一応、聞くけどお前じゃないよな?」
押し黙っている神島にたまらず聞く。
「当たり前じゃないか。ボランティアで人助けなんてまっぴらごめんだよ。僕はね、そういうあやふやな関係が嫌いなんだ。僕が知識でもって、人を助けその代価として、お金をもらう。等価交換だよ、僕が愛するのは。どこぞの小さな錬金術師様も言っていただろう?」
「わかってるよ。身をもって」
今、現在絶賛負債中の自分には痛い言葉だった。
「それにだよ、君は疑問に思わなかったのかい?」
「何を?」
「どうして、その探偵は困っている人がわかるんだい?どう考えても普通ではないだろ」
「確かに....」
噂だからと深く考えていなかったが、冷静に考えるとおかしな話だった。困っている人間がわかり、なおかつ、その人にピンポイントでアドバイスできる人間が普通であるはずがなかった。
「じゃあ、これも奴らがらみってことか」
「その噂がデマじゃなければね。奴らが直接やっているのか、それとも、使役されているのかまではわからないが、絡んでいるのは間違いない」
神島はそう断言した。こいつが間違いないというときは大体において現実のものと考えてよいということはこれまでの経験からわかっていた。
「そいつは何が目的なんだ?」
「そこまではわからないさ。でも、まあ、どうせろくなことじゃないよ。なんせ、ただより高いものなんてないからね」
神島は葉巻をふかして、得意げに言う。今風でいうならドヤ顔というのだろうか。少し腹が立つ。
「ま、今日のところは帰りなさい。そちらの方も調べておいてあげるさ」そうして神島は立ち上がると、玄関を指差す。さっさと帰れということらしい。
「わかったよ。じゃあ、なんかあったら教えてくれよ。どうせ、金は俺持ちなんだろ?」
「ああ、わかっているじゃないか。言う手間が省けて助かるよ」
「じゃあ、頼むぜ」
彼からはこの件には関わるなと言われた。俺もそうするつもりだった。だが、翌日。その約束は図らずも破られることになる。
二話も読んで頂きありがとうございました!
大リーグボール一号を子供の頃に初めて読んだ時の衝撃ときたら・・・あ、年がばれますね(笑)
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